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35話 スター杯本選 昼休憩


 スター杯のスケジュールは午前に予選、午後に本選で一日で終わらせる形だ。


 現在は予選が終わり、昼休憩とでもいった時間である。


 僕たちチーム『アカネ様と親衛隊』――大変不本意なチーム名だ――も一度解散して、午後からの戦いに備えて昼食を取っているところだった。

 食べ過ぎてマッチ途中にお腹が痛くなったりしたら困るので昼はサンドイッチとバナナだけだ。男子高校生の胃袋にペロリと収まる。




「さて、と。情報収集でもするか」


 チームで再度集合する時間まではまだ余裕がある。

 僕はパソコンからスター杯運営の公式ページから予選突破チーム一覧を眺める。予選はAからFブロックの6つに分け行われて、各ブロックの4位までが本選に出場出来る。


「うーん……そこまで気になる名前はないな……」


 SSSにはプロ制度があって有名なプレイヤーは大体プロだ。スター杯はアマチュア限定だからそういう有名なプレイヤーは出れない。


 もちろんアマチュアなりに名の売れているプレイヤーというのもいるが、予選突破した中に僕が知っている名前はなかった。

 下手したら実況者として名前が売れているアカネが一番有名であるかもしれない、というようなメンバーである。


 僕らはDブロック3位での突破、とブロック内での一位は取れていないが、それは1マッチ目がチーミング集団に速攻で落とされて全くポイントが稼げなかったからというところも大きい。




「これなら優勝出来るかもしれないな……」


 と調子に乗った独り言を言ってみるが、油断するつもりもない。

 情報収集の続きとして本選のルールの詳細をもう一度読んでおさらいしておく。


 本選も1組4人が25チーム、100人のプレイヤーによるバトルロイヤル形式だ。

 3マッチ行い、キルと順位に付けられたポイントの合計を競って争う。

 マップは『熱帯雨林』、リリィさんと初めてやったときの場所だ。


 交流戦でやった『摩天楼』や予選でやった『黄昏』はマップ全体的に特徴が統一されている。

 しかし『熱帯雨林』はスポット毎に特徴があり、『森林地帯』は視界が悪いため潜伏しやすく、『神殿の廃墟』は大規模な屋内戦のノウハウが求められ、『原生住民の住居』はそれぞれが建物にこもった場合の戦い、『巨大樹』や『湿地帯』は先に有利位置を取れるか維持出来るか、など求められる物が違ってくる。


 安全地帯がどこに収縮するかで戦いの様相ががらりと変わることで連戦しても画面映えが悪くないため大会でよく使われるステージだ。

 プレイヤーとしては変わりゆく戦場に、いかに対応出来るかオーダーの能力が求められる、とされている。

 つまり僕の力が問われるわけだ。




「……大丈夫だ。本選での戦いも想定して、ちゃんとチームで『熱帯雨林』での練習もしている」


 そう、これまで頑張ってきたんだ。絶対に勝ちたい。

 でも、負けることに対する不安は無かったりする。


 前いたチーム『銀鷲』では負けたら全部オーダーである自分のせいだってされていた。それで責められるのが嫌で必死に自分を磨いていた。

 でも今のチームならリリィさん、ジイクさんは負けても『ドンマイ』と言ってくれるだろうし、アカネは……まあ小言くらいは言われるだろうけど、本気で責めるようなやつじゃないとは分かっている。

 だから本選を控えた今も緊張しすぎることなく過ごせている。


 リリィさんは言ってくれた、僕と一緒にするゲームは楽しいと。

 僕だってリリィさんと一緒にするゲームは楽しい。


 ただ、午前中の対チーミング戦は楽しくなかった。

 それもそのはず、やつらが仕掛けてきたのはゲームじゃないからだ。

 理不尽に対抗するために、僕も心を鬼にするしかなかった。


 でも午後からは違う、もうあんなことはないはずだ。

 大会の本選という大舞台でも楽しんでゲームをしてやる。






「よしっ!! …………あー、でもまだまだ時間あるな」


 意気込んだはいいものの、本選開始もチームでの集合時間もまだ遠い。


 手持ちぶさたの僕はせっかくだし、ということでアカネが配信しているchを見始めた。


「昼休みの間も配信しているなんて……人気になることに関してはマメだよなあ」


 リリィさんもジイクさんも僕も席を外しているため、アカネは一人で喋っている。

 内容としてはスター杯の公式放送を見ながら雑談しているという状況のようだ。




 現在プレイヤーとしては昼休みだが、スター杯としては休みではない。むしろ今が本番ともいうべきか。

 司会者とゲストが大会スポンサーの商品やサービスの紹介などをしているのだ。


 プロスポーツなどは観戦料などでも儲けられるが、ゲームの大会の観戦は一般的に無料なのが普通だ。

 ネット上でやるから会場費などはいらないし、設備もそれぞれプレイヤーが用意するので不要だが、それでも大会を運営するにはスタッフの人件費などお金はやはり必要だ。

 それを出すのが宣伝をしたいスポンサーということになる。




 大会運営には大事だが、だからといってプレイヤーや視聴者的には興味を引くかというのは別問題だ。


『へえ、そんなサービスあるのね。知らなかったわ』


 紹介に相槌を打つアカネ。

 アカネの夢は有名になること。つまり将来的にはスポンサーが付くこともあるわけで、それを意識しているのかは分からないがいつもの毒舌こそ出ていないものの、明らかにテンションが低い。


『それじゃ皆さんお待ちかね!! 午後の本選から出場する、シークレットチームの発表です!!』


 紹介コーナーが終わって、次のコーナーに進むと。


『あ、やっと来たわね!! 待ってたわよ!!』


 アカネのテンションがあからさまに上がったのが分かるほどだ。




「……って、ん? シークレットチーム?」


 それって何だったか? と思索して思い出す。

 予選は6ブロックでそれぞれ4位までが本戦進出なので合計24チームだが、本選もいつも通り25チームで行うわけで。

 その残り一枠を埋めるのが、予選をパスして本選から出場するシークレットチームってことだったはず。


 つまりはシードというわけでそれに見合った強いチームが参加するんじゃないか、と話題になっていたが、何分シークレットのため情報がなかった。

 それがどうやら今から発表されるらしい。


「これは気になるな」


 予選を突破した中には知っている名前は無かったが、大会当日までシークレットにするくらいなら有名で強いチームに決まっているだろう。

 それによって立ち回りを変えないといけないくらいなチームの可能性もあるわけで……。




『お待たせしました! それではシークレットチームの発表です!!』




 司会が声を張り上げると、画面が切り替わる。

 そこに映されたのは――――。


「なっ……!?」


 僕も知っているチームだった。








 先日行われたSSS公式大会『SSS祭り』のアマチュア部門で優勝したそのチーム。


 名前を『ゴールデンドラゴン』


 アマチュア最強、今最もプロに近いチームと言われている。


 特筆するべきがそのリーダー。




『午後から参加する『カイト』だ。よろしく頼む』




 ポジション、オーダー。


 その技能は人呼んで『完全指揮パーフェクトオーダー




 僕の、『消極性オーダー』の、上位互換とでもいうべき人だ。


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