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47話 合宿開始


 合宿、チームメンバーそれぞれに課せられた目標。

 そんな中、私は『技能』の習得を言い渡された。




「『技能』っていうと、あの中二病的な能力みたいなやつだよね」

「身も蓋もない言い方ですね……」


 否定するわけではなく、むしろ私の中の少年心がかっこいいと叫んでいる。




「一応説明しておきますと『技能』とはSSSにおいてプレイヤーが持った一般的ではない、特別な技術のことを指します。

 広くはプレイヤースキルと言い表せますが、SSS界隈ではキャラが持つスキルと区別するために『技能』と表現していますね」


「私以外のみんなは持っているんだよね。マモル君が『戦況創造』でジイクさんが『戦場把握』、アカネちゃんが『特攻前衛』だったっけ?」


「その通りですな。突出した技術、これだけは負けないという分野を強いプレイヤーは大体持っています。リリィ様の全般的な成長も嬉しいですが、さらに『技能』を習得出来ればチームもまた強くなると思うのです」




 思えばこれまで私はチームのみんなに助けてもらってばかりだ。『技能』を見つけて、私だけの得意を見つければ、いざというときに私がみんなを助ける……なんてことが出来るようになるかもしれない。

 ……いや、そうなってやるんだ。だから――。




「分かりました、頑張ります!! ……けど、具体的にはどうやって『技能』って習得すればいいですかね?」


「先に言いましたがかなり難しいことです。『技能』は基本、先天的に身についたものが多いですからな、習得出来なくても当然くらいには考えておいてください。

 それでも頑張るためにとりあえず思い付くのはプロも含めた色んなプレイヤーが持つ『技能』について知る……などでしょうか」


「知らないものは身につけられないですからね、やってみます!!」


 フンス、と鼻息強く了解する。




「とまあ個人それぞれの目標は定めましたが、それだけでなくもちろんチームとしての連携の特訓や強化もしていきます。というわけで最初は四人でいつも通りSSSのマッチに潜りましょうか」


「えー、それじゃいつも通りじゃない。合宿らしい特別さがないわよー」


 アカネちゃんが文句を言う。私も不満こそは無いが、いつもと同じだなーとちょうど思ったところだった。




「いや、全然違うと思うが……まあやってみれば分かるし早速潜るか」


 しかしマモル君は違うようで、その言葉に押されるように私たちはそれぞれデバイスの前に座ってSSSをプレイし始めるのだった。




 一時間後。


「よっしゃ、スター獲得!!」

「ふぉっふぉっ、やりましたな」

「いい感じじゃない! ほら、リリィ!!」

「いえーい!!」


 隣に座るアカネちゃんがこっちを見て手を掲げたので、私はそれに手をぶつけてハイタッチした。


「こっちもやっておきますか?」

「そうですね、最終盤のオーダー流石でした」


 マモル君と突き出した拳に、ジイクさんも同じく拳をコツンと当てる。




 この環境、現実に集まってSSSをプレイするというのは、マモル君の言葉通りいつもとは全く違った。

 コミュニケーションの取りやすさが段違いなのだ。


 試合中は余裕がないけど、試合後とかに顔や全身見えることでその人の感情やコンディションが分かりやすいし、ハイタッチなどのボディランゲージも取れる。

 気になることがあれば直接自分の画面を見てもらって聞くとかも出来るし。

VCボイスチャットもネットを介さず、直接繋げてるから僅かなラグも無くなり伝達がスムーズに……いや、私には実感出来るだけの違いは分からないけど。




「さてチーム練習は一度切り上げて、ここからは特別練習、合宿らしいことをしていきましょうか」

「えーもうちょっとチーム練習やりたーい」

「さっきと言ってることが真逆だな」


 マモル君がツッコむ。




「さて特別練習ですがチームを割って2対2を行います。メンバーは私とマモル様 VS リリィ様とアカネ様です」




 カスタムマッチの設定をいじって行われる特殊な2対2マッチ。


 4人しかいないのに広くてもしょうがないので、すぐに接敵しやすいようにステージ『熱帯雨林』のスポット『森林地帯』のみという狭さで設定されている。


 両チームはそれぞれフィールドの端からスタートだ。


「リリィ、行くわよ!」

「わっ、ちょっと待ってよ!」


 VCボイスチャットで繋がっているのはアカネちゃんだけ、敵となったマモル君とジイクさんは別の接続となっている。




「慎重に行こうよ、相手はあの二人なんだよ?」

「だからこそガンガン行かないといけないじゃない! 二人とも懐に潜り込めば勝ちなんだから!」

「それは……」


 アカネちゃんの意見にも一理はあるかもしれない。二人が何かを企む前に潰す……いやでもそう上手く行くのか?

 いつもならその辺の判断をするマモル君やジイクさんは今は敵だ。

 アカネちゃんは前衛が仕事だから、こっちのオーダーは私がしないといけない。


 アカネちゃんは前衛力の強化、私は自分で考えさせる経験をさせる……これが特別練習の意図なんだろうな。


「うん、それで行こう。でも足並みは揃えた方がいいから、ちょっと待っ――」

「あっ、爺発見! 一人じゃない、チャンスよ!! 突撃するわね!!」

「ジイクさん一人? それはどう考えても――」


 思考している間にぐんぐんと進軍していたアカネちゃんに、私の制止の声は追いつかず。


「なっ!? 何でここに罠があるのよ……!?」


 どうやらマモル君の罠を踏んだようで、スロウしている間にあっさりやられてしまうアカネちゃん。

 私はそれを追って攻撃を仕掛けたけど、2対1に成す術なく初戦は敗北となる。




「ごめんリリィ……」

「ううん、今のは私の指示も遅かったから。……難しいね、いつもマモル君はこんなことしてたんだ」


 刻々と変わる戦況の中、常に思考を続けて最適解を見つけるのだけでも大変なのに、それを伝えることまでしないといけない。




 敗北した後、少しのインターバルを置いて次のマッチが開始される。これを延々と繰り返すようだ。


 初戦の完敗にこれはずっと負け続けるんじゃないか、と思っていたけど、対戦を重ねる内に私たちが勝つことも出てきた。

 私の拙いオーダーも機能し始めてきて、奇襲や不意打ちを食らわずに、対等な状態で戦闘が始まることも増えてきたからだ。

 普通に戦えば相手は近距離に難のあるジイクさんと戦闘全体に難があるマモル君だ。アカネちゃんの接近戦が炸裂すればひとたまりもない。




 あっちはあっちで戦闘力の不足が課題、戦いを重ねることで克服しようとしているわけだね。


 みんながみんな強くなろうと頑張る。


 何かいいな……この雰囲気。






 昼過ぎから始まった練習は、みんなのお腹が空いてきた日没頃になって一旦中断するのだった。



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