表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/97

49話 理由




『マモル君にはこうゲームをする理由、みたいなものってあったりするの?』




 唐突で掴みどころの少ない私の問いかけ。




「ゲームをする理由、ですか」


 それでもマモル君は真剣な顔をして考えてくれている。


「うん。先に言っちゃうけど私は特にそんなの無いんだ。楽しいからってだけでプレイしていて。

 でもアカネちゃんが話してくれたことがあるんだけど、有名になって両親に見つけてもらうためにゲームをしているんだって。ジイクさんはそれを手伝っている。

 そういう理由があるから強いのかなー……って思って。だったらマモル君にも何かあるのかな、って」


「なるほど……いい機会ですし、僕も話しましょうか」


「……いいの?」




「別に隠すほどのものじゃありませんから。

 リリィさんは僕が一人暮らししているって何かの拍子で聞いてますよね?」


「う、うん、そうだけど……」




「当然疑問に思いますよね。高校生なのに何で一人暮らしなのか。


 僕は普通の両親、普通の家庭に産まれた、普通の子でした。


 そのまま普通に成長していくはずが……綻び始めたのが妹が産まれてからでした。



 妹は生来、病弱で幼い頃から体調を崩し気味で。


 さらには不治の病を患ってしまったんです。



 その妹の医療費を稼ぐために両親は身を粉にして働く日々。


 一人家に残された僕がやることといったらゲーマーな父からお下がりで受け継いだゲームくらいでした。



 大変でしたがそれでも何とかやっていた生活に追い打ちをかけたのが、父が過労で倒れたことでした。


 母は一人で家庭を支えるために仕事場に泊まりきり、遂には僕は家で一人で暮らすこととなりました。



 そんな僕に出来ることは何か。


 ゲームくらいしか得意なことが無い僕が出来ることは何か。



 それはプロゲーマーになることです。


 今回の大会で勝って、プロゲーマーになってお金を稼ぐことで、あの普通な生活を取り戻してみせるんです……!!








 ――――――みたいな過去がもしあったら物語の主人公みたいでかっこいいと思いません?」








「うん…………うん…………うん…………うん?」


 マモル君も大変な思いをして生きてきたんだな、と聞き入っていたら、何か最後に変な言葉が聞こえてきた気がする。

 顔を上げてマモル君の表情を見ると、先ほどまでの真面目な顔はどこへやら、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。




「まさかマモル君、今の話……!」

「ええ、全部嘘ですよ」



「う、嘘って……どこからどこまで!?」

「全てですかね。両親は健在で僕が高校に上がるタイミングで海外出向に夫婦で出向くくらいラブラブで、仕送りは十分にもらっていてお金は困っていません」



「病弱の妹は!?」

「一人っ子です」



「え、なっ、ちょっ、どうしてそんな嘘を!?」

「リリィさんが僕の悲壮なストーリーを聞きたそうにしていたから、してあげただけです。ようはさっきの仕返しですね」



 どうやら先ほど料理下手を装ったことを根に持たれていたらしい。




「はぁぁぁ……もうびっくりしたー」

「ごめんなさいね、びっくりした顔見れて満足したのでここからは真面目に話します。僕がゲームをしている理由は楽しいから、でしかありません」



「……私と同じなんだ」

「別に否定する訳じゃないですけど、そんな遊ぶことに大層な理由を持っていることの方が珍しいですよ。おもちゃのために人を殺したり、争ったりするホビーマンガじゃないんですから」



「でも、だったら……どうしてマモル君はそんなに強いの? 私もそこまで強くなれるのかな?」

「……僕の強さのように見えるものは以前所属していた歪な環境を生き抜くため身に付けた、ただの処世術です。リリィさんの参考にはなりませんし、してほしくもありませんね」



「………………」

「ところでリリィさんが突然そんなことを聞き出したのは、合宿の目標『技能』の習得のためですよね?」



「うん。何か参考に出来るところがあれば、って思ったんだけど……」

「『技能』なんて難しい言葉使ってますけど、僕に言わせればただその人の強みって話ですよ。

 リリィさんにはSSSにおいてこれだけは他の人に負けないってもの、何か無いんですか?」



「負けないもの……」

「それを見つけられれば自然と『技能』を習得出来ると思います。僕から出来るアドバイスはこれくらいですかね」



「ありがと」

「いえいえ、どういたしまして」


 最初こそふざけられたが、全うなアドバイスをもらって私はお礼を言う。






「あーもう終わり、ゲーム、ゲーム!! ……って、二人は何やってんの?」


 夕食の後片付けを終わらせたのか、アカネちゃんとジイクさんが部屋に入ってくる。


「そうですね……アカネちゃんたちのこと待ってたんですよ、もう一回四人でSSS潜ります?」

「あっ、それいいわね! 昼からは2対2ばかりやって疲れてたもの」

「僕も戦闘訓練は疲れました……。オーダーに集中したいです」

「ふぉっふぉっ、ならそういたしましょうか」



 夕食後という遅い時間から、私たちは4人でSSSのマッチに潜り始めて。



「やったぁ、スター獲得!!」

「部隊壊滅、無双、無双!!」

「あなたたちは僕の手のひらの上です!!」

「全てお見通し、ですな」



 テンションの上がった私たちは本当にマモル君が頼んだ夜食のピザをいただきながら、気付けば朝の5時までSSSをプレイしていて。



「おはようございます……って、マモル君とアカネちゃんここで寝ちゃったの?」

「すぅ……すぅ……」

「zzz……」

「私たちが部屋に戻った後も二人でマッチに潜っていたようですな」



 当然、翌日は昼過ぎまで寝ているという事態になり、こうなると練習どころではない。



「やったぁ、スター獲得!!」

「部隊壊滅、無双、無双!!」

「あなたたちは僕の手のひらの上です!!」

「全てお見通し、ですな」



 二日目、深夜。またバカの一つ覚えのようにSSSをプレイして盛り上がり。



「アカネ寝てないから、完徹だから。すごいでしょ」

「おまえ途中敵来ても棒立ちで、あれ意識飛んでただろ。ていうか俺の方が寝てねーから」

「何よ、マモルだって急に黙ったなー、と思ったら目閉じてたから、寝てたから」

「はあ、そんなことありませーん、あったとしてもそれは瞑想でーす」



「寝てない自慢はいいから! あと一時間で出ないといけないから片付けて!」



「「はーい」」


 三日目、朝。合宿解散まであと少しとなって、私たちは慌ただしく動き始める。




「はぁ、もう。何か一日目からあとはずっと遊んでた感じになっちゃったな」

「ふぉっふぉっ、チームメンバーの絆が深まったということで良し、としましょうか」

「……ですね」


 ズルい大人の常套手段、目標のすり替えを発動させて、こうして現実で初めて顔を合わせた合宿は終了したのだった。

合宿編、完。


ここまで縦軸ぶっぱなしてきたので横軸を広げる回でした。


次回より『SSS全国大会予選』編開始します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ