56話 狩人
SSSのゲーム性には欠陥がある。
キラーこと拙者は常々そう考えていた。
何故なら一撃で敵を倒すことの出来るスナイパーライフルが一番射程が長いからだ。
格ゲーなどではこんなことはない。強い攻撃は基本的に短射程と決まっている。
もちろん連射が出来ない、一発撃つごとに隙が出来るなどの調整がされていることも分かっているが……そんなの当てさえすれば問題なかった。
第二予選、第一マッチ。
一次収縮を終えて移動を迫られ、のこのことやってきた獲物。
「まずは一人」
その頭を撃ち抜く。
この獲物は拙者たちがこの遮蔽に潜んでいると見抜けなかったのだろう。
しかし無理もない。拙者のように狩りの極意を学んだ者ならともかく、一般人には音を立てないなど不可能だ。
同士たち三人は気が合うものの、SSSの練度はそこまで高くない一般人である。
故に普通なら潜伏に気付かれるところに一計を講じた。
戦場に降り立ち最速で漁った後、この遮蔽に隠れてから、同士三人にはデバイスから手を離させた。
操作をしなければ何も音が鳴らない。
もちろん何かあったときの反応は遅れるが、拙者が敵を近づけさせねば何も起こることはない。
こうして完璧な伏兵が決まった。
さらに隣のもう一人を狙おうと照準を向けて放ち――。
「……『焔化』か」
仲間が撃たれた瞬間には発動していたのだろう。印を結ぶモーションを終えて巫女のスキルが発動、火の玉の無敵状態となって銃弾が空を切る。
そのままダウンした仲間は見捨てて、三人で屋上から下に飛び降りた。
「逃したか……しかし判断が早い。一体どこの敵で……なるほどな」
キルログからこの戦場で要警戒の相手、注目度の高い予選ブロックを勝ち上がり、実力も高い『APG』だったことを知り納得する。
「だがこれで『APG』は外から脱落。中の地獄でもがき苦しむが良い」
工場の中、乱戦となっているだろうその様相を想像して思わず吐き気を催す。
何とも美しくない戦場だ、非効率的すぎる。
それに比べて外は良い。
このひりつく緊張感。狩人たちの集い。
獲物となってしまった者から脱落していく狩り場。
もちろん一番の狩人は拙者に決まっている。
「さて、きちんとトドメを刺しておかないとな」
ダウンして這いつくばるしかないジイクフリートに銃弾をもう一発、棺桶に変えるのだった。
=======
「確殺入れられましたか……」
這いつくばりながらでも移動して下に降りることが出来れば、ワンチャン蘇生を通せると思ったのだが、やはり許されなかったようだ。
「……本当に申し訳ありません。私が敵を見抜けなかったばかりに……」
ジイクさんが謝る。
「いえ、決断したのは僕です。ミスじゃありません、今のは敵が一枚上手だっただけです」
キルログに記された狙撃手、要警戒人物のキラー選手は完璧に気配を消していた。
僕らが屋上に上がるより前に潜伏して待ち続けていたのだろう。言葉にすれば簡単だが実行は難しい。
上手く行ったとしても敵が近づいてくるかは完全に運だ。何もないまま安全地帯の範囲外になって結局移動しないといけなくなる可能性だって十分にあり得た。
報われるか分からない行動に徹することはやはり精神的にキツい。
それでも敵はやり遂げた。生粋のハンターである。
(ジイクさんが気付けなかったのも無理はないけど…………今日のジイクさんはどこか調子が悪かった、だからという可能性も…………いや、今考えることじゃないな)
「そ、それでこれからどうするの?」
想定外の事態に焦った様子のリリィさんが問う。
ジイクさんが撃たれた瞬間に応戦も救助も不可能と判断して見捨て、僕らは屋上から飛び降りた。
その結果チームメンバー3人と戦力は弱体化したものの全滅はしていない。
「中に行くしかありませんね」
遠距離戦の要であるジイクさんを落とされた時点で僕らに外で渡り合う力はない。そもそも今の煮詰まった陣取りゲームとなった屋上に登った時点で蜂の巣にされるだろう。
だったら中、未だ戦闘音の絶えない乱戦に身を投じるしかない。
「ふふん、ってことはアカネの出番ね!」
にわかにアカネが元気付く。
外で役割の無かったところから、自分の実力を発揮できる中に移動するのだ。調子づくのも無理はない……けど。
(今日のアカネは何やらジイクさんに反発している様子だった。そのジイクさんが落ちたことで気が晴れたという側面が無いとは…………)
ああもう……ノイズが多い……! 二人に釣られて僕まで調子を崩してどうする! 今は戦場のことだけを思考しろ!
「よし、行きますよ!」
意気揚々と工場の扉を開けるとズズズズズ……と大きな音が鳴り響く。
この辺りに入り口は一つしか無く、資材運搬用にトラックでもそのまま入れるような大きな扉しかない。必然的に開けるだけで大きな音が鳴り周囲に自分たちの位置を知らせてしまう。
「っと、早速手荒い歓迎ね……!」
中に入った瞬間飛んでくる銃弾に僕らは近くに積まれている荷物の陰まで滑り込んだ。外での争いに敗れた者が中に入ってくると予想していたのか、入り口近くで待ち構えていた敵部隊のおでましである。
「入ってくる姿を見られて、こちらが3人だということはバレているでしょう。敵は見たところ4人ですし、まともに戦うのはマズいです!」
「でも敵詰めてきてますよ!!」
「大丈夫です、罠の設置ももう完了します!」
僕たちがピンチということは、敵にとってはチャンスということだ。
キルポイントを稼ぐために、逃がさないように前のめりになってくる。
それを想定できていたから僕は荷物の陰に隠れた瞬間からスキルを発動していた。
3秒かけて罠設置を終えた後に、逃げるフリをすると敵は銃を撃ちながら追いかけてきて。
敵からは見えていなかった罠の効果範囲に入り作動した。
「今です!!」
スロウ効果がかかり動きの鈍った敵に対して、僕らは反転して攻撃。
一人、二人とダウンさせて――。
「敵部隊壊滅……だけどこれはっ……!!」
「アカネたちのキル奪われたんですけど!?」
残りの二人は奥から飛んできた銃弾によって倒された。
第三部隊によりキルを横取りされたのだ。
キルログに示されたのはアカネとリリィさんによるキルと――バアサーカー選手による2キル。
そう、つまり目の前にいる新たな敵は――無双前衛。
どうやら二人だけでは血が足りないようで……僕らにも襲いかかってくる……!!
第二予選パートも盛り上がってきましたので、更新ペース上げて行きたいなー……という願望。




