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80話 漁夫


「キルログが……これってさっきの敵だよね? 漁夫に倒されて……つまり近くまで来てるってこと?」

「それに倒したのが『GD』……か」

「どうやら状況は最悪のようですな」


 チームメンバー3人も状況に気付く。




 敵ながら25位の部隊の作戦は見事だった。


 まずは初動を被せることで確実に僕ら『APG』とファイトをする。

 それで勝てればDAY1突破確定。

 結果は負けてしまったが、それでもファイトしたことで周囲の部隊がこれ幸いと漁夫に来て『APG』を始末してくれる。


 だからこそ漁夫が来る前に戦いを終わらせたかったが上手く粘られた。

 僕らはキルポイント3ゲットしたが、まだまだ25位には届かない。そこまで計算しての作戦だろう。


 どの部隊が漁夫にやってくるかは近くに降下した運任せだっただろうが、出たのは優勝候補の『GD』。

 やつらにとって最高の、僕らにとって最悪の出目だ。




「リリィさんに聞きたいんですが、『完全指揮パーフェクトオーダー』が僕らを漁夫したらどうなると思いますか?」

「『完全指揮パーフェクトオーダー』だったら……とりあえず壊滅させるかな。

 ガン逃げされても周辺は平地だから簡単に追撃できるだろうし……どうにか抵抗されてさらなる漁夫が早めに来たら引かないといけないけど……それでも戦果が全く無しってことは無いと思う、2人くらいは落とせるんじゃないかな?」




 リリィさんに模倣コピーさせてシミュレートしてみる。基本は全滅、運が良くても無傷では済まない公算のようだ。

 全滅すればその時点で終わりだし、そうでなくてもまだ1回目の安全地帯収縮も起きていない序盤なのに人数が欠けてはその後もどうしようもないだろう。


 つまり状況的には詰んでいる、というわけだ。




「…………はぁ」


 僕はゲーム画面から完全に目を離して天井を見上げる。


 こうしている間にも『GD』は僕らへと接近しているだろう。


 そんなことをしている暇があるなら、と咎める声は上がらなかった。




 そのまま会場をぐるりと一周見回す。


 たくさん集まった観客、この人だかりの前で今日はずっとSSSプレイしていたけど、熱狂的だった。


 スターを獲得しただけであれだけの歓声を浴びたのに、優勝したらどんなものなのだろうか?




 チームのみんなを見ると同じようにゲーム画面から目を離して僕の方を見ていた。


 その信頼に応えるように、僕は視点をゲーム画面に戻して発言する。






「皆さん――『コードE』です」


「ふうん、やっぱりね」


「作戦はどうしますかな?」


「『アジテーション』で行きます……が、一つ頼みたいこともあって」


「うん、聞かせて」






ーーーーーーーーー






 チーム『GD』。

 そのオーダーであるカイトこと俺はDAY1のラストマッチを迎えた。


 現状の総合ポイントは1位。DAY1突破、いや残り一試合では逆転されようがないので1位通過であることまで確定した。


 いわば今は消化試合だったが……それでも気を抜くつもりは無かった。




「本当に漁夫するんか? そんな頑張らなくてもええんとちゃう?」

「どんなときも最善を尽くせないで、優勝出来るわけ無いじゃない」

「感情やなくて理屈や、漁夫を漁夫られる可能性もあるやろ?」


 マッチ開始早々から戦闘音の鳴り始めた地点に向かいながらもアポロンとアルテミスが言い合う。


「マッチ開始からまだ早い。さらなる敵が来る可能性は低いだろう。ここで人数を減らした方が、物資を奪った方が後々の展開が良くなる」

「なるほどなー、りょーかいっと」


 俺の判断を伝えるとアポロンは不満を口にするのを止めた。




 その途中、本格的な衝突が始まったようでキルログが流れてきた。ダウンしたメンバーは――。


「チーム『APG』とその一つ順位が上の部隊……DAY1当落線上の二部隊が衝突しているようですね」


 シズカがデータを提示する。


「蹴落としにかかったんか、えげつないな」

「ダウン数から『APG』有利みたいだけど……その後漁夫に、私たちに始末させようというつもりかしら?」

「……何か良いように使われてるようで癪やけど、『APG』には借りもあるからな。これは燃えるで!!」


 アポロンはスター杯のときに狙撃されてダウンしたことを根に持っている。闘志があるのはいいが、拙攻しないか気を付けておくか。




「……逃げてくる敵を発見、展開して確実に倒すぞ」


 少しして戦闘音の方からやってくる敵を発見、どうやら1人だったので囲んで倒す。

 これで本日のラストマッチ早々に部隊が一つ姿を消した。




「これで『APG』のやつらにもキルログで私たちが迫っていることが分かったと思いますが、このまま攻めますか?」

「……無論だ。戦闘音はかなり長かった、物資が枯渇しているだろう。それに一人ダウンしていたから立て直しも遅れる。後は周辺の漁夫の警戒だが……」

「分かりました、では……」


 キルを一つ取ったことを戦果としてこのまま退く選択肢も無いことは無いが攻めの継続を判断。シズカがその意図を汲み取って鳥使いのスキルを発動。周辺の探査が行われる。


「展望台に4人、それ以外に人影無しですね」

「よし、このまま強襲する。罠には気を付けろ」


 チーム『APG』のオーダーは罠使いのキャラを使っている。先ほどの部隊との戦闘でスキルを使ったならインターバルでまだ使えないだろうが一応警戒を促す。




 みんなは罠だけを警戒すればいい。

 だが俺は全てを警戒しないと。


 『APG』のオーダー、マモル。

 この戦場でオーダーとして俺と匹敵しうるのはやつくらいだろう。


 予感などという確証のない物に頼るのは信条に反するが……しかし、先ほどの敵を倒したことでマモルには近づきつつある敵が俺らだと分かったことで……とんでもないことをしでかす予感がした。


 だから一瞬攻めの継続をためらった。




「………………」


 だが俺たちは世界の滅亡を防ぐために負けられない。


 優勝するための最適手段は、ここでやつら『APG』を蹴落としてDAY2への進出を阻むこと。


 ……ふっ、ここまで『APG』相手に闘志を燃やしておいて、アポロンに対して偉そうなこと言えたものじゃないな。






「展望台到着、突入するぞ」


 平らな地形にポツンとある建物。この辺りで他に部隊が隠れられるスペースも無く、逃げようとする足音も聞こえてこない。

 やつらは確実にこの中にいる。


 敵の出方は主に二つ、逃走か抗戦だと推測していた。


 籠もったということは抗戦。徹底的に守ることで相手が焦って攻めるところをカウンターするか、新たな漁夫が来るまで粘って戦場が混乱したところで逃げるか。


 どっちも許すつもりはない。

 ここで確実にしとめてやる。




 警戒しながら展望台に入っていったところで――外から銃声が鳴った。




「くっ……!」


 銃撃によって部隊の最後尾にいたシズカの体力が削られる。




「まさかやつら――!」




ーーーーーーーーー





 『GD』が展望台に入ると同時に屋上から飛び降りて急襲したアカネは。




「さあてやるわよ!!」


 獰猛的な笑みを隠さない。



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