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45話 待ち合わせ

連載開始からちょうど半年!

新章『強化合宿』編、開幕!


 スター杯から二週間が経った土曜日。

 今日はチーム『アカネ様と親衛隊』――大変不本意なチーム名だが、もう定着してしまったため諦めている――の強化合宿の開始日だった。


 チームでどの日が開いているか確認したが、四人とも特に予定はなく、だったらせっかくなので月曜日が祝日の今週末にしようということで日程は決まった。

 今日から二泊三日、SSS漬けの週末と……いや、これはいつものことだな、うん。……そうだ、いつもはネット上で繋がっているだけのチームメンバーと現実で顔を突き合わせて過ごすこととなる。


 アカネ、ジイクさんは顔出し配信してるからイメージは付くけど、リリィさんは顔も見たことないからなー。どんな人なんだろう。




 電車に揺られること二時間、到着した町中の駅で待ちぼうけるマモルこと僕。

 僕の住んでいるところからは電車の時間の関係上、待ち合わせよりも15分ほど早く着くしかなかったのだ。


 会場としてジイクさんが押さえてくれたのはゲーマー用合宿所、とだけ聞くとそんなところあるのかと思ったが、最近ゲーマー人口の増加やプロゲーマーという存在の認知度の拡大に連れて需要が高まっているらしい。

 四人それぞれの個室に加えて、一緒にSSSをプレイするための大部屋、デバイスも備わっているらしく、主な荷物は着替えくらいで少ない。


 費用については伝手で安く借りれたため、いつもの配信で稼いでいる分から出すので心配ないと言われたが、リリィさんは『そんな申し訳ないですって。自分の分は払いますよ』と柔らかくながらも反対している様子だった。……リリィさんしっかりしてるよなあ、僕なんかラッキーとしか思ってなかったのに。


 しかしジイクさんも『実を言うと合宿の様子を配信することで合宿所の宣伝する、いわば案件のようなものですから遠慮しないでください』と譲らず……結局どういう話し合いがあったのかは分からないが、まあこうして当日を迎えたのだからどうにか折り合いを付けたのだろう。




「マモル様でしょうか?」

「えっ、あっ、はい、そうですが……」


 駅裏のベンチに座ってぼーっとしていたのだが、いつの間にか目の前に立っていた人に声をかけられる。

 ……って、この声は。


「お早い到着だったようですな」

「ジイクさんですか!? あ、初めまして! よろしくおねがいします!」

「初めまして……まあ、その通りですな。こちらこそよろしくお願いします」


 立ち上がって慌てて礼をすると、ジイクさんもペコリと頭を下げる。

 今まで画面越しにしか見たことの無かった老紳士、ジイクフリートさんが目の前にいて、聞き慣れた声で話している。




「えっと、そうですね……いつも一緒にゲームしているのに初めましてじゃなかったですかね」

「いえいえ、気持ちは分かります。私の方こそ、マモル様の姿を初めて見ましたからな」

「まあでも思い描いてた通りの姿って感じね。もうちょっと意外性サプライズがあっても良かったのだけど」


 ジイクさんの後ろからひょっこり出てきたのはカメラを構えた子供……当然のように会話に入ってきたが、聞き慣れた声で誰かは分かる。アカネだ。


「アカネもいたのか。って、何でカメラ構えてるんだ?」

「配信しているからよ。今まで姿が分からなかったチームメンバーの初顔見せなのよ、配信するに決まってるじゃない。けど撮れ高が無いわね。何か画面映えする特技でもないの?」

「そんな芸人みたいな無茶振りされても何も出ないぞ」

「つまんないわね」


 生身で会うのは初めてで身長や体格などの差から一層年齢差を感じているはずなのに、それでもVCボイスチャットのときと同じように年上相手でも傲慢な態度で接してくる……うん、さすがはアカネだ。




「今さらですが顔出し大丈夫でしたか?」

「大丈夫です。そもそも今度のSSS全国大会、勝ち進めばオフラインでの戦いになって否応無く姿を晒さないといけないですし」


 別に積極的に姿を出す理由が無かっただけで、反対する理由はない。今回の合宿費用は配信収益から出ているって話だし、配信には協力していくつもりだ……これくらいで協力になるかは分からないけど。




「さて、そろそろ集合時間だけど……リリィ遅いわね。時間に遅れるような人じゃないはずだけど」

「確かに……でも辺りにそれらしい人いないな」


 集合場所に選んだこの駅裏は人通りが少ない。僕ら3人以外には物陰からこちらの方を覗き見ている大人の女性がいるくらいで…………あれ、その人がこちらに向かって歩いてくるけど……。




「お、お待たせー!」


 僕らの目の前に立ってそのように声をかけてくる女性。




「…………」


 えーっと……この人は誰だろう? 個人的には見当も付かないので人違いか、アカネやジイクさんが待ち合わせていた人だと思うんだけど……。


「爺、知り合い?」


 アカネが振り返ってヒソヒソと聞く。どうやらアカネも知らない人のようだ。


「ええ、ですがお二人も知っている人のはずですよ」


 ジイクさんがそのように答えるが、僕とアカネの共通の知り合いというと今待ち合わせているリリィさんくらいのはずで……。




「リリィです。か、顔を合わせるのは初めてだね、よろしく!」


 女性が緊張した様子で名乗る。




「………………」


 ……うん。最初に声を聞いた時点で、聞き覚えのある声にそうではないかとチラリとは思っていたのだ。

 でもそれを認められなかったのは、目の前の女性が大人であったからだ。リリィさんは女子高生のはずだから年齢が違う。



 そして反応できなかった理由がもう一つ。

 女性が――セーラー服を着ているからだ。



 目の前の女性は若々しいが、それでも大人がセーラー服を着ているのは無理があるというか、コスプレのような感じが出ていて……あまり関わっていけない人だと思って、認識を拒んでいたんだけど……。


「…………」


 隣を見るとアカネが何も言えずポカンとしている、珍しい様子だ。とはいえその状態でもカメラを落とさず構えているのは流石配信者と言うべきなのだろうか?




「ジイクさん、今日は会場を手配してくれたり色々ありがとうございます」

「ふぉっふぉっ、それくらいお安い御用です」


「アカネちゃん、配信で見てたけど実物もかわいいね」

「………………」


「マモル君は初めましてだけど、思い描いてたとおりの姿でビックリしてるかな」

「………………」




 その女性は僕ら一人一人に声をかけて。




「ん、何か反応が悪いけど……緊張してるのかな。ほらほら、みんないつもの元気はどこに行ったの? 合宿頑張って行こ――」



「いやいや!? そのまま通すのは無理ですって、リリィさん!?」




 耐えきれなくなった僕は叫んだ。




「む、無理ってどういうこと、マモル君?」

「本気で言ってるんですか!? その服装ですよ!!」

「服装って……じょ、女子高生がセーラー服を着てるだけだよ。な、何かおかしいかな?」


 リリィさんは声を震わせながら、その場でスカートを翻しながら一回転して、顔横でピースサインを取ってポーズを決める。


「……」


 僕はその姿にジッとした視線を向け続ける。




「…………」

「…………」


「………………」

「………………」


「……………………」

「……………………もういっそ殺してください」


 見る見る内に顔を真っ赤にしていったリリィさんが、耐えきれなくなったのか、顔を手で覆いその場で崩れ落ちた。




「ど、どういうこと……あのおかしな大人がリリィなの……?」


 未だ現実を受け入れられずアカネは混乱していて。




「ふぉっふぉっ、良い意外性サプライズ、良い撮れ高ですな」


 ただ一人、ジイクさんだけが愉快そうに微笑していた。





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