43話 反省会
『本選3マッチ目、あの作戦は何なの?』
チームメンバーだけで行われる反省会において詰られるマモルこと僕。
「何なのと申されましても……」
「じゃあ言い方を変えるわね。大会最終マッチの重要な場面で、チームの連携練習で一回もやったことがないあんな作戦を取ったのはどうしてかしら?」
「…………」
抵抗を試みる僕だが、アカネの詰め方は完璧だ。さすが特攻前衛なだけある(?)
「ちょっと言い方がキツかったかしら。別に責めるつもりは無いのよ」
「と言ったやつが本当に責めるつもりが無い可能性は0%……」
「何か言った?」
「いえ、何も」
さらに神経を逆撫でしてしまった。
「そうですな……まず聞いておきたいのは、あの作戦は自暴自棄の末ではなく、勝つために出されたという認識でよろしいでしょうか?」
このままじゃ話が進まないと感じたのかジイクさんが横やりを入れる。
「それは……もちろんそうです」
「ならばチームとして指揮はオーダーのマモル様に任せております。作戦選択はマモル様の裁量です。そういう側面では別に咎があるとは思いませぬ」
「だーかーらー。問題は練習でも使ってなかった作戦をどうしてあの土壇場で使ったのかってことよ」
アカネが我慢しきれなかったのか口を挟む。
「それは……2マッチ目の敗戦に僕は責任を感じていて。
『GD』とのタイマン、みんなはすごい頑張ってくれた。あれを勝てなかったのは僕に撃ち合いの技術が無かったからだ。だから3マッチ目、今度こそは僕の力で勝たせないとって……僕に出来ることで一番有効だと思ったから特攻したんだ」
「2マッチ目の敗戦……それを気にして?」
「……うん」
「はぁ……あんた本当に馬鹿ね」
「ああ、結局『GD』に見抜かれて失敗したし……」
「そっちじゃないわよ。2マッチ目の敗戦に責任を感じてる方よ。あれはあんただけの責任じゃないわ」
「え……?」
アカネにそんなことを言われるとは思わずポカンとなる。
「あの局面はインファイトだった。前衛のスペシャリストとして意見するけど、あれはチーム全員が悪かったわ。
まずは爺。双子のフォーカスを受けたとはいえダウンしたのは良くないわ。詰める瞬間は撃たれやすいとはいえ、タイマンなんだから何が何でも先にダウンするのは避けないといけなかった。
悪いといえばアカネもそうよ。ダウンした損失を取り返そうと回復が終わったばかりのシズカ選手をダウンさせたけど、彼女は遠距離が得意な選手。インファイトのあの局面ではあまり役に立たないし、後に回してもいい駒だったわね。それより双子の連携を崩す方が先で、狙うなら巫女の『焔化』が面倒だしアルテミス選手だったかしら。
リリィも良くなかったわ。あの混戦じゃろくに指示も出せなくて当然、みんなの後をついて回るだけじゃなくて、自分の判断で攻めないと。
当然マモルも駄目よ。手榴弾で突撃のきっかけを作ったのは良かったけど、その後全然ダメージを与えられないようじゃね」
「…………」
「2マッチ目は全員悪かった。なのに勝手に自分一人だけ悪いと思って背負い込んで練習にない作戦を取った3マッチ目はマモルが悪いわ」
アカネはズケズケと容赦のない意見をぶつける。ただしそれは僕にだけではなく、自分も含めたみんなにもだ。
「……ごめん」
それを聞いて僕は自分が未だに呪縛にとらわれていることに気づいた。
『銀鷲』にいてチームの負けを自分のせいだと責められていたせいで、自らそう思い込んでしまった。
ここにはそんなことで責める人は誰もいないのに。
「それは何に対して謝ってるのかしら?」
「みんなのことを信じられなかったから。自分の力だけでどうにかしようとしたから。だから僕が悪かった」
「……そう。分かったなら良いわよ」
フン、っとアカネが満足そうにしている。これで許されたということだろうか。
「私からも一言いいかな」
ここまで黙っていたリリィさんが発言する。
「何よ、リリィ。そういえば何で何も言わなかったのよ、この自己陶酔野郎に」
「自己陶酔って……まあ否定できないけど」
「あはは……まあ私はマモル君と初めて野良マッチで一緒になったときにあの作戦を使われて知ってたから」
「なるほど、っていうか以前にも使ったことがあるのね」
アカネは呆れた様子だ。
「あのときはそのおかげで勝てたから私は作戦自体に文句はないけど……個人的には好きじゃないな。勝負の流れで仕方なくやられるならともかく、あれってマモル君は倒れる前提でしょ。それで勝ったとしても、スターを取れたとしても、その瞬間の喜びを真に共有出来ないのはなあって」
「……アカネは別に練習にない作戦が出たから文句を言ったわけで内容は……いや、うん、メンバーを犠牲にして勝つなんて配信映えしないわね。無しよ、無し。大会を奇策で勝ち抜くってのにはロマンがあるけどね」
「ふぉっふぉっ、個人的には罠師の性能を生かした良い作戦だとは思われます。なので成功していれば何も言うことは無かったでしょうが、結果的に『GD』に読まれて失敗したので駄目ですな」
「うっ……精進します……」
三者三様に駄目出しされる。
「まあ実際『GD』が異常だったところはありますな。私が『GD』の立場ならつい無防備なマモル様を撃ち抜いて罠にかかっていたと思われます」
「……確かにおかしいわね。『完全指揮』だけならともかく、四人とも引っかからなかったのは」
「うーん……もしかして前もって知っていたのかな?」
「罠師はあまり使われないキャラだし、その中でも特殊なテクニックだからこれまではみんな引っかかってたし……いやでも『完全指揮』ならあり得るのか……?」
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『GD』のVCルームにて。
『スター杯、優勝! いやー良かったなあ』
『そうね、一戦目の序盤からあんたが狙撃で落とされたときはこいつ戦犯だなって思ったのに、結果的に勝てて良かったわね』
『そうでーす。勝てば良かろうでーす』
『憎たらしいけど……まあそれもそうね』
珍しくアポロンとアルテミスの意見が合う。
『そういえばシズカ、2マッチ目の後は助かった。『APG』のマモルの情報よく拾ってこれたな』
『いえ、それほどでも。以前所属していたらしい『銀鷲』なるチームのチャンネルが凍結されていたので手間取りましたが、それなりに有名な選手だったようですのでSNSにクリップとして残っていて助かりました』
『あーあれなぁ。事前に注意されてなかったら絶対に罠師を打ち抜いて罠にかかってたよなぁ。ひっどいハメ手やで』
『本当あんたは真っ先にやりそうよね』
『GD』のメンバーは3マッチ目の開始前に、マモルの特攻作戦について念のため注意するようにと周知されていた。
『マモルか……やはりあのときの……』
『彼がまだ気になりますか? 確かに特徴的な立ち回りだとは思われますが、昔から今日の大会まで残っている情報を見てもそこまでの驚異だとは……』
『ああ、記録には残っていないだろうな。だが、俺は知っている。やっぱりやつだ、あのとき異常なことを成し遂げたのは』
『…………?』
『その片鱗もかいま見えるが……まあ眠っているようなら気にすることもあるまいか……』




