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63話 狩場


 ズダダダダッ……!!

 外の戦場でまたマシンガンを撃ち放つ音が響く。

 似つかわしくない音だ。



「工事現場のドリルのような断続した音、不快かな、不快かな。

 無駄があっても良い、数撃ちゃ当たる、何とも低俗な精神か。

 あれとは違う。

 拙者、高潔な狩人に必要なのは――ただ一撃」



 パスン――!

 逃げようとした敵の頭を撃ち抜く。



「我が領域に来るか、痴れ者よ。一歩踏み入れたが最後、そこが貴様の墓場だ」


 キラーは一分の油断も無く待ちかまえる。 



ーーーーーーーーー



「よしっ、これで3部隊目……って、ああ!? キル奪われた!!」


 第一収縮もとうの昔に終わり、第二収縮が始まろうとする中、マモルこと僕とアカネは順調だった。

 上手くキルを重ねてポイントを稼げている。3部隊目は最後の一人に逃げられたところを奪われたのでこれで11キル。

 奪ったのは――。


「いや、アカネ。ナイスだ」

「はぁ?」

「ログを見てみろ、今のキルを取ったのはキラー。おかげでやつの場所も分かった」


 銃弾がどの方向から飛んできたのかは当然確認している。

 北東に600m……うわーロングスナイプだなー。まあチームメンバーがやられて形振り構わず逃げようとして狙撃の警戒が薄れていた敵だからこそ撃ち抜けたんだろう。


 にしても奴が潜んでいるのは……確か変電設備があるところか。遮蔽が大きく構造が複雑なため上手く身の隠し方を変えれば360度に対して狙撃出来る、良い地点だ。




「何だ、すごい狙撃手だって聞いてたのに、もう尻尾を出したんだ」

「誘ってるのかもね、やつらだってこのまま僕たちに暴れられたら面倒だろうし」


 さて、どうするか。

 キラーの場所が分かった、やつの腕は別格だ、他の敵と同じようにはいかないだろう。


 僕たちが取れる手段は二つ。

 一つは無視すること。その狙撃範囲に入らないようにして他の敵を倒していく。最終的にポイントで上回ればそれで勝ちだ。

 もう一つは――。


「それでどうやってあいつを倒すの?」

「……戦うのか?」

「もちろんよ。放っておいても勝てるかもしれないけど、ここで落とせれば絶対に勝てる。どっちでもギャンブルならより楽しい方よ」


 元々ポイント差がある、キラーを放置してはポイントを稼がれて僕らより上を行かれる可能性もある。

 逆にここで倒せばそれ以上ポイントを稼がれなくなるが、当然ながら戦闘で負ける可能性がある。


 個人的には慎重に行きたいけど、戦うのは主にアカネだ。そのアカネが強敵と戦いたいとしている。

 どちらを選んでもリスクはある、なら気分が乗っている方に行くのも手か。


 それに策が無いわけじゃない。やつは一流のハンター、だからこそ付け入る隙がある。

 



「分かった、キラーをここで倒す。だけどやつは強敵だ、今から作戦を説明するからちゃんと聞けよ」

「了解……!!」




ーーーーーー




 遮蔽から遮蔽を渡り歩くチーム『APG』の動きを拙者は監視していた。

 一応射程範囲内ではある。

 しかし、敵は狙撃を警戒して不規則に左右に揺れながら動いている。距離もあることから流石に拙者でも頭を撃ち抜くことは難しい。

 胴体に当てても一撃ではダウン出来ないため、そのまま遮蔽に逃げ込まれて回復されるだけだろう。


 だからここは撃たない。


 逸る必要はない、ここにたどり着かれる前にただ一撃を入れさえすればいい。

 有利なのはこちらだ。




 『APG』の2人が距離およそ300mの遮蔽に逃げ込む。

 ここより先は拙者の領域、近づけば撃つ。


 右か左か、どちらから出てくるか見ていると。

 上に動きがあった。


「手榴弾……!」


 チームメンバーの一人が驚声を発する。

 遮蔽に隠れながらこちらに向けて山なりに投げられた手榴弾、しかし拙者は露ほどの動揺もなかった。


「狙撃手の天敵、手榴弾。故に投擲可能距離は把握している。そこからは届かないだろう」


 拙者の読み通り手榴弾は手前に落ちて爆発した。

 ならば無駄にしただけか――否。


「はぁっ……!!」


 手榴弾に気を取られた隙に動こうとしたのだろう、姿を出した罠師を狙撃する。

 結果は惜しいところで頭を外したが、泡を食ったように罠師は元居た遮蔽に戻っていった。牽制としては効果を発揮したようだ。


「近付かせんよ、これ以上は」


 これで分かっただろう、拙者の領域に入る無謀さが。

 敵の次の一手にもそれが現れている、やつらはひとまず接近を諦めて横に動き始めた。

 近付いてくる動きではないため狙撃しにくい。それに今いる地点から狙えなくなったため狙撃地点を移動する。


 今までは敵は南から近付こうとしていたから、拙者も南に対して身を隠すように遮蔽を使っていた。

 ここで敵が西の方に移動したから今度は西に対して身を隠す。


 この地点にはそれだけのスペースが十分にある。どの角度から来ても接近は不可能だ。


 やつらの隠れた遮蔽を完全に捉えた、出てきて接近しようとする度に拙者は狙撃する。

 おちょくるように出たり入ったりを繰り返すがその度に分からせる。

 弾切れでも狙っているのか? 残念だがまだ余裕がある、無駄弾を好まないのはポリシーでもあるが、このような持久戦のときのためでもある。






 少ししてそのときが訪れた。


 頭ではないが胴体に狙撃が当たった。




 そう、これは――――大ピンチだ。


 何故なら狙撃されたのは――――拙者の方だったから。




「何事っ……!?」




ーーーーーーー




「命中した!!」

「よっしゃ行くわよ!!」


 時同じくして、キラーが狙撃されたのを確認した瞬間、マモルたちは動き出した。


 一体何が起きたのか?


 マモルとアカネはスナイパーライフルを持っていない。

 故にキラーを狙撃したのは――第三部隊によるものだった。




 マモルはキラーに接近を試みながらも、周囲の部隊の位置を確認していた。


 それによってキラーを狙撃出来る位置に敵がいることも分かっていた。


 敵の敵は味方、利用するつもりではあったがそれには三つの条件があった。




 まず一つ、その敵がキラーに気付いていない可能性を無くすために手榴弾を投げて、爆発音によりキラーのいる地点に注意を向けさせる。


 二つ目、敵がいる場所からは上手く射線が通ってないようなので接近する方角を変えることでキラーの狙撃地点を変えさせて狙えるようにする。


 三つ目、キラーに隙を作るために遮蔽から出たり入ったりを繰り返して、こちらに注意を引きつける。




 これによって敵はキラーを狙撃、頭に当たっていないため一撃でダウンこそしなかったものの、回復のために引っ込まないと行けなかった。

 その隙を逃さないとマモルたちが迫っているのである。




ーーーーーーー




「くそっ……何故だ、何故だ、何故だ……!!」


 回復をしながら拙者は地団駄を踏みたい心持ちだった。


 狙撃された瞬間に悟った、ここまでの『APG』の動きが拙者を狙撃させるためだったことに。


 『APG』に集中しすぎて周囲への警戒を怠ったことは認めよう。




 だが、そうだ。なぜ怠ったのか、それは――。


「納得がいかん!! 狙うならば、あちらだろう……!!」


 狙撃した敵の位置、そこからはチーム『APG』を狙うことも出来たはずだ。

 なのにどうして……拙者とやつら、狩人ならどう考えても迷い込んだ獲物を狙うべきだ……!!




「何故それが分からぬ! ここは至高の狩場では無かったのか!!」




ーーーーーーーー




 キラーの敗因、それはここが狩場だと思ったことだ。




 マモルこと僕は考える。


 卓越した狙撃技術は獲物を倒せば勝ちというルールなら最強だった。

 しかし、ここはバトルロイヤルルール、狩場ではなく戦場だ。


 故に自身が獲物となってしまう可能性を常に考慮しなければならない。


 ちょこちょこと動いて狙いにくい敵と狙撃体勢に入って中々動かない敵。

 総合ポイント4位の敵と1位の敵。


 どちらを狙えば利があるか?


 十中八九、キラーを狙うだろうと踏んでいた。




「ウザい抵抗ね」

「ああ、押し通るぞ」


 キラーが回復している間、やつのチームメンバーが時間を稼ごうと応戦してくるがやつほどの錬度はない。

 ここまで接近すれば勝ちパターンだ。僕の援護を受けて、アカネが敵の懐に到達。


「じゃあね」


 


 こうしてキラー率いる、チーム『闇夜のウルフ』は脱落した。



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