93話 最終決戦2
優勝のかかった大一番とはいえ大きく流れが変わるわけでもない。
『GD』が初動で一部隊潰した以外には動きが無く、24部隊で第一収縮を終える。
「また移動が必要ですか……」
範囲の情報が更新。祈祷師のスキルで見れる次の範囲からして、このままの場所に居るとマズイことになる。
移動ルートの吟味が必要だが、速さが必要だ。先に他の部隊に場所を取られてから動き出しては遅い。
「マップに印を付けました。この地点に向かいます」
今回の安全地帯はマップ中央寄り、スポット『神殿の廃墟』の辺りだ。安全地帯が端の方ならば端に向かえば大体敵部隊に会いにくいのだが、中央となると色んな方向から目指されるので動線が読みにくい。
「……ん、この地点って何があるの?」
「『森林地帯』の一角で何もない場所だったはずですが」
前線の鬼であるアカネはともかく、SSSに精通しているジイクさんもピンと来てないようだ。
「この地点は遮蔽も何もないんですが、微妙に窪地となっていて周囲から見えにくいんです」
「えっと……じゃあそこに隠れるの?」
リリィさんが困惑したように聞く。
SSSの定石としてはなるべく遮蔽物の近くで行動するべきというものがある。開けた場所で敵に見つかれば滅多打ちにされかねないからだ。
初心者ならともかく、セオリーが身に染み付いた経験者からすれば心許ないだろう。
だが、だからこそ他の部隊もこんな場所に敵がいると思わないはずだ。
「リスクはかなり高いです。鳥使いのサーチに引っ掛かれば逃げるのも難しいでしょう。でも、おそらく『神殿の廃墟』の内部には既に敵部隊が陣取っているはず。外で隠れて待ち、戦闘が起きてから後入りするのが最適です」
まだこの漁夫が来なさそうな時間帯の内に戦闘を仕掛けて『神殿の廃墟』の一角のスペースを奪う、という手段もある。
だがそのように積極的に戦うのは僕のオーダーではない。
初動ファイトは躱したが、それでも狙われる立場であることには変わりない。
この決勝戦でも僕は変わらず罠師を使っているが、不人気キャラであるため使っているのは僕だけ。姿を見られればすぐにチームがバレて狙われるだろう。
そもそも姿を見せない、隠れるのがベスト。
「……ま、分かったわよ。マモルなりの考えがあるんでしょう」
「責任を押し付けるわけではありませんが、マモル様のオーダーによって動くのがこのチームですからな」
「うん、きっと上手く行くよ!!」
3人も了承したところで、ハイドが始まる。
第三収縮まではこの場所で耐えられる、それから後のことも考えないとな……。
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『GD』サイド。
「いやはや運も味方しとるなー」
カイトこと俺たちは初動を被せてきた敵部隊を排除した後、物資を求めて『神殿の廃墟』に向かった。そこで第一収縮を終えて、発表された次の安全地帯のど真ん中に俺たちはいた。
移動する必要が無いため不意打ちを食らうこともない。
「とはいえ最終的な安全地帯からは外れそうね……」
「移動するタイミングが重要ですね」
アルテミスの経験測とシズカの懸念は俺の内にもあった。
移動距離は短くて済むが、多くの部隊がこの安全地帯中央を目指してくるわけだ。戦闘を起こせば漁夫は必至、そのためお互いが最初に戦闘することを避けるためにかろうじて保たれる平穏。
だからこそ崩壊したら一瞬だ、漁夫の漁夫の漁夫の漁夫、くらいは平気で起こるだろう。
それがバトルロイヤルの王道。
わざわざリスクを背負う必要はないが、もしそうなってもすべての敵をねじ伏せるだけだ。それを可能にするだけの力がこのチームにはある。
「分かってるとは思うがしばらく待機だ」
「ほいほーい」
「そうね」
「承知しました」
『神殿の廃墟』の一角にある小部屋にてその時を待つ。
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『APG』サイド。
何とか見つからないまま第三収縮となり、そして第四収縮を迎える一分前となった。
生存部隊数は20。
小競り合いがあって減ってはいるが、この狭い戦場に同居できる限界が来ているとみていいだろう。
「始まったな」
次の範囲内を目指して移動を始めた部隊と待ち構えていた部隊で戦闘が発生する。その戦闘が終わるのを待って漁夫したくなる気持ちもあるが、それは他の部隊も同じこと。ポイントが必要ない僕らは漁夫スパイラルに巻き込まれないことだけに気を付けて移動しないと。
ギリギリまで待って、本当に収縮が始まるという直前。
「動きます!!」
僕らは移動を開始する。戦闘には目もくれず、一目散に『神殿の廃墟』の内部に潜入成功。どうやら漁夫スパイラルの方に人が寄っているようだ。
これなら気付かれないままポジションを取ることも――。
「っ……! 大広間奥から足音です!」
ジイクさんの『戦場把握』が一早く敵を察知。顔だけ出して覗くと確かに敵がいる。
「こんな場所の敵……『GD』か!?」
判別方法が無いため直感ではあるがポイントが必要な部隊の動きには見えない、おそらく『GD』だろう。
どうする……!
次のポジションまではどうしてもこの大広間を通る必要がある。ただ走るだけでは蜂の巣にされる。だがここに留まり続けると拡大していく漁夫スパイラルに飲み込まれるだろう。
立ち位置からしてあちらも別の奥を目指していて状況は同じ、戦いたくはないはずだ。
だがそうは行かないのがこの戦場。
「私が敵を引き付けるよ!」
リリィさんの提案。確かに誰かが残って足止めしている内に通り抜ければ良さそうだが――。
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『GD』サイド
移動を始めたところで鉢合わせた敵部隊。
その内の一人に罠師の姿があったため敵は『APG』で確定。
『APG』をここで潰してしまうか……いや、そんなことをしたら漁夫が来て終わりだ。
ここは戦わずに素通りしたい……だが停戦協定という選択肢は存在しない。
「足止めになるで」
「アポロン」
「誰か戦っている内に通り抜けるのがベストやろ。そんならワイの出番や」
「だが」
「ここは任せて先に行け………………ふっ、決まった」
「なーにかっこつけてるのよ、もし相手に『技能模倣』が来たら勝てるわけ?」
「え、いや、それは話が違うやろ」
「はー……およそどんな技能も再現する異次元の戦士……でも、そんな彼女でも模倣出来ない技能はあるわ。
『以心伝心』二人で協力するこの技能は一人じゃ模倣出来ない」
「アルテミス……」
「私も残るわよ」
刻々と状況が変わり行く戦場、判断に迷える時間は無い。
「……頼んだ! シズカ、行くぞ!」
「ええ……ご武運を!」
俺は二人にその場を任せて大広間を駆け抜ける。
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『APG』サイド
「いえ、リリィ様は先に行ってください」
ジイクさんが進言する。
「どうしてですか!?」
「強い駒を最後まで残すのは当然のことですから」
「ですが敵は二人です!」
一足早く決断したのか、敵部隊の巫女と祈祷師が迫る。もし『GD』ならばアポロンとアルテミス、『以心伝心』のコンビだ。
リリィさんの『技能模倣』を駆使して足止めがやっと、ジイクさん一人では分が悪いだろう。
「ああもう、分かったわ! 爺と一緒にアカネも残るから、マモルとリリィは行きなさい!!」
「で、でも……」
「それなら戦力は釣り合いそうだが……」
アカネが自分からそんな役回りを引き受けるなんて。
「アカネだって分かるわよ、優勝するために必要なことくらい」
「……」
刻々と状況が変わり行く戦場、判断に迷える時間は無い。
「ああ、分かった! リリィさん行きますよ!」
「私……頑張るからね、ジイクさん、アカネちゃん!!」
僕は二人にその場を任せて大広間を駆け抜ける。
「ふぉっふぉっ、頼みましたぞ」
「アカネを犠牲にするんだから、ちゃんと優勝して来なさいよね!」




