94話 最終決戦3
アカネとジイクさんを置いて大広間を駆け抜け、僕とリリィさんは目的の『祈りの間』にたどり着いた。
「とりあえずここまでくれば安心、っと。そっちは――」
「ああもうちょこまかと! 爺!」
「お任せください!」
アカネたちの様子を聞こうとしたが、VCから伝わる様子にそれどころではないようだ。
オーダーである僕は既に別の部屋に移っているため状況も分からず指示も出来ない。だが、敵も味方も足止めのためにクロスレンジまで接近していた。
作戦よりもお互いの戦闘センスが物を言う距離、だったら『特攻前衛』のアカネに任せておけば問題ない。長年コンビを組んでいた『戦場把握』のジイクさんのサポートもある。
「よし、アーマー割った!」
「アカネ様、フォローが来ます!」
「っ!」
「少々耐えてください……よし、ダウンさせましたぞ!」
「ナイス、爺! これで……トドメ!!」
勝負は一瞬。
アカネとジイクさんによって敵をダウンさせたログが流れる。相手の名前が表示されるがやはり『GD』の『以心伝心』コンビだったようだ。
「勝った! ……って、うわっ!!」
「まあそう来ますな」
なおも続く銃声。戦闘音を聞きつけた漁夫部隊によるものだろう。
分かっていたことだった。2対2の勝負は仲間を通過させるための時間稼ぎ、どちらが勝とうとも漁夫が来て蹂躙することは。
「……まっいいわ、『GD』のアポロンとかいうやつにスター杯やDAY1でやられた借りは返したし」
「後は頼みましたぞ」
そうしてアカネとジイクさんはダウン、アポロン・アルテミス選手と共に確殺まで入れられる。
その4人を倒した部隊もまたさらなる漁夫部隊に倒され、新たなスパイラルが生まれていく。
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『GD』サイド
「ああもう負けたぁぁぁっ!!」
アポロンの慟哭がVCに響き渡る。
「どうせ勝っても漁夫部隊に倒されてただけでしょう、カイトたちが進むための時間を稼いだ時点で私たちの役割は完遂よ」
対してアルテミスは冷静だ。
「いや、そんなん分かってるけど、でもせっかくやったら勝ちたいやん! あの巫女、『APG』のチビガキやろ! 絶対俺倒してドヤ顔してるって!」
「はぁ……。最終的にカイトが勝てば私たちの勝ちよ。それで二人は目的の場所までたどり着いたの?」
「ああ、おまえたちのおかげだ」
カイトこと俺とシズカの二人は『神殿の廃墟』の中心部『祈りの間』にいた。
ここが最終安置に近くなるはずだが、周囲で起きた戦闘に引き寄せられたのか誰もいない。
いや、いなかった、というべきか。
「『APG』ですか」
「ああ」
「上を取られましたね」
「問題ない。ゲームの仕様的に上下に分かれる場所は最終範囲にならない、最後は降りないといけないはずだ」
大広間を駆け抜けて俺たちがたどり着いたのが一階部分、『APG』がたどり着いたのが二階部分だ。
やつもこの場所に弾き出すとは……いや、やつのオーダーとしての能力を考えれば必然か。
「どうしますか?」
「しばらく待機だ。警戒もいらない。やつだって今戦えば漁夫が押し寄せてくるのは分かっている。仕掛けてくるのはもっと部隊が減ってから……俺たちと残り2部隊だけになってからだ」
同じレベル、同じ目的、故に導かれる最適解は一緒だ。
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『APG』サイド
「罠かかりました!」
「これで壊滅だね」
安全地帯の収縮が開始され、範囲の内側にいる僕たちのところ目指して駆け込もうとする敵部隊を排除する。
漁夫スパイラルでかなりの部隊数が減った。残り4部隊だったところから3部隊となって……すぐに2部隊となった。
「『GD』の方でも敵部隊を倒したようですね」
僕らも彼らも二人しかいないが場所の有利が大きい。この激戦の中、仲間を犠牲にしてでも取っただけの理由はある。
「残ってるのアカネたちと『GD』だけ……ってことはどっちが勝っても優勝が決まるってこと? えーアカネもっと戦いたかったのに」
「見ているだけとは存外もどかしいですな」
ジイクさんとアカネの蘇生は無理だ。同様にアポロンアルテミス選手の蘇生も無理だ。
僕とリリィさん、カイト選手とシズカ選手の2対2で優勝が決まる。
「…………」
最終収縮が始まるまでまだ少し時間があるので考える余裕はある。
鍵となるのは互いのポジションだ。
僕らは吹き抜けとなっている『祈りの間』のニ階部分にいて、『GD』は一階部分にいる。
上を取れているのは有利だが、カイト選手たちが隠れている場所の方に回廊が伸びておらず、上から一方的に撃つということは出来ない。
だが上から下に飛び降りる、仕掛けるタイミングは一方的に持っていると言える。
対して敵にもアドバンテージがある。最終収縮の最終範囲が近い場所に設定されたことだ。
故に僕らが迎え撃つことが出来る。
状況的に僕らが積極的に行かないといけなく、『GD』は消極的に行かないといけないわけだ。
「待つ方だったら罠を仕掛けたり色々考えられたんだけど……」
僕が慣れないことをしないといけないのに対し、『完全指揮』はそれでも卒なくこなすだろう。
考えるべきは三点。
一つはどう仕掛けるか。
二つはいつ仕掛けるか。
三つ目は――。
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『GD』サイド
「考えるべきは『技能模倣』に誰を模倣させてくるか」
『技能模倣』。
プロの技能でさえも再現できる規格外の戦士の力をどう使う?
中距離で仕掛けさせるか、近距離で仕掛けさせるか、はたまた手榴弾を投げさせるか。
選択肢は無限大。
だが取れるのは一つだけ。
俺がもしマモルの立場だったとしても決めきれないだろう。
それほどに悩ましいが。
「何が来ようとも対応してみせる」
残り二部隊、生存人数4人。
最終決戦の時、迫る。




