52話 第二予選組み合わせ
週末に第一予選を勝ち抜いて、明けた月曜日のこと。
この日は結果の集計も終わり次の第二予選の組み合わせが発表される日だった。
「私たち『APG』の第二予選は331ブロック……対戦相手は、っと……」
「ちらほらと見たことのある名前が載っていますね。流石に第一予選を突破しているだけはありますか。その中でも特に目立つのは……二人」
VCを繋げてチーム四人で確認している中、僕はその名前を挙げる。
「チーム『闇夜のウルフ』所属、技能『正確無比』による狙撃はまさに殺し屋。その技術はプロでも通用するだろうと言われている『キラー』選手。
チーム『戦場お祭り隊』所属、技能『無双前衛』による敵陣破壊を成し遂げながらもその生存率はピカイチ。鬼神のごとき力を持つ『バアサーカー』選手。
二人が331ブロックの台風の目となるでしょうね」
アマチュアでも名高い後衛と前衛がこのブロックに揃ったようだ。
どちらのチームも他の三人は平凡な力量でワンマンチームなのだが、逆にそれでも勝ち上がれる力量の高さが窺い知れる。
「第一予選のようには行かなさそうだね」
「ええ、性質の違う敵を相手しないといけませんからかなり大変な戦いになりそうです。しかも選ばれたステージ『工場』がクソゲー度合いを高めているんですよね……」
『工場』はマップ全体が平屋の工場群で形成されたステージだ。
工場の内部には『ベルトコンベア』『製品検査所』『資材置き場』などのスポットがある。概ね入り組んでおり射線が通りにくく乱戦になりやすい。前衛が有利な場所だ。
逆に工場の外部、特に有利ポジである高所の屋上は、鉄塔、制御機械などのオブジェクトこそまばらにあるものの、マップ全体が平屋の工場で形成されているため平坦で、ステージの端から端まで見通すことが出来る。後衛、狙撃が通りやすい場所だ。
つまり工場内部は『バアサーカー』選手、上は『キラー』選手の独壇場になると予想される。
ここまで極端な前衛と後衛有利な場所があり、しかもしっかりと分かれているステージはここ『工場』くらいしかない。
僕的には内部は見通しが悪くて戦況のコントロールがしにくいし、外部は見通しが良すぎて戦況のコントロールがしにくい、クソマップだ。
僕だけの力で勝ち上がるのはかなり難しい。鍵になるのは……。
「アカネとバアサーカーの前衛対決、ジイクさんとキラーの後衛対決が勝負を握ると思うのでお願いしたいのですが…………えっと二人ともマイク入ってます?」
チーム四人でVCに入っているはずなのに、先ほどから僕とリリィさんしかしゃべっていない。
音声トラブルでも起きたのかと話しかけてみるが。
「あっ、うん、ちゃんといるわよ」
「……申し訳ありませぬ、少々郷愁に浸っておりました」
即座にレスポンスがあったことで、黙っていただけだと判明する。
「珍しいな、アカネ。まあ今は配信してないからテンション上げる必要もないけど、第二予選の相手気にならないのか?」
第一予選の組み合わせを見るときはSSS全国大会の開会式からの流れで配信していたが、今回は特にそういったイベントがないためチームメンバーだけで粛々と確認している。
「ちょっと考えないといけないことがあるのよ」
「考え?」
「……まあマモルとリリィには言って良いかしらね。明日テレビ番組の取材を受けるのよ」
「取材!? って、何だ? 悪いことでもしたのか?」
「そんなわけないでしょ!」
勢い強く否定される。
「ほら、この前注目度が高い第一予選を勝ち上がったじゃん。
それで『今や熾烈な競争となっているゲーム実況界! ゲーム実況者の実態とは如何に!』みたいなニュース番組の特集コーナーの一部に取り上げられることになったのよ」
「へえ、すごいねえ、アカネちゃん」
「……まあテレビつってもピンからキリだからな。地方のローカル局とかじゃねえのか?」
「そんなSNSより告知力低そうな媒体の取材を受けるわけ無いでしょ。アカネが受けるのは公共放送のニュース番組だから全国区、しかも時間帯も夕方でいいところよ」
「えっ! じゃあうちのテレビでも見れるじゃん!」
「それは……まあすごいな」
ぐうの音も出ないほどすごいことだ。
「まあコーナーで取り上げられる多くのゲーム実況者の一人、しかも小学生なのに、ってことをフォーカスされるっぽいから手放しで喜べる訳じゃないけどね。
目標は『アカネだから』って取材されることだから」
「それでもすごいことだって!」
「ストイックだなあ……小学生らしく素直に喜べよ」
有名になることに関しては本当に端から見てもすごい努力している。
アカネの目標はSSS界隈に留まらずに有名になること、だと考えると今回のニュース番組への出演はその第一歩となるかもしれない。
「だから取材でどんな風に答えるか考えてたけど……まあでもそうね、それで浮き足立って大会に負けたら本末転倒だもの。今はこっちに集中するわ」
「そうしてもらえると助かる」
「それでアカネはこの『バアサーカー』って選手に対抗すればいいってわけね。……にしてもセンスある名前ね」
「……そうか?」
おそらく狂戦士などと現される『バーサーカー』をもじって『バアサーカー』と名付けたのだと推測されるが、そこまでセンスがあるとは……?
いやそういえばこいつは『ジイクフリート』なんて名付けるやつだったな、前衛同士感性が似てるのか?
「ふぉっふぉっ、ちょうど話が及んだので述べますが、実を言うとバアサーカーとは知り合いでして」
名前について気になっていると、ジイクさんが会話に入ってくる。
「へえ、以前チームを組んでいたとかですか?」
「いえ、それがゲームではなく現実で昔からの知り合いなのです」
「現実で!? そんな人と当たるなんて珍しいですね。って、あっそうだ、ジイクさんと知り合いってことは……」
「はい、バアサーカーは私と同年代、年配の女性ですな」
珍しい高齢SSSプレイヤーのようだ。
「じゃあ、ばあさんだから『バアサーカー』ってことね。うんうん、分かってるじゃない」
アカネが勝手に納得している。
「じゃあジイクさんは知り合いが相手で戦いにくい感じですか?」
「ふぉっふぉっ、何をおっしゃいますか、マモル様?」
「え?」
「憎たらしいあやつと戦いにくい……? ご冗談を。チャンスさえあればこの手で血祭りに上げて見せますぞ」
「「「………………」」」
ジイクさんの珍しい発言に僕らは黙る。一緒に暮らして付き合いの長いアカネも呆気に取られているようだ。
いつも冷静なジイクさんがここまで言うなんてどんな人なんだろうか?
……あれ? そういえばジイクさんの古い知り合いって、ジイクさん昔傭兵だったから、バアサーカーも同じく傭兵ってことに…………いや、あれは冗談って話で…………でも……。
「……コホン、それはともかく第二予選のステージも決まりましたし、今夜から工場で練習していきましょう」
咳払い一つで流して、ジイクさんが話を戻す。
「そ、そうですね。かなり大変な戦いになると思うので、入念に準備をしたいです」
僕も聞かなかったことにして話を進めることにした。




