89話 初戦
SSS全国大会アマチュア部門、決勝戦第一マッチ。
崩壊した町をモチーフとしたマップ『黄昏』
マッチ開始から五分が経過、序盤ともいえるこの状況でマモルこと僕たちは戦闘中だった。
「ねえ、もう突っ込んでいい?」
「まだだ! 敵が崩れてない!」
いつも通りスポット『忘れ去られた住宅街』に降りて十分に漁り、次のスポット『神の見放した教会』に向かうと内部から足音がした。
どうやら敵がこの場所を漁っているらしい。
そして一人がそろーっと中から出てきて、外にある物資のところに向かっている。どうやら手分けして漁るという判断をしたのだろう。
部隊ひと固まりになって漁ると何か起こった時に対応しやすいが効率は悪い。散開して漁れば効率は良いが……このように敵に会えばひとたまりもない。
「まだ序盤だし近くに敵はいないと思ったんだろうな」
僕らは銃撃を集中させてその一人をダウン、確殺まで入れる。
大会決勝戦といえど、こういうことは起こりうる。人は完璧じゃない。
これで教会内部の部隊は3人となった。人数有利、チャンスだ。
ということで撃ち合っているのだが、存外粘りが強い。3人なのに的確に連携して食らいついてくる。
だがこの一手で崩す。
「……良し! ダウン取ったよ!」
リリィさんの報告。
ここ『黄昏』ステージの建物は基本的にボロボロだ。それはやつらが立てこもっている教会にも当てはまる。その崩落した隙間を縫って針に糸を通すように銃弾を届ける。壁だと思っていた方向から飛んでくるのだ、ひとたまりもない。
これが技能『一点狙撃』の恐ろしさだ。
「アカネ!」
「ようやくね……! 攻めるわよ!!」
応急処置を許さないように、間髪入れず動き出す。4対2なら物量で押し潰せる。
「一丁上がり……ですな」
こうして一部隊壊滅。4キルポイントを獲得した。
倒した敵から物資を漁る。鳥使いのスキルで周囲を索敵したから漁夫の心配もない。
「良い出だしだな」
ポイントが欲しいから積極的に行きたいと思い、そのため移動を早めにした結果掴めたチャンスだった。運も良かったが、運だけでもない。
「リリィ様ナイス狙撃でした、いやはや私も負けてられませんな」
「そ、そんな。EXスナイパーのおかげですよ」
リリィさんとジイクさんが武器を交換する。
狙撃のためにジイクさんのEXスナイパーを一時的にリリィさんに預けたのだ。作戦が終わったのでそれを戻した形だ。
「初動で拾えたのは大きかったわね」
EXウェポンとは普通の武器よりも性能の高い武器で、戦場にランダムに落ちている。そのため運が良ければ初動で拾えることもある。
EXスナイパーは狙撃性能が高く、だからこそ行えた離れ業でもある。普通のスナイパーだったらリリィさんでも無理だっただろう。
そう考えると運が良いの方が大きいか……? いや、ここ大一番では運の良さを引き寄せるのもまた大事だ。
良い流れだ、このまま波に乗って――。
「キルログが流れたわね…………って、『GD』が全滅!? 嘘っ、何があったのよ!」
「ビッグウェーブだな……」
だいぶ追い風が吹いているようだ。
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『『GD』が全滅!! 違う場所を中継している間に一体何があったんだ!?』
『えーと恐らくですが……『GD』が今回降りた場所と安全地帯の場所が完全に真反対で、大きな移動を強いられたところを待ち伏せしていた部隊が取った……という感じですね』
『何と! 不運だったか!』
『運が悪いところはありますが、少し移動が遅かったようにも思えますね。長距離の移動が必要だと分かった時点でもうちょっと早く動き出すべきだったかもしれません』
『『完全指揮』の計算にミスがあったか! DAY1突破一位が早々に落ちたことで混戦は必至となるでしょう!』
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『GD』チームスペースにて。
「マジ何であんなところで待ち伏せしてるんや!?」
「あと一人倒せてれば、部隊壊滅でせめてキルポイント4点取れたんだけど……あ、私たちを倒した部隊が漁夫にやられてる」
アポロンとアルテミスが頭を抱える中。
「………………」
カイトは自らのプレイを反省していた。
今の事故は回避できた。いつもより早く動き出せばよかっただけだ。
……どうして俺はいつも通りの動きを指示してしまった? 分かっていたのに……どうしてこんなミスを。
「カイト様……」
その様子を見守るシズカ。
それからしばらくして、決勝戦第一マッチが終わった。
スター獲得者はチーム『APG』
13のキルポイントに1位の順位ポイントを手に入れて、全体順位を最下位25位から一気に11位まで上げた。




