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51話 第一予選

遅くなりました。


 始まったSSS全国大会。


 プロ部門のリーグ戦は開会式の翌日から連日連夜行われて話題になっていた。


 対してアマチュア部門の予選トーナメントは社会人や学生も参加することから週末ごとに行われる。


 プロ部門があるのにアマチュア部門が盛り上がるのか? と疑問に思う人もいるだろうが、それはプロ野球があろうとも甲子園が盛り上がることと変わりはない。




 とはいえ第一予選は参加希望をしたアマチュアチーム全てが参加できる。高校球児に例えるならば地方予選のようなものだ。

 あまりにも膨大なブロック数のため全てに関心が寄せられるわけがなく、有力なチームがいるブロックだけが注目されることになる。




 そんな中で観戦者の耳目を一際引いているのが629ブロックだった。


 というのも有名人が多くいるからだ。


 アイドルグループの中でもFPS好きのメンバーがチームを組んだチーム『キラレーションFPS部』。


 格闘ゲーム『ネコブラ』のプロゲーマーが、ノリで決まった企画によりFPSに初挑戦しているチーム『ネコブラ魂』。


 大人から子供まで人気な大物配信者。普段はカジュアルなゲームを触る程度にしかしないが、同じく人気配信者を集めて大会に殴り込んできたチーム『黒船』。




 一つでもいれば注目度爆上がりなチームが、偶然にも三つ同じブロックに配置されている。

 それぞれ普段はSSS界隈とは違う界隈で活躍しているため、プレイヤー自体に興味のある者が流れてきているのも大きい。






「つまりそんな中で勝つことが出来ればアカネたちの人気も爆上がりってことよ! これヤバくない!?」


 その奇跡の629ブロックに何の因果か僕たち『APG』も配置されているのだった。

 第一予選、1マッチ目開始直前だが、アカネは興奮収まらぬ様子だ。


「逆にそんな中で負けたら人気が爆下がりだぞ。ちょっとは落ち着けって」

「何よ、アカネが落ち着いているところ見たことあるの? 前衛はテンションとパッションが物を言うポジションよ。つまりこれで正解よ!」

「いや前衛にだって落ち着きは求められると思うけど……まあ、そうだな。おまえはテンション上がってるときが強いしな、ただちゃんとオーダーには従えよ」

「了解、了解!」


 暴れ馬にしっかりと手綱が付いているかだけ確認しておく。




「ジイクさんとリリィさんの調子はどうですか?」

「ふぉっふぉっ、快調ですぞ」

「ちょ、ちょっと手の震えが止まらないんだけど……だ、大丈夫かな……!?」


 残りの二人に尋ねると正反対の答えが返ってくる。


「ジイクさんはいつも通り何かあったらフォローお願いします。リリィさんは……二回目の大会ですしね、緊張も止む無しですか」


 スター杯が終わってからはスキルアップを目標に練習を励んだため、公式非公式問わず大会には出場していない。

 そのためリリィさんにとってはこれは二回目の大会だ。なのにSSSでも一番大きな大会で対戦ブロックの注目度も高いとなると緊張するのも分かるところだ。




「ど、どうすればいいかな!? っていうかどうしてみんなはそんなにいつも通りなの!?」

「どうしてと言われましても……別に緊張する理由がありませんし」

「何で!? こんな大舞台なんだよ!? ま、負けたら終わりなんだよ!?」


 テンパった様子のリリィさんの声が大きくなっていく。


「大舞台って言われても別にオンラインの大会だからいつも通り自宅から参加してますし、そういう感覚は薄いですね。

 それに僕たちは負けませんよ。きちんと練習してきたことを発揮出来れば負けません」


 事前に同じブロックの対戦相手の情報は調べたが、特に自分たちより強い相手はいなさそうだった。

 もちろんダークホースがいる可能性はあるが…………いや、今時強いプレイヤーというのは自ずと有名になるものだ。限りなく低いと考えていいだろう。




「……ああもう! 分かったから、腹くくるって!」

「そうですか」

「大体高校生のマモル君が落ち着いているのに、大人の私がオロオロしていたら示しが付かないじゃない!」

「あれ? リリィさんも同じ高校生じゃなかったですか?」

「その設定はもう忘れて!!」


 リリィさんをイジって緊張を解させる。

 まあマッチが始まって時間が経つ内にいつも通りになるだろう。そのためにも絶対に初動被りは避けないと。




「そろそろ時間のようですな」

「ホント!? じゃあ配信に遅延かけるから、みんなまた三分後ねー!!」


 マッチ開始時間が近づき、アカネが視聴者に向けて話す。


「よしっ! 集中!」

「練習通り『忘れ去られた住宅街』に降りる予定ですが、敵部隊と被った場合は付近の『崩壊の痕跡』もしくは『核シェルター』に降ります。絶対に初動が被らないように行きましょう」


 予選はブロックごとにステージがランダムに選ばれるのだが、629ブロックのステージはスター杯予選でも戦った『黄昏』だった。ステージに対する理解は十分でこれは幸運なことだ。






 そうして始まった第一予選、1マッチ目。

 『忘れ去られた住宅街』に無事降り立つことの出来た僕たちは、範囲の内にいることをいいことに潜伏。迂闊に近寄ってきた部隊をキルしてポイントを稼ぐ。

 最終安置には嫌われて無謀な突撃を敢行するしか無く順位は2位で終わったが、キルポイントと会わせた合計ポイントでは1位に立つ。




 2マッチ目。

 住宅街が範囲から外れたため移動を余儀なくされ、範囲の縁で待っていた検問に引っかかりそうになるが、安置外で粘ることで範囲の内からやってきた別部隊と検問部隊を衝突させることに成功。漁夫する側となってポイントを稼ぐ。

 最後はまたしても安置に嫌われ順位は2位になるも合計ポイント1位は死守する。




「ああもう、順調だけどスター取れなくてスッキリしないわね!」

「どうにも安全地帯に嫌われてるなー」


 愚痴るアカネだが総合順位では一位ということもあり声音的にも不満がそうあるわけではなさそうだ。スターを取れたらもっと盛り上がれるのにという贅沢な悩みだろう。




 3マッチ目、最終マッチ。

 予選ではブロック一位だけが次に進めるので敵が取れる選択肢は二つ。現在一位の僕らを無視してポイントを稼ぎまくるか、僕らを落としてこれ以上ポイントを稼がせまいとするかだ。

 全員の思惑が一致して僕らを取りに来る、なんてことがあったらピンチだが、自分以外全て敵のバトルロワイヤルにおいて思惑を一致させるのは不可能だ。

 僕らを探す動きをしていた敵も、とにかくポイントを稼いでどうにかしようとする部隊と鉢合ってしまい仕方なく応戦して、両者が弱ったところに僕らが漁夫を仕掛けて荒稼ぐ。


 とはいえいつも以上に生存重視で立ち回って迎えた最終安置の発表、範囲は僕らの潜伏しているあたりが中心の絶好のパターン。


「よし、これ来たでしょ!!」

「気持ちは分かるが逸るなよ」

「そんなカッコ悪いことしないわよ!!」


 残り五部隊だが、既に僕ら以外の四部隊は争っている。

 本当は争わずに移動したいが後ろに敵を生かしたまま移動するのも難しい……と残り四部隊とも思っているのだろう。

 実に不毛だが回避することも難しいという戦闘が発生してしまっている。

 戦闘に巻き込まれず、移動の必要もない僕らは、この戦闘の勝者を迎え撃つだけで楽に勝てる。

 浮つくな、というのも無理な話だ。アカネに対する注意は半ば自分に対しての戒めでもある。




 そうしている内に二部隊が脱落して残りは三部隊になったところで最終安置への収縮も始まった。

 場所が悪く範囲に飲み込まれた一部隊がダメージにより脱落、もう一部隊は飲み込まれまいと遮蔽にも隠れず最短距離で範囲を目指すが、当然僕らがそんな格好の的を逃すわけもなく。




「ウイニングキル、ですな」

「これでスターは獲得できたんだし」

「ええ。第一予選、無事突破でしょうね」


 『You win the Star !!』と大きくゲーム画面に表示される。




「しゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」


 アカネが大きな雄叫びを上げる。


 3分の遅延を過ぎて配信画面にも同じ場面が移されると、視聴者からも雄叫びのコメントや投げ銭機能――スパチャを使ったお祝いなどが飛び交い見る見る内にコメントが流れていく。

 注目度が高いブロックで勝ったことで、いつもより倍近い視聴者が見てくれたようだ。



 当然総合ポイントでも1位を取り、チーム『APG』は第二予選へと駒を進めるのだった。



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