57話 狂戦士
戦場における強さとは何か?
バアサーカーことアタシの存在がその答えだ。
数々の戦場を経験したのにババアと呼ばれる年まで生き残ったこのアタシ。
生存力。
例え大局的に負けようとも生き残りさえすれば次がある。
死ねばそこで終わりだ。
この電子の戦場においてもそれは同じ。
生き残ること、それが鉄則だっていうのに――。
「アイツは何やってんだろうねぇ」
流れてきたジイクフリートのキルログに思わず愚痴る。
アタシとやる前に落ちるなんて……本当拍子抜けだよ。
「ひぃぃぃぃっ……。やーっと落ち着いた」
「ったく、あんたたちもだらしないねえ、二人も落ちるなんて」
「面目ないっす」
「っす」
チームメンバーは乱戦の中で既に2人落ちている。
いつもならこいつらのお守りをしながらでも蹂躙出来るけど……流石に大会ってことかねえ。最初に仕掛けた後も順調にキルを重ねたが、敵が集まりすぎて撤退してきたところだ。
まあキルは8も取れている、十分な戦果だろう。
「腑抜けるんじゃないよ、ほら近くで銃声だ、アタシたちも行くよ!!」
「ひぃっ、まじっすか!?」
ズズズズズ、と近くの工場の入り口が開く音と共に銃声が鳴り始めた。
そちらの方に近づくと……ちょうど罠にかかった獲物が見えた。
「いただきっ!!」
すかさずマシンガンをぶっ放して2キル奪う。
1部隊が壊滅、残った敵部隊はキルログからして――。
「『APG』……いいねぇ。ジイクがいないのは残念だけど、遊ばせてもらおうか!」
アタシは襲いかかった。
ーーーーーーーー
迫り来るバアサーカー。
といっても一直線にではなく、遮蔽物をきちんと利用して詰めてきている。
「マモル君、どうするの!?」
「攻めるに決まってるでしょ!! わざわざ敵から近づいてきてるのよ!!」
「……敵は二人だけのようですし応戦します!!」
見える敵は2人、こちらの3人よりも少なく、しかも相手から近づいてきているためだいぶ有利な状況だ。
それなのに一瞬逡巡したのは敵が『無双前衛』であるからだ。
敵の土俵であるインファイトに乗るのは怖い、有利な状況も消し飛んでしまいそうだ。
でもこっちにだって『特攻前衛』がいる。
それにここで逃げていつ勝負するんだ。なるべく戦わないが僕の信条だけど、ここは戦うべき状況だ。
「援護お願いね!!」
いの一番に駆けるのはアカネ。チームの特効隊長がバアサーカーと激突する。
このゲームにおける接近戦はどれだけ弾を当てるかより、どれだけ弾を避けるかの方が重要だ。いくらエイムが良くても遮蔽物も無く棒立ちで撃ち合えば負けてしまう。
そのためアカネとバアサーカーはオブジェクトとして配置されている少し積まれた荷物を遮蔽として挟み対峙する。
顔を出しては引っ込めたり、ジャンプで遮蔽を登って有利を取ろうとして、しかしその瞬間が隙だと咎めようとして、だがそれはフェイントですぐに降りて応戦して――――。
さながらダンスのようだな……!
激しく動き合っているのに要所要所でお互いダメージを与え合っている。僕だったら動くだけで精一杯でエイムなんて合わないだろう。
リリィさんはもう一人の敵と撃ち合っている現状、僕がアカネの援護をしないといけないのだがこうも動きが早いと難しい。
なのでチャンスを狙い澄まして待つことにして――そのときが訪れた。
「くっ……!!」
バアサーカーが荷物に登り切り上から撃ち下ろす。アカネも返す刀で反撃するが、既にバアサーカーは反対側にジャンプしながら飛び降りていて。
「ここだ!!」
アカネから射線を切ったものの、バアサーカーは空中で動くことが出来ない。着地した瞬間を狙って僕は銃弾を放ち。
「なっ……!」
バアサーカーの体が焔と化して、銃弾がすり抜けた。
巫女のスキル『焔化』、アカネも使っているSSSにおける近接最強キャラをバアサーカーも使っている。『焔化』は使用前後に隙があるが、ジャンプした瞬間に印を結んでいたようで着地した一番無防備な時間を無敵でやり過ごされた。
「だったら後隙を刈るわよ!!」
炎の軌跡を残しながら味方の元に逃げようとするバアサーカーをアカネは追いかけるが。
「深追いしすぎだ!!」
逸りすぎだ、そこは僕とリリィさんの援護が届かない位置である
焔化を終えて体力を回復させようとするバアサーカー、その時間を稼ぐためにアカネと撃ち合う敵のもう一人。
僕とリリィさんもそこまで駆けつけてどうにかそいつをダウンさせるものの、回復を終えたバアサーカーがアカネの元に迫る。体力がほとんど残っていないアカネはピンチだが。
「よし、退却――――あれっ!?」
今度はこっちが『焔化』で逃げる番……だと思ったのだが、アカネのスキルは不発に終わり、完全な隙を晒したアカネは撃たれダウンした。
僕も一瞬何が起きたか分からなかったが、すぐに思い当たった。
スキル使用のインターバルか……!!
SSSにおけるスキルは常駐型でない場合、一度使用すると再使用可能になるまで時間がかかる。
先ほど屋上でジイクさんがキラーに撃たれたとき、アカネはその場から逃げるために『焔化』を使った。
そこからすぐ中に入って1部隊を壊滅させて、そのままバアサーカーと戦闘に入ったため『焔化』使用からさほど時間は経っていない。
そのためまだ『焔化』が再使用出来なかったのだろう、そのため不発した。
目まぐるしい戦いに巻き込まれたため経過時間を錯覚するのは仕方ないところはある。
とはいえこのミスは致命的であり――。
「っ……ごめん!」
アカネの退却を援護しようと前に出ていたリリィさんがバアサーカーに撃ち込まれてダウン。
これでこの場は僕とバアサーカーの1対1。
とはいえ僕もアカネと同じように罠設置を先ほど使用したため、再使用までの時間が経っていない。
僕に出来ることは少なく、また普通に戦おうにも腕前の差は歴然、逃亡も許してはくれないだろう。
なので僕は手榴弾を放り投げて――。
その直後に殺された。
ーーー
「3キル追加、上々だねぇ」
危ない場面もあったけど、あいつのいるチーム『APG』を落とした。
これでジイクもやる気を出して2マッチ目、3マッチ目で復讐にでも来ればこちらも遊びがいがあるんだけどねぇ……。
「チームの前衛はあの娘だったはず……光るものはあったけどまだまださね」
至近距離でのやりとりはかなりスリリングで久方ぶりに血がたぎったもんだ。
とはいえ幕切れはあっけなかった、スキルが不発したようで……自身の状態を管理出来てないようではまだまだ。
他の二人は退屈もいいところ、あの娘のミスに巻き込まれた鳥使いはまだしも、罠師の方は最期見当違いな方向に手榴弾を投げて――。
「あれ……?」
戦利品を漁って体勢を立て直して、ようやくその異変に気付いた。
ダウンしていたはずの味方に確殺まで入っていることに。
「すいませんっす、這ってどうにか遮蔽に隠れてたんすけど、そこに手榴弾が飛んできて……」
落とされた味方がそのように釈明する。
「ははん……そうかい」
どうやらあの手榴弾はアタシを狙ったんじゃなくて、こいつを狙ったのだと。
大会のルールではダウンさせてもポイントは入らない、確殺までして初めてキルポイントが入る。
アタシに勝てないと踏んで、ならばキルポイントだけでも奪おうとあの一瞬で判断して、しかも手榴弾を隠れていたこいつにピンポイントで当てた。
ポイントを稼げる上に、一人になったアタシは流石にかなり動きが制限される――。
「どうやらジイクも面白いやつらを集めたようじゃないか、けひひ」
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「第一マッチ終了!! スターを獲得したのはキラー選手擁する『WOD』だ!!」
「キラー選手の巧みな狙撃によって、完全に外を掌握していましたね」
「しかーし!! 総合ポイント1位はバアサーカー選手擁する『BFT』!! 順位こそ6位に終わったものの、キルポイント14が大きかったようです!!」
「最後一人になったバアサーカー選手でしたが、そこからも相打ちで一人キルしてましたからね、凄まじいですよ」
「もう一つ注目のチーム『APG』は3キルの生存順位は11位で、総合ポイントも9位と振るっていない様子」
「ここからの巻き返しに期待したいですね」




