82話 コードE
カイトこと俺は変わらず周囲を警戒する。
その間アポロンとアルテミスの二人は倒した三人の物資を漁り終えていた。
「しかしオーダーのマモルだったか……あいつはどこに行ったんや?」
「ここまで出てこないってことは逃げたんじゃないの?」
「ああ……そうだろうが……」
俺たちが完全に態勢を立て直した今からマモルが現れても何か出来るとは思えない。
戦闘している間に逃げたと考えるのが当然だが……少し引っ掛かる。
安全に逃げるのが目的……だったとしても別に3人を犠牲にしなくてもいいはずだ。
一人じゃ厳しくても二人は犠牲にすれば足止め出来るだろう。
そもそも一人生き残ってどうする。
マモルはオーダーの才覚あれど対面は疎いし、何よりSSSはチーム戦だ。このまま野垂れ死ぬのが見えている結末。
見えている破滅に身を投じた……訳ではないとしたら……。
「シズカ」
「はい」
「ここから『APG』がDAY2に進出するために必要なポイントを計算してくれないか」
「承知しました」
細かい計算をしながらでオーダーに支障をきたしては本末転倒だ。『APG』に落とされてしまったシズカに頼む。
「何や、まだ『APG』を警戒してるんか? もう終わりやろ、あいつらは」
「そうよ、さっきのは自暴自棄になっただけでしょ。負ける前に私たちに少しでも一泡吹かせたいってだけよ」
「まあでも実際面倒なことになったな。この付近じゃ蘇生出来ないし、このラストマッチはもう3人で戦うしかないな」
落ちてしまった人員を復活させるためにはその棺桶からタグを拾って、通信所に向かう必要がある。
この近くには通信所は無く、また蘇生するときにかなり周囲から目立ってしまう。一人以上人数が欠けているということも教えてしまうため、他の部隊にとって絶好の攻め時となる。全国大会の本選ともなればそれを許すような甘いレベルではないだろう。
3人では表立って行動するのは難しい。
戦闘せずコソコソと動くしかない。
やつはそれを狙って……いやだとしてもそれだけで勝てるわけもなく……。
「計算出来ました」
そのときシズカの報告が来た。
「どうだ?」
「『APG』は私たちと戦う前に3キル、そして私で1キル。合計で4キルポイント取っています。……がまだまだ25位には遠く、オーダー一人では到底稼ぐのは難しいでしょう」
「ほらな、やっぱり無理やないか」
「……具体的な点差は?」
「ええと――ですね」
シズカが『APG』と25位のチームの点差を答える。
「その点差だと……一人じゃキルも難しいだろうし、順位ポイントを狙うしかないけど……ここから2位になれば行けるか。でもまあ無理でしょうね」
「2位…………2位だとっ!?」
アルテミスがこぼした言葉に俺は反応する。
ここから2位になればDAY1突破……そのために……だとすると……無理がある……だがやつは……やつなら……。
「正気……なのか?」
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「正気……なんだよな」
そろそろ『GD』のオーダー、カイト選手も気付いた頃だろう。マモルこと僕の狙いに。
戦況:非常事態
部隊全員の生存が難しくなった場合を見越したチームでの取り決め。
3人が犠牲になってでも1人を生き残らせることで勝ちを諦めない。
僕ら『APG』はそれぞれが特化した技能を持つ。
平均的な技量を持つプレイヤーより、1人でもどうにか出来る可能性が高い。
その際、誰を生き残らせるかは状況によって変える。
作戦『生存』
乱戦に巻き込まれている場合は前線での生存力の高いアカネを残し。
作戦『隠蔽』
監視が強いときは状況把握の高いジイクさんを残し。
作戦『無双』
フラットな戦場なら『技能模倣』で一番対応力の高いリリィさんを残す。
他の3人はいい。
対面力のない僕が一人生き残らないといけない場合が一番不味い状況だ。
それでもやるしかない。
DAY1を突破、全国大会を優勝するためにも。
「生存しているのは93人……か」
まだ第一収縮も始まっていないということで僕ら以外に戦闘は起きていないようだ。
キルを取るのは無理だ。
生存し続ける、ここから2位に入ればいい。
「…………」
僕はこの大舞台で自分の理想を叶えないといけない。
『なるべく戦わない方がいい』
『理想論ではあるが、単純に最後まで隠れることで戦わず、その間に他のチームが潰し合い切った場合、その時点で二位が確定する』
でもこのレベルではただ隠れるだけではいずれ見つかる。
生き残るためにはコントロールが必要だ。
戦いを煽り、戦場を支配する。
「作戦『煽争』……スタートだ」




