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55話 戦場の選択


 マップ『工場』の各地に降り立っていくプレイヤーたち。


 僕らは事前の想定通り『F棟 東入口』の近くに着陸、その後工場内に入って物資を漁る。

 工場の外は物資の沸きが乏しく、ほとんどのプレイヤーは場所こそ違えど同じようなムーブを取っているだろう。


 プレイヤーたちの命運を分ける大きな選択はその次に発生する。




「スナイパーライフル拾えました」

「私も拾えたよ!」

「よし。では予定通り『外』に向かいましょう!」




 そのまま乱戦の起きる『内』に留まるか、緊迫する睨み合いの起きる『外』に向かうかである。

 近距離戦が得意なら『内』、遠距離戦が得意なら『外』の一択だが、僕らのチームにはどちらのスペシャリストもいるため選ぶことが出来る。


 それでも『外』を選んだのはこちらの方が安全に順位を伸ばしやすいからだ。乱戦は一瞬の判断で全滅もあり得る。

 大事な大会、しかも落としたくない1マッチ目、ならば手堅く行くに限る。


 工場の外に出て備え付けられた非常階段から屋上に出ると――。




「っと、挨拶代わりか」


 僕の一人分右くらいの空間を銃弾が横切る。どこから撃たれたのか………………あそこか? 豆粒くらいにしか見えないくらい遠い距離に動いてる姿を見つける。

 マップ全域に射線が通る『工場』ならではのロングスナイプ。当てるのにはかなりの技術が必要だ。相手も牽制くらいのつもりで撃ったのだろう。

 とはいえこのまま撃たれ続けるのも良くないので僕らは近くのアンテナの陰に身を隠す。




「リリィ様は東側を、私は西側を見張ります」

「了解です」


 漁ることで獲得出来たスナイパーは二本。チームで練度の高い順にジイクさんとリリィさんが持っている。僕の戦闘技術はお粗末だし、アカネは近距離戦特化だ。




 さてここからが1マッチ目本番――と気合いを入れて。


 それから五分、何も起きなかった。




「退屈ねえ……」


 アカネが思わずボヤいた。外では役割も無く、こうも動きのない戦場ではそう愚痴るのも仕方ないだろう。




 この戦場にいるのは第一予選を突破してきた者たち、当然ながらのこのこと散歩して狙撃されるなんてヘマはしない。

 外にいる者たちは各地に点在する遮蔽物を使ってちゃんと身を隠している。


 また内にも動きは無いようだ。

 乱戦が起きやすい内だが、野良マッチならともかく今は大会。先に仕掛ければ漁夫が来るSSSの鉄則も健在で、誰もが息を潜めるに決まっている。


 とはいえそれも長くは続かない。


 安全地帯、第一収縮が終了。僕たちは範囲内だったため移動する必要は無かったが、移動を強いられたプレイヤーたちにはどうしても隙が生じて――。




「始まったな」


 マッチ一人目のダウンログ、取られたプレイヤーは知らないが、取ったプレイヤーの名前は知っている。

 バアサーカー、要注意プレイヤーだ。


「全く、あの人は……まあ収縮が終わるまで仕掛けなかっただけ我慢は覚えたようですね」


 バアサーカーのリアルを知るジイクさんが嘆息混じりに呟く。


 続けてダウンログが2、3と流れる。バアサーカーが取ったログもあるが、違うチームが取ったのもある。遠くでかすかにしか戦闘音は聞こえないが、かなりの乱戦へと突入したようだ。

 大会だし慎重に動くべき、が僕の信条だが、一方で一気にキルポイントを稼ぐことで順位を上げるという考えを否定するわけではない。


 単純に僕が乱戦で生き残る力に乏しいだけで、それだけの力があれば実行に値する作戦だとは思っている。

 実際にもうダウンログが10以上は流れたのに、未だにバアサーカーがダウンしたとのログは流れてこない。戦闘を最初に開始して、乱戦の中心にいるはずなのに生き残っている。ログを見るだけでその実力が垣間見える。




「さて、内だけでなく外も騒がしくなってきましたな」


 ジイクさんの言うとおり、外でもにわかに撃ち合いの音が鳴り始めている。

 次の安全地帯の範囲外となったチームが早めの移動を敢行し、それを狙った攻撃、応戦が始まったのだ。

 四方八方から撃たれる中を一か八かで走って範囲内の遮蔽物を奪うことに成功する部隊もいるが、諦めて中に戻る部隊も出てくる。

 さながら陣取りゲームのようだ。


 と、他人事のように言っているが僕たちの部隊も次の範囲外だ、そろそろ内か外か、選択しないと行けない。




「北東150m先の給水塔……あの場所なら範囲内ですが……」


 このまま外で進める選択を下そうとして……しかし言い淀む。


 チームのオーダーである僕が決断を下すべきなのだが……どうしても悪い想像が拭えない。

 あの給水塔の陰、既に敵部隊が潜んでいたとしたら、そこに向かって移動する僕らは良い的だ。

 リリィさんの鳥使いによる索敵も届かない距離で確認できないし……。




「大丈夫です。私たちが上に来て以来、あの場所から物音一つ聞こえていません」


 技能『戦況把握』を持つジイクさんの言葉。




「本当ですか? だったらその言葉を信じて…………いや、違います。僕の判断としてあの給水塔まで走ります!」


 オーダーの僕が決断の責任を他人に押しつけて良いわけがない。あくまで僕の意志として宣言する。


「了解!」

「分かったわ!」

「承知しました!」


「カウントします! 3・2・1、ゴー!!」


 僕らは今まで隠れていたアンテナから一斉に飛び出した。




「くっ、早いな……!」


 1秒もしない内にこちらに向かって銃弾が撃ち込まれる。範囲外の遮蔽にいる部隊は移動しないと行けないわけで、いつか出てくるだろうと狙いを付けられていたのだろう。

 長距離狙撃に加えてこちらも移動しているとあって当てるのは難しいはずだが、いかんせん銃弾が多すぎる。僕とリリィさんの胴体に一発ずつヒットしてアーマー分の体力が削られる。

 SSSの仕様としてダメージを食らうとダッシュの速度が低下する。ダメージを食らった上に足が止まって撃たれやすくなるという泣きっ面に蜂の状態だが――。




「あと少しですぞ!」


 給水塔までの距離も縮まっている。安全さえ確保出来れば修理キットを使って回復出来る、そこまでの辛抱だ。

 撃たれていないジイクさんとアカネが前に、僕とリリィさんが少し後ろで滑り込もうとして――――。






「っ!? 退避を!!」






 僕らの行く先、給水塔の陰から――ぬるりと顔を覗かせた銃口。


 慌てて警告するも間に合わず。




「……なっ!?」




 一筋の光が走る。


 銃弾は的確に頭を射抜く。


 同時に流れるキルログが告げたのは――キラー選手によりジイクさんが一撃でダウンさせられたということだった。



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