79話 初動ファイト
SSSにおいて僕が忌み嫌っている行動。
それが初動ファイトだ。
敵部隊と同じ場所に降下することで準備する間も無くよーいドンで戦う。
マップ毎に物資の位置は決まっているが、何が置いているかはマッチ毎にランダムだ。
なので武器を拾えればいいが、回復アイテムやアーマーしか拾えず一方的に虐殺されたり、格闘で抵抗するしかないことも生ずる。
プロプレイヤーであっても初動ファイト100%勝てるという人は存在しないだろう。
戦略ではなく、運を天に賭ける方法。
決着が早く付くため戦闘狂にはおすすめだが、間違っても負けられない大会の本番で使う戦術ではない。
しかし敵……おそらく25位のチームは仕掛けてきた。
それは26位である僕らを蹴落としてDAY2の進出を確定させるため。
チーム対策はバッチリってことか……。
マッチの展開は安全地帯の場所、どこで戦闘が起きたかなど様々な要因で変化する。部隊が入り乱れる中、僕らだけに的を絞って倒すということは難しい。
しかし唯一の例外が初動だ。僕らがマップ『火山地帯』でスポット『展望台』に降りがちなのを理解していれば、被せることで必ず戦うことが出来る。
いつも通りに行動してしまったが故の――失態。
「マモル、しっかりしなさい!」
「っ……」
「あんたが考えそうなことくらい分かるわよ! でも今それは後! 敵が仕掛けてこようと勝てばいいだけ! それだけの話でしょ!」
「……それもそうだな」
凹みかけたその瞬間、アカネからの叱咤が届く。
そうだな……このファイトで負けてしまえば終わりなんだ、先のことは後で考えよう。
「今から降下場所を変える余裕はありません! このまま展望台に向かいます! 敵は本当に僕たちが降りるか確認してから出たようなので、僕らが先に着きます! なので展望台の屋上を取りましょう! 固まって行動しますよ!」
「了解!」
「分かった!」
「承知しました」
敵より僅かだが僕らの方が早く着く。初動は早く降りて武器を拾った方が有利なため、出遅れた敵は完全には同じ場所には降りないだろう。
しかしこのスポットにおいて物資がまとまって配置されている場所はこの展望台しかない。辺りは平地が広がっているのみだ。
だから敵の出方は……。
「敵は一階に降りました!」
予想通り、僕らは展望台の屋上から建物に入り、敵は展望台の一階から建物に入っていくのが見えた。
位置取りはこちらが上、ポジションは有利だ。
物資を漁りながら状況を判断する。
このまま敵の初動ファイト狙いを無視して逃げることは出来ないか……? いや、無理だな。
逃げても追いかけてくるだろうし、仮に逃げ切れても物資が不十分なため別の敵にやられるのがオチだ。ここで敵を倒して物資を奪い何とか戦える状態まで持って行く。それしかない。
同じ建物での戦い、接近戦の間合いだ。こっちには『特攻前衛』に『技能模倣』がいる。普通に戦えれば負けることは――。
「サブマシンガン……悪くはないけど、どこかショットガン無い!?」
「接近戦ですが、スナイパーライフル……これで行くしかないですな」
「ハンドガンしか無いなあ……」
「僕もハンドガンですね」
どうやら物資運が悪い。サブマシンガン、スナイパーライフル、ハンドガン、ハンドガンの4丁揃えるのがやっと、回復アイテムの方が多く配置されていたようでどうしようもない。いつもとは違って使い慣れない武器だが無いよりはマシだ
この展望台は5階建てで階段は一つしかない。さらなる物資を求めて4階から3階に降りようとして――。
「敵発見!」
報告と同時に引き金を引くアカネ。
敵が2階から3階に上ろうとしていたようだ。牽制に慌てて戻っていく。
「よし、これで3階の物資を――」
「いえ、アカネ様お戻りください!」
アカネが3階のフロアに入ろうとしたところで銃弾が飛んでくる。
「危なっ! 敵二人確認!! 爺、サンキュー!」
「3階から物音が聞こえましたので。どうやら先ほどの敵は少し遅れていたのでしょう」
つまり僕らは4階、敵は3階に2人と2階に2人いるようだ。
上を取っていたり、敵が分かれていたり、と戦術面では有利を取れているが、敵は123階分の物資、こっちは45階の物資しか取れておらず量で負けている。
物資の質までは戦ってみないと分からないが、こっちよりも悪い引きというのも考えにくいしあちらが上だろう。
「3階のフロアから階段に出ないか見張っておいてください!」
この建物は窓は開かないし、ベランダなんてものも無いので、途中階から外に出るためには階段を経由しないといけない。
そのため3階の敵が飛び降りて1階からまた合流する、ということは出来ない。
つまり形的には敵2人を3階に封じ込めていることになる。
ならば押し込むべきか、と言われるとそう単純ではない。
3階のフロアに入ろうとした瞬間に2階の敵が上がってきて挟み撃ちを取られるからだ。
もちろんそれはこっちも分かっているから3階に行くと見せかけて、2階の敵を釣り出し殲滅…………しようとすれば、3階の敵が出てきて階段上で挟み撃ちを食らう形になり……。
細かな駆け引き、銃弾が飛び交う戦場。
虚と実を入り混ぜた動きでどうにか敵の隙を作ろうとしているが崩れない。時間が過ぎていく。
くそっ……敵のオーダー分かってるな。こっちが早めに決着をつけたがってることに。
「よしっ! 2階の敵のアーマー割ったわ!」
「強引に行きます! 3階を制圧します! リリィさんはアカネのように攻めてください!」
「分かった!」
削って回復を強要させた瞬間、リリィさんに『特攻前衛』を模倣させて勝負に出る。
これ以上長引くのは僕の懸念的にも、物資的にも限界だ。銃弾が尽きそうになっている。
3階の敵に2人が攻めかかる中、僕は3階の入り口でスキル『罠設置』を発動。慌てて援護に駆けつけた2階の敵が、入り口付近にいる罠師の無防備な姿に思わず銃を撃つ。
僕はダウンするが、罠自体はセット完了している。効果を発揮させて敵をスタンさせる。
そうしてスタンしたところをジイクさんがスナイパーライフルで撃ち抜きダウン。リリィさんとアカネもそれぞれ敵をダウンさせていたことで、これで壊滅…………。
「いえ、一人逃げましたね」
敵は3人ダウン、対してこっちは僕がダウンしているだけなので3対1。
勝てないと判断したのか2階にいた一人は逃げ出したようだ。
うーん……算段では2階にいた2人共を罠にかけて全滅させようと思っていたのに……おそらく残ったのは敵のオーダーか? 戦っていて目敏いやつだと思ったし。
「な、何とか勝てたね」
「とりあえず回復するわね」
「では私はマモル様を起こします」
何が起きてもいいように回復を優先する。その後で這い蹲っている敵を確キルして物資を奪えばいいだろう。
ダウン状態から戻り、減った体力を回復してホッと一息を吐いた――そのとき。
這っていた敵3人がボンっと棺桶になった。
「っ……!?」
SSSの仕様として、体力を削りきられてダウン状態となり、そこからさらにダメージを入れると確キルとなり棺桶になる。
しかし、ダウンからダメージを入れなくても棺桶になる場合もある。
部隊が全員ダウンした場合だ。
そうなると誰も蘇生することが出来なくなるので、全滅ということになり棺桶になる。
今、敵3人は1人逃げ出して生き残っている仲間がいたからダウンとなっていた。ここで僕らが待ちかまえているためあり得ないことだが、ゲームシステム上は近寄れば蘇生出来るからだ。
だが棺桶になった。敵部隊は全滅した。
つまりは――逃げ出した最後の1人を倒せるくらいに、別の敵がこの場所に近づいているということ。
その敵が次に狙うのは――もちろん戦いを終えたばかりで疲弊して、物資も乏しい僕らだ。
僕はキルログを見る。
そこには先ほどまで戦っていた最後の一人を倒した名前が――近づきつつある敵の名前が記されていた。
『GD』と。




