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42話 打ち上げ


 『APG』スター杯総合結果、6位。

 何とも言えない結果となった大会を終えてマモルこと僕たちは。




「あっ、ちょっとアイテムずるいわよ!!」

「スマーッシュ!! いえーい、ぶっ飛ばした!!」

「ふぉっふぉっ、そのようなステージ端で見守っておらず、やりあいましょうかマモル様」

「僕は勝つためなら何でもやりますよ、ということで逃げます!!」


 パーティー格闘ゲームの『キャットブラスト』通称『ネコブラ』をプレイしていた。






 何故SSSでは無いゲームをプレイしているかというと、ゲーム大会を終えたら打ち上げと称してチームでワイワイと違うゲームをプレイするのが、配信者界隈ではよくあることらしい。

 その流れでプレイしているのが『ネコブラ』。

 各プレイヤーはそれぞれ猫を一匹選び戦い、敵をステージから叩き出して最終的に残った者が勝つというゲームだ。


「あー私のスコティッシュフォールドが!!」

「マンチカンこそ最強だから!!」

「私のペルシャから逃げられますかな?」

「三毛猫の逃げ性能を舐めないでくださいよ!!」


 現在、ステージ中央で戦うアカネとリリィさん、端で追いかけ回すジイクさんと僕と言った様相だ。

 『ネコブラ』は格闘ゲームだが、SSSと同じようにバトルロイヤルルールである。つまりここでも僕の立ち回りは通用する。

 なるべく戦わないこと。

 そもそもSSSと違って戦いに勝っても物資が貰えるわけじゃないし、範囲によって逃げが封じられるということも無いので他が潰し合うまで逃げるのがセオリーで――。


「ん? 何かマモルの残機数多くない?」

「え? あ、そうだそうだ! まずはマモル君から倒さないと!!」

「ではお二人も包囲網よろしくお願いします」

「はぁっ!? ズルいぞ!! チーミングだ、チーミング!!」




 僕の非難は当然のように無視されて、三人に囲まれた僕はボコボコにされて四位になった。

 パーティーゲームなのに大人げない立ち回りをするのは止めようね、という教訓である。






「ふんふふーん~~♪」

「うわぁ、鼻歌しながらえげつないコンボ叩き込まれた……」


 新しいマッチが始まり、僕も勝ちにこだわりすぎるのを止めてリリィさんに突っかけたのだが、こちらの攻撃を完全に裁かれてコンボ技でそのまま撃墜まで持って行かれる。


「ネコパンチ、しっぽばらい、ジャンプネコパンチ、ひっかき、ひっかき、ネコパンチ……ってどれだけ繋げるのよ」


 アカネも軽く引いている。


「リリィさん『ネコブラ』の経験者なんですか?」

「まあね。初代からずっとプレイしてるからもう20年くらいかな」

「いやいや20年って言ったら僕ら生まれて無いじゃないですか。リリィさんも冗談上手いですね」

「え、あっ、いや…………あはは、そうだね」


 何かリリィさんが慌ててるけど……どうしたんだろうか?






「そういえば今さらですけど何で『ジイクフリート』って名前なんですか?」


 駄弁りながら『ネコブラ』をプレイしている間に、僕は今まで気になっていたが聞けなかったことを口にする。

 チーム最年長でいつも落ち着いて頼れるジイクさんだが、そのプレイヤーネームは『ジイクフリート』と本人の性格とは違ってかなりカッコつけたものになっている。


 出会ったときから気になってはいたが、プレイヤーネームについてはマナーとしてどうにも触れていいのか触れては良くないか判別が難しい。

 そのためこのような雑談でさらっと聞いて、駄目なら流されるだろうという心積もりで聞いたのだが。


「それならアカネが名付けたのよ!!」


 答えは別方向から返ってきた。




「アカネが……?」

「そうよ! アカネに付き合って爺がSSSを始めるときに『本名ははばかられますな』って言ったから、だったら爺にふさわしいカッコいい名前にしてあげるって名付けてあげたの!!」

「……そうか」


 それは……余計なお世話な気もするが。


「『ジイクフリート』私も気に入ってますぞ」


 と、思ったらどうもジイクさんは満更じゃないようだ。




「そっかー、じゃあアカネちゃんにとってジイクさんはカッコよく見えてるんだね」

「そうよ!! 爺はすごいんだから!! 傭兵として世界各国を渡り歩いたこともある歴戦の強者なのよ!!」


 リリィさんの言葉にアカネが……ん? 何か話が変な方向に向かってないか?


「えっと……傭兵?」

「小さい頃から爺の色々な武勇伝を聞いてたの。アカネのお気に入りは、中東で100人のテロリスト相手に部隊4人で蹴散らした話ね!!」

「ふぉっふぉっ、今思い返すと若気の至りですな」

「そ、そうなんだ……」


 リリィさんが反応に困って言葉に詰まる。というか僕も何と言っていいのか分からなくて口を挟めない。


「部隊の女性と二人で敵組織のアジトを攻略した話も好きだったけど…………あ、ちょっとトイレ」


 急にそんなことを言うとVCボイスチャットを切って離席するアカネ。




 残されたのは僕とリリィさんとジイクさんの三人だ。


「…………」

「…………」

「もちろん、さっきの話は創作ですぞ」



「やっぱりそうですよね」

「突拍子もない話だとは思いましたが……」

「アカネ様を寝かしつけるときに普通に昔話やおとぎ話をしてもつまんない、言って寝てくれなくてですな。そういう派手な話の方が好みのようで、創作して話していたのを今も覚えているというわけです」



「そういうことなんですね」

「分かりました」

「ふぉっふぉっふぉっ」



「………………」

「………………」

「………………」



「(でも以前何かの拍子に電子の戦場もいいものだ、って言ってた気が……。それって現実の戦場も知ってるってことで……)」

「(世界で恐れられている日本の傭兵部隊がいたって、伝説みたいな話聞いたことあるけど……まさかね)」

「ふぉっふぉっふぉっ」




 結論、真相は分からず。






「というわけで打ち上げも終わり!! 今日はみんな見に来てくれてありがとね!! 大会はパッとしない結果に終わったけど、それくらいじゃめげないわ!! また大会挑戦するからそのときは応援よろしく!!」


 アカネが締めの言葉を告げて、打ち上げ配信も終了する。




 さてこれでチームも今日のところは解散……というわけでもなく。




「じゃあこれから反省会ね。まず言っておきたいんだけど、マモル」


「……はい」


「本選3マッチ目、あの作戦は何なの?」


 高いテンションから一転、素に近い声でアカネに僕は詰られるのだった。



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