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84話 立ち位置


 思い返すのは第二予選のときのことだ。


 アカネちゃんとジイクさんが不調でリリィこと私を含め三人が早々に落ちてしまった。


 けどマモル君は一人で生存して2位を取った。


 予選を突破した後、当然気になってマモル君のリプレイを見返したし色々聞いたりした。




『別に難しいことしてないですよ』

『いや、絶対何かしているでしょ!? どうしてこんなに戦いに巻き込まれないの!?』


 第二予選のマップは『工場』入り組んだ『中』と開けた『外』に分かれている。

 その『中』にいて乱戦が起きている中、マモル君は全く巻き込まれないで悠々と生存していた。




『中は色々込み入ってますからね。それに視界が暗いから見つかりにくいんです。戦わなくても戦局の誘導、戦場の支配がしやすい。流石に他のマップ、開けた場所だと苦労するでしょうね』


 苦労する。

 つまり難しいがやることが出来るということだ。


『ふぉっふぉっ、ご謙遜を。十分にすごいことですぞ』

『アカネだって一人で長く生き残ったことはあるわよ!』


『そうだな、確かに僕たちのチームは一芸特化のメンバーが多い。一人でもやれる場面は他よりも多いだろうな』


『私は一人生き残っても大変だろうけど……』


『こんどヤバいときがあったらアカネに任せなさい! 一人でも生き残って目立って見せるわよ!』


『隠れるなら私の出番ですかな、どんな監視も把握して穴を見つけましょう』


『そうですね……じゃあ一応取り決めておきましょうか』






 こうしてコードEとそれに伴う作戦が決まった。

 でもそれは戦いが終わってホッとした中での半ば与太話のようなもの。

 まさかこの大事な本選、しかもDAY2突破がかかる場面で使うことになるなんて……。






「第一収縮は範囲内……祈祷師がいる内に見た次の範囲は大丈夫……問題は第三収縮での立ち位置……そして最終的な範囲は……」


 マモル君がボソボソと呟きながら集中するのを私は見守ることしかできない。


 ジイクさんの使う祈祷師が落とされたことでスキルによって安全地帯を読めなくなった。

 しかしSSSにおける安全地帯の収縮はパターン化されていて、経験を重ねた人は大体どの場所になるか読めるらしい。

 だったらその中心に向かってじっとしとけばいいかというとそうでもない。


 安全地帯は全ての部隊が目指してやってくる、中央にいて索敵スキルで見つけられた途端逃げる場所が無くなってやられてしまう。

 立ち位置が大事だ、どのタイミングでどんな場所を取るか。


 私も最近ちょっとプロの真似事みたいなことして頑張っているけど、それでもどうすればいいのか想像が付かない。


 マモル君にしか分からない計算が今行われているのだろう。




「よし、決めました。『火口』付近に向かいます」


 そうしてマモル君は移動先を決めると早々に動き始めた。


 グツグツとマグマが煮えたぎる様子が見える『火口』。スポットの特徴としては他より高い位置にあるため有利だが、蒸気や煙によって視界が悪いというところか。




 その近く、物置小屋のようなところに身を隠すマモル君。


「最初の部隊が通るときは賭けですね。見つからないように祈るしかありません」


 息を潜めると決めたら次に行動するまでやることはない。マモル君は見ているだけの私たちに説明するように言う。

 賭け……そうだよね、工場と違って火山地帯は開けた場所の多いマップだ。マモル君の言う苦労する場所。

 そして本選というレベルの高い舞台であることを考えると賭けに出ざるを得ないところもあるのだろう。




 そうしてしばらくすると小屋の外を歩く音。


「っ……!」


 釣られて私も緊張する。

 ゲームの中の出来事なのに、私が実際にプレイしているわけでもないのに、なるべく音を抑えて『見つからないように』と祈る。


 幸いにもすぐに素通りしていく足音が聞こえてきた。


「ふぅ……」


 大きく息を吐きだす。


「何とかなったわね」

「寿命が縮みそうですな」


 アカネちゃんとジイクさんも同じ気持ちだったようだ。




「よし、これでしばらくは安泰ですね……いや、でも気を引き締めないと」


 マモル君も一瞬安堵するも、実際に戦場に立つ身としてすぐに気を入れなおす。


「あ…………」


 私は声をかけようとするも集中を乱すかもしれないと留まった。




 それからしばらくして近くで戦闘が起き始めた。

 小屋の隙間からそっと覗くと、どうやら火口を挟んで部隊が撃ち合っているようだ。


 そこで一つ恐れていた事態が発生した。


 ピュイー! と鳥の鳴く声が聞こえたのだ。




「鳥使いの『索敵』!!」

「マズいんじゃないの、これ!?」


 戦闘中の部隊が漁夫られないように周囲に部隊が近づいていないか確認したのだろう。

 続けざまに鳴き声があった。もう一方の部隊も同じように考えたのだろう。


 そして私たちが鳥の鳴き声が聞こえたということは索敵範囲内ということ。

 マモル君が一人隠れていることがバレた。

 すぐさま逃げるべきだ、今にも小屋の扉が蹴破られて侵入されるはずで――――。



「いえ、大丈夫ですな」

「はいその通りです」


 しかしジイクさんとマモル君は落ち着いている。


「どういうことなの、爺?」

「交戦中の部隊はお互いにマモル様の位置が分かりました。しかし潜んでいる場所は火口より少し低い場所にある小屋。浮いた駒だと取りに行くと、それまで交戦していた部隊に上を取られて最悪全滅します」

「なるほど……お互いにお互いを警戒して、マモル君を攻められないんだ」

「よく分かったわね、爺」

「状況を目前とすればそれはもう。マモル様のすごいところはこうなることを事前に見越して物置小屋を取っておいたことです」


 そうだ、これは偶然起きたことじゃない。マモル君は意図的にこうなるようにした。

 部隊がどのように動くか、どこで戦闘が起きるか、どのタイミングで潜伏場所が露呈するか、そこまで見通していた。




「もう少しすれば戦闘が激化するでしょう、そのタイミングで離脱。漁夫に急行しようと視野狭窄する部隊の脇をすり抜けて次の地点に向かいます」


 すぐに次の状況を見てきたかのように話すマモル君。


 実際その通りになってひとまずは危機を逃れることに成功した。


 しかし画面に映る生存者の数は85人。

 まだまだ道は始まったばかりだ。


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