83話 煽争
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カイトこと俺はこの前のスター杯より前からマモルの名前を知っている。
あれは今から一年ほどは前のことだろうか。
俺はSSSのスキルアップのために非公式のソロの大会に出ていた。
普段の四人一部隊とは変わって、一人一部隊。しかし、戦場には変わらず百部隊で百人。仲間に頼ることが出来ず対面力が磨かれるのを実感していた。
非公式といえど大会、賞品が出るということでポイント計算が行われる。それまでに行われた数マッチの順位表が張られていた。
見てみるとどうやらここまでキルを多くとれたおかげで俺は1位だったが……。
「……何だこれは?」
見ている内に気になるものがあった。
順位表はキルポイントと順位ポイント、総合ポイントの欄に分かれて並べられている。
総合ポイントは先述通り俺が1位なのだが、10位の人がキルポイントが0なのに順位ポイントだけでランクインしていた。
順位ポイントだけならば1位の俺よりも上……何だこの異様なやつは。
そいつをもっと確認してみるとこれまでに行われたマッチ全てで2位を取っていた。
キルポイント0……戦わずにずっと隠れているのか? ソロの大会、部隊で動いていないから死角も増えるだろうがだとしてもそんなことが可能なのか?
「面白い……」
大会に出たのはスキルアップのためであり賞品のためではない。
それからのマッチ、俺はそいつを仕留めることだけに専念した。
キャラもいつもの工作家から鳥使いに変えた。
SSSのマップは広い。本気で隠れられると見つけるのも困難だ。そのため索敵スキルが必要だった。
次のマッチ。それらしい人影は見つけた。が、距離があって追いつけず。
その次のマッチ。見つからず。
さらにその次のマッチ。しかし別の敵に絡まれてしまい対処している間に逃げられる。
ガンメタした立ち回りをしているにもかかわらず、そいつは二位を取り続けた。
そうこうしている内に大会の規定マッチ数が終了。
「逃げ切られた……いや」
ただ逃げていただけではないだろう。
別の敵に絡まれた際に気付いた。やつは戦場を支配している。
追ってくる敵がいるのを見越して、別の敵を誘導して俺にぶつけさせた。
敵に戦わせる、というのは有用なテクニックだ。
そして弱ったところを漁夫する、バトルロイヤルの基本である漁夫の発展形。
俺だって使うこともあるが……それを戦うこともせずに実行できるか……?
「……いや、違うな。そんなことする必要が無い」
普通に銃を撃って敵を誘導すればいいだけだ。
俺にはそれだけの実力がある、わざわざ戦わないことに価値を見出す必要は無い。
おそらくやつにはその力が無いのだろう。だったらその力を身に着ければいいのに。
「プレイヤーネーム……マモルか」
歪なやつだ。
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『煽争』
戦場を支配、自身以外を争いに煽ることによって、戦わずして少しでも長く生き残る作戦。
『GD』が漁夫に来ていた時点で実行に踏み切ったが、それには二つクリアしないといけない条件があった。
一つがこのままではポイントが足りないこと。
2位の順位ポイントだけでは1ポイント足りなかったので、1だけキルポイントが必要だったこと。
もう一つが『GD』の存在だ。
『完全指揮』ならば僕のしようとしていることを理解出来るだろう。
DAY2突破も確実としており、このラストマッチはいわば遊んでもいい状態だ。
昨日会ったカイト選手は負けられないと決意が固かった。
『技能模倣』を有するもう一つの優勝候補、僕らのDAY2突破を阻止して優勝を盤石とするために損益を無視して妨害してくる可能性がある。
そのために3人に頼んでシズカ選手を落としてもらった。
これにより足りなかった1ポイントが埋まり、シズカ選手が操る鳥使いが落ちたことで『GD』は索敵スキルが使用不能になった。
SSSのマップは広大だ。本気で隠れれば中々見つけることは出来ない。
だったらかくれんぼになりそうだが、だからこそ広域索敵の出来る鳥使いの人気が高いのだ。
如何にこちらの意図が読めても、僕を見つけられなければ意味がない。
「マモル君、どう!? ちゃんと逃げれた!?」
「ええ、予定通り『観測基地』まで来れました」
「ふん、アカネがわざわざ犠牲になったんだからしっかり仕事しなさいよね」
「こらこらお嬢様」
「いいんです、ジイクさん。その通りですから」
3人は完璧に仕事をこなした。シズカ選手を落としてくれた。
だったら次は僕の番だ。
僕に全てがかかってるんだ、絶対に失敗できない。
絶対にここで2位になるまで生き残って見せる。
「マモル君…………」
今は広い戦場。簡単には見つからない。
だがこのゲームはステルスシューティングではなく、バトルロイヤル。
いつまでも隠れることを許さないためのルール。
戦場の制限、第一収縮が始まる。




