95話 最終決戦4
『さあ! 第十マッチも佳境!! 現在の生存部隊数はなんと2!! 『Golden Dragon』と『Akane and Palace Guard』どちらもビクトリースタンバイ状態のチームだ!!』
『これで優勝が決まりますね』
『お互い最終盤手前で味方二人が落ちているため2対2! 人数差はありません!』
『どちらもポジションを取るために犠牲になったという感じでしたね。実際そのポジションのおかげで二人でも最後まで生き残れていますし、戦況読みはどちらのオーダーも流石です』
『さて戦場の説明をしたいですが……これまでの激しい漁夫合戦から一転、静かですね』
『『GD』は一階に、『APG』は二階に、遮蔽に隠れて範囲ギリギリの対角線上にいますね。銃弾が届かないためまだ動きが無いようです』
『となると最終収縮が始まり遮蔽から出ざるを得なくなったときに勝負、ということでしょうか』
『基本はそうですが、変化も十分考えられます。仕掛ける権利は上の『APG』のオーダーマモル選手が持っていますね。対して『GD』は迎え撃つしかないでしょう』
『消極性オーダーがどう攻めるか! 『完全指揮』がどう守るか!』
『最終収縮まで残り一分。ドキドキハラハラしますね』
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『GD』サイド
最終収縮開始まで残り一分。
ギリギリではなくマモルが早めに仕掛けてくる可能性もある、警戒は怠らない。
『技能模倣』がどの技能を模倣するか、結論が付かないことを考えるのは止めた。
起こったことに対処するだけ。
大丈夫だ、俺なら対処できるし、『絶対順守』のシズカなら応えられる。
「シズカ」
「何でしょうか?」
「勝つぞ」
「……はい!」
動きを待ち続けること1分、敵ではなく戦場が先に動いた。
最終収縮の開始。
(早仕掛けはしてこなかったか)
意表を突くために何かしてくるかと思ったが。
こうなれば徐々に狭まる範囲に合わせてジリジリと前に歩を進めるしかない。
そうして今まで隠れた遮蔽から体を晒すしかなくなったその瞬間。
ドン、と横手に着地する音がした。
「――っ」
キャラを確認、罠師、オーダーのマモル、ダッシュから飛び降りた、至近距離、着地隙、フォーカスを合わせて早々に排除――。
「正面だ!!」
無防備な敵を倒すというSSSをプレイしてきてもはや染み付いた反射をどうにか振り切って、視線を正面に戻す。
視界の端で罠師がかがむ姿と、正面に鳥使いが着地した姿を捉える。
(それは想定済みだ……!)
『技能模倣』に対応しようと身構えていれば、いきなり現れた無防備な罠師を撃ってしまうだろうと読んだのだろう。
ダウンされるまでの間にスキル『罠設置』を発動。このスキルは罠の設置に1.5秒、立ち上がって汗を拭うのに1.5秒で隙を晒す。
だがダウンしても設置にさえ成功すれば罠の効果は発揮する。
俺とシズカをスロウにすれば『技能模倣』が余裕で1対2でも制せる……そういう考え方だったのだろう。
マモルは戦闘面が拙いという弱点を持っている。なので割り切って囮に徹するという考え方。
同じ策を非公式大会『スター杯』でも使われたが、俺はそれを見破った。
だからこそもう一回はやらないと考えたか? いや、だからこそやってくると思っていた。
罠の範囲から逃れるように前進しながら一瞬罠師に向けてしまったフォーカスを正面に戻す。
その間に鳥使いは着地を終えて銃口をこちらに向けている。
お互いに周囲に遮蔽は無い。早打ち勝負。
敵は一人だが『技能模倣』の化け物。
対してこちらは二人だがマモルによって意識を逸らされ、前進しながら照準の定まらない中、撃たないといけない。
この距離……模倣させたのは『中間支配』か? 完璧な反動制御によって中距離での撃ち合いを支配する技能。
だとしたら分が悪いかもしれないが――それでも。
「倒すぞ!!」
「はいっ!!」
瞬間出たのは曖昧な指令、だがシズカは合わせてくれる。
二人で鳥使いにフォーカスを合わせて――撃つ!
お互い正面から撃ち合えば勝負は一瞬だ。
敵は先にシズカを狙ったようだ、体力が溶けるように消えてダウン。
しかしその間にきちんと敵の体力を削っていて、アーマーは割れている。
後は俺が――。
「よしっ!」
鳥使いがリロードしてこちらに銃口を向けなおす前にダウンさせる。
俺は無傷のまま。
完璧だ。
これで後は振り返って罠の設置を終えて無防備な罠師を撃てば優勝が決まる。
そうだ、俺たちの勝ち――――。
(いや、どうして無傷なんだ?)
不穏な予感が鎌首をもたげる。
おかしい、『技能模倣』と戦ってどうしてここまで上手く行った?
これでは単純にシズカと相打ちになっただけ。
おおよそプロの技能を模倣したとは思えない戦果。
意図は分からないが……だとしたら、もしかして――。
『技能模倣』に誰も模倣させなかったのか――?
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『APG』サイド
最終衝突前まで時間を遡る。
リリィさんにどの技能を模倣させるのか。
迷っている僕に対して、リリィさんは。
「マモル君、はい、これ」
そう言いながらリリィさんは持っていたEXウェポン、『EXマシンガン』をその場に落とした。
「え……?」
これまでで運よく一本拾えていたEXウェポン、強武器を十全に扱えるリリィさんが持つのは当然ということで持たせていたのだが。
「どういうつもりですか?」
「え、それは、その……EXマシンガンがマモル君に使われたいよー、って言ってたからさ」
「は?」
ヤバい。素で聞き返してしまった。
いやでもリリィさんも悪い、この最終決戦の迫った土壇場で何を言い出すのだろうか。
「察するにですが」
ジイクさんが割り込んでくる。
「リリィ様は緊張しているのでございますね?」
「うっ!」
「緊張……?」
まだピンと来ない。
「だ、だってマモル君のことだから私に撃ち合い任せようと思ってるでしょ! そりゃ私の方がマモル君より強いけど」
「辛辣ですな」
「で、でもそんな重役、私なんかじゃやりきれないって!」
「……なるほど」
リリィさんの言う通りだ。
何の技能を模倣させるにしても、僕は補助で、リリィさんがメインの作戦で行くつもりだった。
強い人に重要な役を任せる、それが勝率が高いからだ。
だけどリリィさんは技能はすごいけど、メンタルは初心者に毛が生えた程度。
勝つも負けるもリリィさん次第である、というプレッシャーをかけていることに……僕は気付いていなかった。
「リリィのビビリ~」
アカネが煽る。
「そ、そんな言われても……! ううっ、やっぱり私がやらないといけないよね?」
リリィさんがEXマシンガンを拾いなおそうとして。
「いえ、その必要はありません」
僕がEXマシンガンを拾う。
「マモル君……いいの?」
「いいのも何も、リリィさんこそいいんですか?」
「え?」
「この優勝が決まる大一番、そのラストキルともなればもっとも注目される場面です。おそらく大会公式SNSにもハイライトとしてクリップが投稿されて、何万回も閲覧されめちゃくちゃ目立てるんですよ。そんな栄誉をわざわざ僕に譲ってくれるなんて」
「そ、そう言われると……惜しいことをしてるの、私?」
「残念ながら今さら譲り返したりはしませんからね」
「ズルいわよ、マモル! っていうか、やっぱりアカネより目立とうとしてるんじゃないの!?」
「ふぉっふぉっ、これはまた特集組まないとですな」
まるで優勝のかかった大一番の最中であるとは思えないほど和気藹々と盛り上がるVC。
そうだ、忘れていた。
僕の目的はこの大会を優勝することではない。
それは手段でしかない。
本当の目的はこの仲間たちとゲームを楽しむこと。
だったら取れる作戦は一つだ。
「リリィさんはリリィさんらしく動いてください」
「私らしく?」
「はい。後は僕が決めますから」
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『GD』サイド
『技能模倣』は誰も模倣していない。
そして普通の武器を使っている。
だからシズカと相打ちするのが精一杯だった。
まるで捨て石……だとしたら本命は――。
撃ち切った銃弾をリロードしながら俺は振り向く。
そこにはこちらにピタリと銃口を向けている罠師がいた。
「――――っ」
マモルは策を読まれることを読んでいた。
だから『罠設置』のスキルを使うとみせて、すぐキャンセルした。
もしマモルをそのまま撃っていれば罠設置をキャンセルしているため、罠は無くこちらが勝っていただろう。
この場面で『技能模倣』の方を囮にする。
「見事! ――だが負けてたまるか!!!」
まだ体力は尽きていない、負けは確定していない。
最後の時まで、諦めたりはしない。
世界の滅亡を防ぐ……なんてどうでもいい!
このチームを優勝に導くためにも……!
「ああああああああああああっっっっっ!!!!!!!!」
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『APG』サイド
リリィさんはシズカ選手と相打ちに持って行ってくれた。
後はカイト選手を倒すだけ。
僕が、倒すんだ!
罠設置を即キャンセルして銃を構える。
一度かがむモーションを入れたため視界が大きく変わる。
ここからカイト選手にしっかり狙いを付けて撃たないといけない。
戦闘の基本ではあるが少しでも狙いがズレれば倒しきれずアウトだ。
苦手意識はまだある。
それでも僕だって頑張って来たんだ……!!
「ああああああああああああっっっっっ!!!!!!!!」
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『第十マッチ決着!! 勝ったのは――
チーム『APG』!!!!!!!』
『ビクトリースタンバイでのスターの獲得!』
『ええ! これにより『APG』がSSS全国大会、アマチュア部門制覇!! 優勝だぁぁぁっ!!!!!!』
次回最終話。




