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6話 スキル




『とりあえず物資が足りませんし、どこかのチームでも倒して強奪するとしましょうか』




 その言葉にユリこと私は、え、本当にそんなこと出来るの? と率直な疑問を持った。

 こちらのチームは二人、同じように人数が削れているチーム相手じゃないと人数差による不利を背負うのに……。


『リリィさんのキャラって『鳥使い』でしたよね。そろそろスキルも溜まっているはずですし、周囲のスキャンをしてもらえますか?』

「あ、はい」


 マモルくんに言われて確認すると確かにスキルが溜まっている。スキルは降下してすぐには使えず、一定時間の経過が必要となる。一度使って再使用するにも、また時間が必要となる仕様だ。


「よーし。行っておいで、ホーク!」


 だから私はいつもの調子でスキルを発動して――。




「あっ」

『……僕は何も聞いてません』

「聞こえてないとそんなこと言えないよね!?」


 鳥使いの鳥にはゲーム的な名前が存在しない。だから普通の人は鳥と呼ぶらしいが、私はそれが味気ないように思えて『ホーク』という愛称を勝手に決めてスキルを使う度にその名前を呼んでいた。

 そのいつも通りがボイスチャットを通じてマモルくんにも聞こえて……。


「ううっ、さっきから私恥ずかしいところばかり見せてる気がする……」

『リリィさんがゲームに入れ込んでる証拠ですって、僕は気にしませんよ』

「私が気にするのぉ」


 マモルくんはフォローを入れてくれるけど本当はどう思っているだろうか。

 というかそもそもリリィという名前自体どうなのだろうか。本名のユリから百合の花の英語で『Lily』→リリィと何も考えずに名付けたんだけど……。

 他人にリリィと呼ばせて、ゲーム中に独り言を呟いて、ゲームのキャラに勝手に愛称を付ける26歳独身女性……なんか役満でも揃いそう。




『さてそろそろホーク君が仕事を終えたはずですし、確認しましょうか』

「やっぱり聞こえていたんじゃないですか!」

『ははっ』


 わざわざ名前を出してイジられる。

 私はむくれながらもマップを開いて確認する。


 鳥使いのスキルの詳細は上空を飛んだ鳥から敵の位置を教えてもらうというものだ。鳥は『ピュイー!』と鳴きながら飛ぶので索敵されたことは敵にも伝わってしまう。範囲はそれなりに広く、巨大オブジェクト『神殿の廃墟』でもその全域を覆えるほど。

 索敵の結果はマップに光点として示される。このとき敵が建物の中にいても構わず分かる。

 どうして鳥が見ただけなのに光点で表示されるのかとか、どうやって建物の中にいる敵を判別しているのかとか、疑問は尽きないがそういう仕様だ。


 索敵結果はチームメンバーのマップにも表示される。マモルくんも確認して呟く。


『5チーム。思ったより減ってますね』

「最初10チームくらい降りていたから、半分ですね」

『僕たちの目の前で一つのチームが脱落しましたし、各所で起きた戦闘でも脱落したり、既に安全地帯への移動で神殿を離れたチームもいるんでしょう』

「ほへー」


 マモルくんの分析に間の抜けた声を返す。

 スキルを使っても敵がこの位置にいるという表面的な捉え方しかしてこなかったので、そこまで分析出来るなんて思ってもいなかった。


『しかし敵の具体的な位置が分かるのはありがたいですね。僕たちの位置と敵の位置からして…………まずは東の広場に行きましょうか』

「え、東ですか?」


 さらにマモルくんがマップを睨みながら出した指示。しかし東の広場には光点が存在しない、敵がいない場所だ。

 敵を倒して物資を強奪するって話だったから一番近い敵のいる南の広場に向かうかと思ったのに……。


『疑問は分かりますが、説明する時間も惜しいです。とりあえず行けば分かりますので』

「あっ、はい! 指示に従うって話でしたもんね! 了解です、マモル隊長!」

『だから隊長というのは……』

「ふふっ、仕返しです」


 とやりとりしながら、東の広場に向かおうとして。


『あ、注意を忘れていました。床に落ちている物資は一つも拾わないようにお願いします』


 マモルくんはそのように言った。

 物資が足りないから強奪しようとしてるのに、拾っちゃ駄目……?

 矛盾するようだったが、声音からして急いでいる様子だったので。


「イエッサー!」


 とだけ返す。


『……付いてきてください』


 何か言いたげでしたが止めたマモルくんに私も着いていく。

 すぐに東の広場に辿り着き、一つの小部屋に入りました。




『ここで少し潜伏します。僕はこちらの物陰に、リリィさんはそちらに隠れて』

「はい!」

『後は敵が来るのを待つだけですし、その間に疑問に答えましょうか』

「はい、はーい! まず質問です! どうして南の広場に向かわなかったんですか!」


 私はここぞとばかりに聞く。


『南の広場……一番近い敵がいた場所。光点が四つ揃っていたから、メンバーも欠けていなそうですね』

「はい、スキルで場所が分かったメリットを生かして奇襲をしかければ……」

『駄目です。リリィさんはスキルのデメリットを把握していません』

「え?」

『鳥使いのスキルは鳥が鳴きながら飛ぶため敵にも索敵したことがバレます。敵は警戒していて当然です』

「あっ……そうですね」

『スキルは基本的にメリットもあればデメリットもあるように設定されています。一方的に敵の位置をしれたら強すぎますからね、索敵したことがバレることでバランスを取っているのでしょう』


 マモルくんに言われてその通りだと思った。私だって敵の鳥の鳴き声が聞こえたら警戒する。


『敵の視点に立って考える、のが苦手みたいですねリリィさんは』

「ううっ、ドンピシャです」

『基本的な操作はしっかりしていますし、察するにあまり対人ゲームをしてこなかったのでは?』

「そうですね、RPGとかのCPUと戦うゲームが多かったかもです」

『だったら今からその視点を身につければいいだけです。僕が東の広場に来たのはその南の広場にいた敵がここに来ると考えたからです。その理由が分かりますか?』


 マモルくんに言われて私は考える。


「理由、理由。ええと、敵の立場に立って……まず鳥使いのスキルが使われた、南の広場にいるのがバレた」

『はい、そうですね』

「いつまでも居場所がバレたところにいるのは怖い。移動をしよう」

『どこに移動しますか?』

「どこにでも移動出来るけど……せっかくだったら北東の安全地帯に近づくように移動しよう」

『そうなると?』

「東の広場にたどり着きます」

『東の広場を見て思うことは?』

「物資が落ちたままで荒らされた形跡がない。まだ誰も来ていない場所だろうと思われる」

『だったら』

「散開してそれぞれが物資を漁る。それが効率がいいから」

『その過程で……』

「私たちのいる小部屋に一人のこのこやってくる……!!」


 言葉通り、敵チームメンバーの一人が部屋に入ってきて、私たちが隠れていることに全く気付かず地面に落ちた物資を拾っているところに、私たちは銃弾を浴びせるように撃った。


 二人分の銃弾を受けたその人はすぐにダウン状態になる。SSSでは体力が0になるとダウン状態に移行して、その間は地面を這いつくばって移動することしか出来なくなる。この状態ならチームメンバーによる応急処置によって復活することが可能だ。

 しかしダウンからさらに一定の攻撃を食らうと確殺となり、棺桶となってその場に残る。こうなると応急処置はできない。そしてこの棺桶から持っていた物資を奪うことが可能になる。

 ハンドガンしか持っていなかったマモルくんはさっと棺桶から敵の持っていたライフルとその他物資を手に入れる。




『一人始末完了……だけど』

「うん、銃声が響いたし、そうでなくても味方が死んだ位置は分かる。他のチームメンバーがここに来るってことですよね!」

『はい、油断せずに行きましょう』


 敵の視点に立って考える。

 これまで敵を見つけては正面から突っ込むことしかしてこなかった私だったけど、マモルくんとプレイしていく内に何だか本当の意味でSSSが上達していくことを感じ取っていた。



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