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34話 スター杯予選 決着


「くそっ、くそっ、くそっ……!!」


 ギルバートは思いっきり拳を机に叩きつける。


 上手く行った1マッチ目と比べて、何もかもが駄目だった2マッチ目。




「(何が悪かったんだ? ……いや、分かりきっている。

 雑魚のくせにさっさと死ななかったマモルたちも、最初に全滅したブラボー隊も、チーミングしているのにたかが4人に手こずる他のやつらも悪い。くそっ、オレ以外全員悪いじゃねえか……!!)」


 ギルバートに自身を客観的に評価するという機能は備わっていない。




 配信にアンチコメントを書き込んでも反応は良くなかった。

 それも当然でチーミング集団を倒した後、マモルたちは練習通りの力を発揮。安全地帯が自身側に寄ったという運もあって一位を、スターを獲得したのだから責めようがない。




『おい、もうすぐ3マッチ目が始まるがどうする?』


 チーミング集団の一人からVCボイスチャットが入る。


「どうする、じゃねえよ! 次も同じだ! 今度こそあいつらを血祭りに上げる! しっかりしろよ、おまえら!!」

『お、おう……分かった』


 別にギルバートとチーミング集団に上下関係は無い。呼びかけられて集まっただけの対等な関係である。

 それなのにいきなり命令されて面食らうが、ギルバートの迫力に『いらないこと言わないでおこう』と従った。




 そして始まる3マッチ目。

 ギルバートたちはこれまで同様に『忘れ去られた住宅街』の周辺に降りて物資を調達。

 3分遅延されたアカネの配信を見ることでマモルたちの動向を窺うが。


「なっ、こいつら……!!」


 そこにはマモルたちが『終焉の戦場』に降り立つ姿があった。『黄昏』ステージの中でも一番広い広場であるそのスポットだが、特筆するべきは『忘れ去られた住宅街』とは真反対に位置するというところだろう。




『え、どうしていつものところに降りないの?』


 結局事態を知らないまま3マッチ目を迎えたアカネの疑問が流れる。


『あの場所は何かちょっと1マッチ目も2マッチ目も多くの敵が降りてましたからね。本選進出圏内になった結果、積極的に戦う必要もありませんから離れた位置に降ります。練習とは違いますが、大丈夫ですよね?』

『大会じゃなければよく降りてる場所だし大丈夫よ。とりあえず被っている敵部隊もいないし、手分けして漁るって事でいいよね?』

『ええ、その辺りはいつも通りで』


 もちろんマモルは自分たちがチーミング集団に狙われていることを分かっているが、配信ではそんなこと知らないというスタンスで押し通すつもりだ。




 これによってギルバートたちが速攻でマモルたちを襲うことは出来なくなった。大きく移動しないといけないが20人も移動すれば目立つし、分かれて動けばただのチーム、道中で他の敵に襲われて負ける可能性も十分にある。

 万が一何事もなく移動出来ても、ゴースティングされていることが分かっていて3分以上同じところに留まることもないため、足で探さないといけない。




 計画が一気に暗礁に乗り上げたことに、ギルバートは。


「あーはっはっはっはっは!!」


 突然笑い出した。


『………………』


 他のメンバーは何も言い出せず押し黙る。


 ギルバートはしばらく笑い続けた後に、急にテンションを変えて。


「もう面倒だ。おまえら、全部潰すぞ」


 低い声でそのように言うのだった。






「最初からこうしとけば良かったんだ……!」


 ギルバートが取った手段。

 それはチーミングされた20人ひと固まりとなって進軍することだった。


 進路は『終焉の戦場』に向けながらも、マモルたちが今どこにいるのかははっきりしないため、敵を見つければ倒しにいき、銃声がなればそちらに向かい介入する。

 とにかく全てを倒せばそのうちマモルたちも倒せるという大ざっぱな作戦だ。


 隠れながら進むという考えもないため、遠くから撃たれたり不意打ちを食らうことも何回かあったが、人数という暴力は凄まじく一人や二人ダウンさせても、その間に他の部隊が襲いかかり同じ部隊のメンバーが応急処置で起こして、と何事もなく進んでいく。

 ひとかたまりになることで同士討ちを考慮する必要性も減り、集中砲火が決まったときは敵が瞬で溶けていく。




 まさに敵無しな状況にギルバートは気を大きくしていた。


「完璧だ、このままマモルたちをすり潰してやる……!」


 と意気込むが――当然この目論見は穴だらけである。




「……はぁ?」


 ギルバートたちチーミング集団は、ゲーム画面に突如エラーが表示されてマッチからロビーに戻された。


「何だよ、これ?」


 水を差されたと憤るギルバートに告げられたのは大会運営によるアナウンスだ。




『予選Dブロックにおいて、複数のチームからチーミングが行われていると報告。調査の結果、5チームが結託していることが分かった。該当のチームは失格処分、マッチを荒らされたため、残り20チームで3マッチ目をやり直すこととする』




 ギルバートに脅されたスター杯主催の男は多少の問題は自分のところでもみ消すつもりだった。

 実際大会で実力で負けたのに『敵がチートを使っていた!』『チーミングだ!』と負けを認めたくなくて難癖を付けてくるような輩は一定数存在する。

 なのでそれらと同じように処理すれば、どうにかなるだろうと思っていた。


 しかしギルバートは3マッチ目、20人ひとかたまりで動くというあまりにも露骨な行為に出た。

 当然やられたプレイヤーはそれらのスクショを大会運営に送信。それ以外にもSNSで投稿、拡散もされた。


 問題が大きくなり、もみ消す範疇で無くなったため、主催者は選択を迫られた。

 結果としてギルバートたちを違反者として切り、大会の存続を取ったのは当然と言えるだろう。




『あーあ、流石にやりすぎたか。まあでも楽しかったよ。また何か面白そうなことがあったら呼んでくれよな』


 チーミング集団はそもそもギルバートに誘われて楽しそうだからと乗っただけで、実際3マッチ目で暴れたことで目的は達成されている。

 そのため失格処分も特に気にせず、祭りは終わったとばかりにVCボイスチャットから切断、抜けていった。




 そうして一人残されたギルバートは。


「あーあー、そうかい。みんなオレを馬鹿にしてるんだな」


 オレの実力に気付かない目が節穴な連中が。


 オレの邪魔をして破滅させたのに、のうのうとゲームをしているマモルが。


 これからがいいところだったのに自分を失格にさせた主催者が。


 何もかもが気に食わなかった。




「オレは本当なら人気配信者として有名になり、その上実力でSSSのプロプレイヤーになっていて当然だってのに……邪魔ばかりするやつらのせいで……。

 ちっ、まあいい。今回は妨害されたがオレはこんな卑怯な行為に屈して諦めるつもりはない……! そうだ、頑張っていれば夢はいつか必ず叶う!!」


 とりあえず失格処分にされたスター杯にここから絡むことは出来ないだろう。

 マモルたちはまた今度の機会にするとして、今は邪魔してきたスター杯主催者の男への報復だ。

 やつの昔の悪行をところ構わずバラまくとして――――。




 ピンポーン。

 そのときギルバートが住む部屋のドアベルが鳴った。




 ギルバートはマンションでの一人暮らし、つまり他に応対してくれる人はいないわけだが、今はそんな状況じゃないと無視するつもりで。


 ガチャ、っと鍵が回された音がした。


「……っ!?」


 慌てて見ると、机の上に自分の部屋の鍵は置かれている。落としたのを拾われて使われたわけではない。

 だとしたら一体誰が……配信者時代にチームメンバーやファンの女の子と遊んでいたギルバートだが、合鍵を渡すようなことは一切していない。


 廊下を歩く音を戦慄しながら聞くしかないギルバート。そしてリビングに続く扉を開けられて、そこにいたのは……。


「ギルバート……久しぶり」

「レーヤ……どうしてここに?」


 『銀鷲』の元チームメンバーのレーヤだ。


「どうしてって……この部屋には何度か来たことがあるし……そこのベッドでも二人の愛を育んだじゃない」

「そうじゃなくて! そうだ、一体どうやって鍵を!!」

「合鍵を作っただけ。彼女なら持ってて当然でしょ?」

「お、おまえなんか彼女じゃねえよ!!」


 いつの間にか合鍵を作られてて、突然押し掛けてきたレーヤ。その行動に、その目が虚ろな闇を抱えていることにギルバートは恐怖していた。




「もう駄目じゃないギルバート、そんな嘘吐いたら。私とギルバートは付き合っているのに。この前暴言吐かれたときも私傷付いたんだよ。まあでも私は優しいから、許してあげる」


 全く噛み合っていない会話を繰り広げるレーヤは持っていたカバンに手をやり。


「でもまた嘘吐かれたら悲しいから、そうならないためにも私の愛をギルバートに付きっきりで教えてあげないとね」


 取り出したのはナイフとロープと――。




「うわぁぁぁっ!!」

「いたっ……」


 耐えきれなくなったギルバートは一刻も早く逃げないと、という本能のままに情けない悲鳴を上げながらレーヤを突き飛ばして廊下に出る。

 必死に伸ばした手が玄関のドアに手が届く――その直前のこと。




 ガチャ、ともう一度鍵の回る音がした。


 どうやらレーヤは合鍵を使って部屋に入った後、閉めていたようだ。


 それがもう一度外から開けられて、そこにいたのは。




「よっす、ギルバート」


 『銀鷲』の元チームメンバーのもう一人、アランナだ。

 外に出ようとしていたギルバートは急には止まれず、そのままアランナに身体ごと突っ込んで受け止められる。


「わわっ、もう何だよいきなり抱きつくなんて。そんなに私のことが愛しかったのか?」


 勘違いしたアランナはギルバートを抱き留め、回した手でよしよしと撫でる。

 その一見穏やかそうな行為にギルバートは、髪の毛が逆立たんばかりの恐ろしさを感じていた。

 それもそのはずでレーヤ同様にアランナにも合鍵を渡したことは無いのだから。




「今日はちょっとこの前のことで話をな。アタシを攻めるような暴言を言ってたけど……何か事情があったんだろ? 分かってる、恋人だからな。だから今日はその齟齬を埋めるため…………に……」


 アランナの声が途切れていく。

 抱きしめられているのでギルバートからは見えなかったが、背後で何かが動く音は感じ取れた。

 おそらくリビングで突き飛ばしたレーヤが起きあがって追いかけてきて、それをアランナが見たのだろう。




「ねえ……どういうこと?」


 前門の虎。


「返して、ギルバートは私のもの」


 後門の狼。


「ひぃぃぃぃっ……!!」


 挟まれたギルバートには成す術もなく。












 その後、ギルバートがSSSをプレイすることは二度と無かったという。






=====






「まさかチーミングしているやつがいるなんてね」


 大会運営のアナウンスによってようやく事態を知ったアカネ。


「そうですね、まあ失格処分になったってことですし気にせずいきましょう。仕切り直しのマッチも頑張りますよ」

「はいはーい。あーあ、さっきちょうどEXマシンガン手に入れられてテンション上がってたのになあ」


 アカネは文句を言いながらもスケジュールの都合でもう始まった仕切り直しの3マッチ目の飛行船にキャラ達は乗り込んでいるため集中する。


 僕たちはチーミング集団がいなくなったということで再度『忘れ去られた住宅街』を目指して降下しながら改めて考えていた。




 結局、どうしてチーミング集団の標的にされたのか分からなかったなあ。今日はもう大丈夫だとして、また狙われたら面倒だけど……そのときはまた返り討ちにすればいいだけだな。

 さて、3マッチ目に集中集中っと。まあ2戦目の時点で本戦出場圏内に入ってるからよほどのことが無い限り大丈夫だとは思うけど。






 その後。

 マモルたちは目立たないようにして安全地帯の第一、第二、第三収縮を乗り切るも、第四収縮がちょうどいる場所と反対の方向になり、無理な移動を迫られたところに集中砲火を受けて5位でフィニッシュ。

 しかし2マッチ目で大きくポイントを稼いでいたおかげで、全体ではDブロック3位をキープ、午後からの本戦出場を決定させたのだった。




ギルバートR.I.P.


これにて追放モノにおける『ざまぁ』パート終了です。

……ざまぁ、になってたかな? 書いてて分からなくなった。


次回より新章『スター杯本選』編開幕です。

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