37話 スター杯本選 読み合い
「ナイス、爺!!」
アカネがジイクさんに賞賛の言葉をかける。
始まったスター杯本選、1マッチ目。
降りてすぐ物資を漁っていた僕らは遠くで銃声が聞こえ、キルログが流れたのを確認。
ログに流れた名前と部隊数からアマチュア最強と名高い『GD』が早速戦闘を仕掛けて、一部隊を壊滅させたところだと分かった。
その戦闘が終わった直後、アポロン選手をジイクさんが狙撃、ダウンさせることに成功。
彼我の距離は200メートルほどとかなり開いている。
4対3になった絶好の好機ではあるが――。
「急いで攻めるわよ!!」
「ちょっと待て、アカネ。ジイクさん、確キル狙えますか?」
アカネに制止の言葉をかけながら指示を出す。
SSSではHPを削りきられると、ダウンと呼ばれる這って動くことしか出来ない状態に陥る。
そこからさらにダメージを与えるとキルとなり、キルポイントをゲット出来るし、棺桶になって物資を奪うことが出来る。
このダウン状態からならばチームメンバーによる応急処置で復活することが出来る。応急処置はキャラのスキルに問わず、誰でも出来る行動だ。
その応急処置をさせないために、さらにダメージを与えてキルを確定させる行動=確キルというわけである。
「やってみますが……むっ、対応が早いですな」
ジイクさんは続けてスナイパーライフルから銃声を轟かせるが、敵もさる者、ダウンしたアポロン選手の前に壁が生成されて銃弾が阻まれる
「スキル『ウォール』。『GD』のオーダー『カイト』選手のキャラ『工作家』によるものですな」
こうなっては確キルは無理だ。今ごろアポロン選手も応急処置によって復帰しているだろう。
「ああもう、だから攻めるべきだったのよ!! 応急処置でごたついている間に詰め寄れば『GD』を討ち取れたかもしれないのに!!」
アカネが悔しがるが、その行動が通らないことを僕は解説する。
「それは無理だって。僕らと敵の距離が開きすぎている。『GD』に付くまでの道に遮蔽が全くないから、アポロン選手と応急処置で二人欠けても、残り二人で詰め寄るこちらにかなりの損害を与えることが出来たと思う。
もちろんそれでも人数が有利だったから勝てたかもしれないけど、さっきの『GD』の戦闘から続いて、この場所で戦闘が長引いてることになる。そうなるとさらなる漁夫を招いて僕らが倒される可能性も高いわけで。『GD』を倒せてもこんな序盤でやられたら優勝は出来ない」
この戦場にいるのが僕らと『GD』だけなら今のは絶好の攻めるチャンスだった。
しかし、まだ戦場には24部隊残っている。バトルロイヤルにおいて第三者の部隊、漁夫の可能性は常に警戒しないといけない。
「むぅ……それは分かったけど。だったらどうして爺に狙撃させたわけ? ダウンさせた意味が無いじゃない」
「そもそもだけど、僕だって可能なら漁夫を仕掛けたかったよ。でも『GD』が戦闘を終わらせるのが早くて近付けてなかったからね。漁夫は戦闘が終わった瞬間に仕掛けないと、敵が迎撃体勢を整えてしまって意味が無くなる。
あの距離からだったらジイクさんの狙撃しか無かった。実際アポロン選手のダウンには成功したし、もしウォールが無ければ1キルポイントゲット出来ていた。防がれたのは相手が一枚上手だったってことだね」
SSSではスキルを使うと再使用までに一定時間のインターバルが必要になる。あのタイミングで使えたってことは、その前の戦闘ではウォールを使っていなかったということだ。おそらく最初から漁夫を警戒して残しておいたのだろう。
開幕直後でもチャンスと見たら速攻してきちんと漁夫まで警戒している。流石『完全指揮』と言うべきところだろう。アマチュア最強は伊達じゃない。
「もちろん可能ならばカイト選手を狙いたかったですな。ウォールのスキルから落とせば防がれませんから。
しかしながらカイト選手は狙撃の警戒でこちらから遮蔽に隠れるように棺桶を漁っていたので、警戒の薄かったアポロン選手を狙ったというわけです」
ジイクさんが何でもないことのように言うが、『GD』は撃たれるまで僕らの位置を分かっていなかったはずだ。それでもカイト選手がジイクさんの射線から逃れられたのは、マップの狙撃ポイントを完全に把握しているからだろう。
いるかも分からない狙撃手に常に警戒する。大会本選という大舞台で、チームのオーダーを努めながらそこにまで意識を割けるとなるともう超人だ。
「ええと、つまりここから『GD』とは戦わず、違う方に向かうってことですね?」
「はい。安全地帯も逆側になってかなり移動しないといけませんし、早めに動きますよ」
リリィさんの言葉に答えて僕らは移動を開始する。
「あーでも『GD』倒したかったなー。上手く行けば完全に注目の的だったもの」
「まあまあアカネ様。大会公式の放送はマップ全体を実況しなければなりませんが、今は開幕直後で他は戦闘をしておらず、おそらくここにしか焦点が当たっていなかったはずです。
そんな中で『GD』のメンバーを一人とはいえダウンさせたのですから、かなり注目されたと思いますぞ」
「うーん……それもそうね! 爺、後で狙撃したときのクリップちょうだい!」
「承知しました」
ジイクさんが上手くフォローしてアカネの機嫌を取り戻す。
こうして『GD』との地味ながらも色々な思惑が渦巻いたファーストコンタクトは終了した。
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『ゴールデンドラゴン』所属、カイト視点の大会配信にて。
「いやー、今のは傑作やったねえ。『アポロン、漁るのはいいが狙撃には気を付けろよ』『そんなの分かってるに決まって――ぐわっ!?』ってね。もうフラグ回収早すぎ!」
アルテミスが先ほどの一幕を声マネで再現する。
「ちょっ、それは言わんといてや!!」
応急処置で起き上がり回復を済ませながらアポロンが慌てる。
「カイトのウォールがあったからいいものの……ちゃんと反省しなさい」
シズカが諫めの言葉をかけて。
「仕方がない。一応注意するように言っただけで、俺だって狙撃手がいる確信があったらそもそも漁らせてなかった。今のは撃ったやつが上手かっただけだ」
カイトはそのように言うが、自らはきちんと遮蔽を使って射線を通さないように意識していた。
「そうそう、撃ったやつや! 『APG』は来てないんか? 借りはきっちり返さないと気が済まんのやが」
「いや、『APG』は攻めてくる気配がないな。戦闘も終わったし周辺も含めて警戒したい、頼めるかシズカ」
「承知しました」
シズカはそれだけで意図を察し、自らのキャラ『鳥使い』のスキルを使って周辺を索敵する。
しばらくしてチームメンバーのマップに付近の敵の位置が示された。
「『APG』は攻めずに安置に向けて移動中。他方向に二部隊いるけど、戦闘が完全に終了したこともあって攻め込んで来ないみたい」
「何や攻めてこんのか。つまんないのう」
「真っ先にダウンしたやつが言うんじゃない。大体ここからAPGと戦ってたら勝ってもさらに漁夫が来て死んでたわよ。助かったじゃない」
アポロンの暢気な言葉にアルテミスがツッコむ。
「互いの距離が開いてたのもあるが、APGも同じく勝ってもさらなる漁夫が来ると読んで引いたんだろう。共倒れにならずに済んでこっちとしてはありがたい」
カイトはマモルの思惑も当然のように看破する。
「ってことは何だかんだ初動は成功ね。アポロンの醜態と引き替えにキルポイント4もゲット出来たなら上出来じゃない」
「醜態言わんといてや」
「でもこれは大会で配信もしてるのよ。もう視聴者が配信を切り抜いてSNSで拡散でもされてるわよ。『#GD珍事件』とかそんな感じのタグで」
「なっ、ちょっ!? みんなそんな酷いことせえへんよな!?」
アポロンは視聴者に訴えかける。
「はぁ……。私たちも移動を開始しますか?」
アルテミスとアポロンの双子漫才に、シズカはため息一つだけ吐いて、カイトに進言する。
「ああ。APGとも近くの二部隊とも被らないように慎重にルート選択する必要がある。付いてこい」
「了解!」
「分かったで!」
「かしこまりました」
そうして『GD』も安全地帯に向けて動き始めた。
投稿時点で総合評価が500pt超えました。
これまで書いた作品で一番速いペースで、応援ありがたいです。
やっぱり長文タイトルが強いんですかね。
これからも読んでもらえれば幸いです。




