69話 対策
『つまりこの戦場にいる全てのチームが僕らを警戒して、研究して、対策して臨んでいるって事です』
これこそが1試合目の違和感の正体。
前提として僕らはアカネのchで今回の大会に向けた練習を配信していた。大会に向けた立ち回りのほとんどをその場で晒け出している。
他のチームはこの練習配信を繰り返し見ているとほぼ断定していいだろう。僕が逆の立場ならそれくらいのことはする。
そうして考えたとき、まず最初、僕らが降りた南西方面に他のチームが降りなかったのは、そうやって対策してもなお一番最初に真正面から『APG』とぶつかりたくないからだろう。だから僕らの近くに降りることを避けた。
安全地帯が反対の方面になったこと、これは完全に偶然だ。
次に本来ボートで降りる予定だった地点に待ち伏せされていたのは、練習を見てよくやるムーブだったから予想したという事だろう。悪い予感がして一個手前の地点に降りて助かった。
その部隊と戦って、しかし漁夫が来なかった理由はキルログから戦っている部隊が『APG』だと分かったからだろう。漁夫は仕掛ける方が有利だが、それでもなお僕らに勝てるか分からなかったから仕掛けを見送った。
最後に潜伏場所がバレたのは僕らがよく隠れる場所に念のために手榴弾を投げた、本当にいるとは思っていなかったから面を食らった様子だった、ということだろう。
「………………」
謎が解明された、事前に想定できていなかったのは落ち度だが、それでも分かりさえすれば2試合目からは対応出来る。
――といったような簡単な話ではない。
練習配信で見せてしまった立ち回りは僕なりの最善を追求したものだ。故にそれを曲げれば100%の力を出せなくなる。
それに意識して変えられることだけではない。
最後の戦闘、敵はまず戦闘能力の低い僕に攻撃を集中して人数差を作り、遠距離が得意なジイクさんには接近戦、近距離の得意なアカネには遠距離戦としっかりと弱点を突いてきた。
『APG』には一芸特化のメンバーが多い。ハマったときこそ強いが、対策されると脆い。
ズルい、卑怯だ、とは当然の事ながら言えない。
僕らだって第二予選ではバアサーカー選手とキラー選手を対策することで勝ち上がってきた、
強い敵がいるなら対策するのはゲーマーとして基本だ。
今思えば、第二予選はバアサーカー、キラー両選手と同じブロックになったことで助かっていたのだ。
僕らの他に目立つ2チームがいたことで全てを対策することは難しく、手が完璧には周っていなかったのだろう。
状況は良くない、と沈み込む僕に対して。
「まっ、それくらいならどうにでもなるでしょ」
あっけらかんとアカネは言った。
「どうにでも……って」
「だってアカネにとっては今さらだもん。配信者として名前が売れていくにつれそりゃもう対策なんてされまくったわよ。っていうか、アカネたちが最初に戦い合った交流戦の時だって、マモルたちはガチガチに対策してきたじゃない」
「………………」
「学校のテストなら対策して全問解けるかもしれないけど、ゲームなんて対策してたのに、分かってたのにやられることなんてよくあることでしょ。対策されようが構わないくらいに力を磨くのよ。
アカネたちの目標は優勝してプロになることよ。プロなんてそれこそ競技シーンは全世界に公開されて対策し放題じゃない。それでも勝つ人は勝つ。そんな世界に飛び込むんだから弱音なんて吐いてられないわよ」
アカネの正論に何も言えなくなる。
「まあアカネ様の得意とする近距離戦とマモル様の役割であるオーダーでは、対策されたときの影響の大きさが違うとは重います。
ですが私としてはこう言うしかありません。それでもマモル様にはやってもらわないと困ると」
ジイクさんから叱咤激励が入る。
「……分かりました。どうにか2試合目は軌道修正して見せます……!」
ここまで言われて奮起しなければ男じゃない。
そもそもここまで来て諦めるという選択肢は存在しないんだ。だったら少しくらい厳しい状況でもやるしかない。
「……ところでリリィさん、大丈夫ですか?」
「え、あ、その、何かな?」
「いえ、ずっと発言が無かったので音声トラブルでもあったのかな、と思いまして」
「あはは、それなら大丈夫……うん、それなら大丈夫だけど……」
「何かありましたか?」
「……いや、本当に大丈夫だから! それより2試合目開始まで時間が無いんでしょ? どうするか話し合わないとだよね!」
「まあ、そうですが……」
大丈夫を連呼して明らかに大丈夫じゃないリリィさん。
だが時間がないのも事実だ。
「……分かりました。これまで練習配信で見せてきたことは敵にバレているという前提で、新しい方針について話します」
リリィさんを信じることにして、2試合目の方針について語り出した。




