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74話 模倣


 2マッチ目、リリィさんは一人でスターまで取ってきた。

 総合ポイントも一位になり、このまま3マッチ目を突破すれば、本選に進むことが出来る。

 どん詰まりだった状況が好転した、その立役者である人がVCボイスチャットに帰ってきた。




「ただいまーみんな」


「リリィ、やったわね!」

「凄いですぞ!」

「本当に助かりました、ありがとうございます!」


「わっ、ちょっとみんな一斉に言わないでよ」


 賞賛の洪水にリリィさんは驚いた様子だ。




「色々と聞きたいこと言いたいことはありますが、3マッチ目もすぐ始まりますな。作戦会議をしておいた方が良いのでは?」


「つってもリリィが暴れて、アカネたちがサポートする。それで終わりでしょう」


「ですね。リリィさんのポテンシャルを十分に発揮してもらえば……」


「な、何言ってるの!? 今のは運が良かっただけ! たまたまだから! 私はいつも通りみんなのサポートをするよ!」


 リリィさんは謙遜なのか、そのように言う。しかし大会は運だけで勝てるほど甘くはない。技能『技能模倣コピー』の圧倒的力を発揮した結果であり、3マッチ目も同様に――。




「……、……、……。いえリリィ様の言うとおりですな」


「……ジイクさん、どういうことですか?」


「マモル様、説明は後です。時間がありませぬ。リリィ様をサポートに置いての作戦でお願いします」


 ジイクさんがやけに真剣な様子で言う。




「……分かりました。それならば――」










 そして程なく始まった第三予選、最終3マッチ目。


 僕たちはこれまでのマップ南西ではなく北東の方に降りた。


 現在僕らは総合ポイント1位、他のチームは僕らよりポイントを上回らなければ本選に進めない。


 これまでは最初に僕らと戦いたくないと南西に降りる人は少なかったが、最初にいちかばちかで倒して優勝を狙う、というチームが出てきてもおかしくない。


 だからいつもの南西を避けて北東に降りた。実際南西に向かう部隊がちらほら見えたので判断は正しかっただろう。


 練習してない降下地点だが、みんなマップの情報は頭に入っている、問題なく物資を漁る。




 3マッチ目、リリィさんの力には頼らず戦うこととなった。


 それでもリリィさんのおかげで他のチームに対して優位に立てている。


 まずは単純に総合ポイント1位という順位。これにより無理にポイントを稼ぐ動きをしなくても、普通に稼げば勝てる。


 次には敵チームの対策の無力化だ。

 これは敵チームの目線に立って考えると分かる。


 1マッチ目、2マッチ目と『APG』を対策して進めていた。

 対策は上手くハマり、僕らは命からがらリリィさん一人をどうにか生き残らせた。

 敵にとって苦し紛れだと映っただろうし、実際僕らも苦し紛れだった。


 しかしその後リリィさんは凄まじい力を見せつけてスターを獲得した。

 実際はリリィさんが活躍したのは意図していなかったことだが、このことは敵にとってどう映ったか?



『ここまで隠していた『リリィ』というカードを切ってきた』



 となるわけだ。


 対策に対する対策をしていた、『APG』は対策しても無駄だ、『APG』はまだ隠しているカードがあるかもしれない。

 いずれのどのように思ってもこれまでのようには動けない。


 実際はリリィさんの力に頼らずこれまで通りに戻るのだが、敵はそれを知らない。


 大きなリードとこのギャップを使えば、安全に勝つことが出来るはず。











 実際に僕の思惑通りに3マッチ目は進み、最後三つどもえとなる場面まで来れた。そこで二部隊の集中砲火を受けて3位となったもののどうにか総合ポイント1位は維持出来た。


 こうして僕らはSSS全国大会アマチュア部門、本選の進出を決めたのだった。











「いやあ、盛り上がったわね!!」


 2マッチ目の劇的な勝ち方からの本選進出。アカネの配信は大盛り上がりでスパチャが飛び交う事態となった。

 3マッチ目が終わった後もしばらく騒いで配信していたが、それもようやく終えて、チーム四人だけとなる。




「勝てて本当に良かったね」

「何よ他人事みたいに。今日の勝利は全部リリィのおかげよ!!」

「えっ!? えっと……アカネちゃんがそんなこと言うなんて珍しいね」

「アカネだってちゃんと認めるところは認めるわよ。でも負けないんだから! とりあえず一対一しましょ!」

「もう急だなぁ……分かったよ」


 リリィさんとアカネがSSSの訓練場に入る。




「そういえばジイクさん。結果的には勝てましたけど、どうして3マッチ目リリィさんの力を頼らなかったんですか」


 僕は気になっていたことを聞く。


「少しリリィ様の力に懸念がありまして……おそらくこの一対一を見ていれば分かると思います」

「……?」


 懸念と首を捻る中、リリィさんとアカネの一対一が始まる。


 といっても結果は火を見るより明らかだろう。

 リリィさんには『技能模倣コピー』がある。

 一対一は少し距離を置いた地点からスタートするようで、それなら『中間支配』によりアカネは近づけさせてもらえないだろう。

 もし近づけたとしてもアカネと同じ『特攻前衛』を使えば後れを取ることはない。


「リリィ、本気で来なさいよね!」

「うん、分かった!」


 リリィさんが圧勝するに違いないと見守る中、勝負は。




「よっしゃーアカネの勝ち!! やったわ!!」

「うーん、やっぱりアカネちゃん強いね」


「またまたアカネの勝ち……だけど」

「どうやれば勝てるんだろう……」


「アカネの勝ち……?」

「もう~、無理だって、アカネちゃん強すぎるもん」



 結果はアカネの連勝だった。



「もうリリィ本気出してよ!!」

「そ、そんな言われても本気だよ!? 私もう結構限界だよ!?」


 アカネの言葉に驚いて言い返すリリィさん。嘘を吐いている様子はないが、しかし2マッチ目の様子を思い返すとそんなはずないと思ってしまう。


「リリィ様、少しアドバイスですが」

「なんですか、ジイクさん」

「プロプレイヤー『グラン』選手のような戦い方でもう一回アカネ様と戦ってもらえますか」

「『グラン』さんって『中間支配』の。……そっか、近付けさせなければアカネちゃんも……やってみます」


 ジイクさんの一言の後、もう一回一対一が行われる。

 その戦いは一方的だった。中距離から火を噴くリリィさんの銃撃によりアカネは全く近付くことが出来ずそのまま勝つ。


「や、やった! アカネちゃんに勝てた!?」

「こ、これは実際戦うと凄まじいわね……でも……」


 喜ぶリリィさんと悔しさよりも疑問が沸いている様子のアカネ。




「……あ、ごめん! 仕事の電話だ! ちょっと席外すね」


 ブツッ、と音がしてリリィさんの声が途絶える。




「爺、一体どういうことなの?」

「そうですよ、リリィさんはどうして最初『技能模倣コピー』を使わなかったんですか?」


 リリィさんがいなくなったところで僕らは問いただす。


「私の推察となりますがいいですか」


「聞かせてちょうだい」


「オホン、おそらくとなりますが、リリィ様はあれだけの活躍をしてなお、精神的には初心者のままなのだと思われます」


「……? でも実際は一人で戦場を蹂躙したじゃない」


「それはたまたま上手く行っただけ……と本気で思っているのでしょう」




「なるほど。つまりアカネとの一対一も最初気分は初心者のままだからその範疇の本気で戦っていた」


「でも爺のアドバイスでプロのように戦えと言われればその通りに戦える。……でもおかしいわよ。2マッチ目の時は普通に自分の判断で戦っていたじゃない」


「あれは戦場に一人しかおらず追い込まれていたから出来たことでしょう。通常時ではマモル様のオーダーに従う初心者になる、だから3マッチ目はリリィ様の力に頼らず戦うように言ったのです」


「あーそれを知らずに戦っていたら事故が起きていたでしょうしナイスでしたね」





「えっとつまりリリィの技能『技能模倣コピー』は自分から積極的には使えない、使わない……消極性模倣コピーってわけ?」





「そのようですな」





第三予選編、決着。

次話より新展開です。

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