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30話 スター杯予選 強襲


 勝負は第二収縮が始まる辺りだと思いつつも、油断してはいなかった。

 緊張しているリリィさんを落ち着かせようとほんわかした雰囲気になったときも、警戒だけは怠ってなかった。

 この場は戦場、そして戦場に絶対が存在しないことは分かっているから。




 それでもこの事態は――潜伏場所にいきなり手榴弾を投げ込まれたことはマモルこと僕にとって想定外だった。




「回避を……!!」


 絞り出すように指示を出すが、虚を突かれた上にこの狭い範囲に手榴弾四つは逃げ場がない。

 四人共に爆発を食らい、僕とジイクさんは体力が半分に、アカネはもろに食らって残り3割、リリィさんは運が悪いことに爆発で飛ばされたところに別の爆発が重なって残り1割になっていた。


「敵の位置を確認しないと……!」


 不意討ちを受けて敵の位置が分かっていない場合、すぐに鳥使いのスキルを使って索敵した方が良いと、リリィさんがこれまでの経験から反射的に動くが。


「先に回復を! おそらくもう一回――」


 僕が言う前にまた同じく手榴弾が四つ投げ込まれる。

 予想していた僕とジイクさんとアカネはジャンプしてキャラを壁に張り付かせて何とか爆発をやり過ごすが。


「え……きゃっ!!」


 リリィさんは鳥を放ったその姿勢のまま爆発をもらいダウンしてしまう。一瞬の判断ミスが生死を分けてしまう。


「ご、ごめん!」

「しょうがないです! ですが、すいません! リリィさん起こしてる暇が無いので!」

「うん、みんな行って!!」


 SSSでは敵をダウンさせるとログが流れる。この予選1マッチ目で初めて流れたログ、初めて起きた戦闘だ。

 ログによって敵は僕らが3人になったことを把握している。応急処置をすればリリィさんを復帰させることが可能だが、その時間を与えさせまいと敵は詰めてくるだろう。そうなれば処置をしない二人だけで追い返すのも困難。


 だから僕らはリリィさんをその場に見捨てて3人で逃げる選択肢を取る。

 非情なようだがこれが最善の選択肢。




「南に逃げます!」

 僕は逃げる方角を指定。投げられた手榴弾は四つ、つまり敵四人が僕らを囲んでいるはずだ。

 ならば投げられていない方角に逃げれば振り切れるはず…………だったが。


「っ! 正面に敵4人!!」

「なっ!?」


 ジイクさんの報告に僕は驚くことしかできない。

 しかし、実際に物陰から姿を現したのはフルメンバーの敵部隊だ。

 手榴弾を投げた後逃げる方向を予想して待ちかまえていた? いやそんな時間はなかったはず。だとしたら爆発音を聞きつけて寄って漁夫部隊か? でもそれも……。


「ちょっ、流石にこれは無理よ!!」


 敵がいないと思って飛び出したため僕たちは完全に無防備だった。アカネは巫女のスキル『焔化』を使って逃げようとするも、先に削られていたダメージが痛く前隙中に撃たれてダウン。


「一人排除しましたが……ここまでですね」


 ジイクさんは引かずにカウンターで敵の頭を撃ち抜きダウンさせるが、交換で銃弾をもらいダウン。




「くっ……」


 一人ダウンさせたとはいえ、敵はまだ三人いる。僕が撃ち勝てるわけもなく、慌てて近くの物陰に走り込む。

 とはいえ敵からその様子は丸見えだ。隠れた場所も把握されているため、そのまま詰められ囲まれて僕はやられるだろう。

 残り数秒しか保たない命。

 だからといって無駄にするつもりはなかった。


 ここから逃げる方法……顔を出した瞬間に撃ち抜かれる……罠を設置するか……いや3秒の間に敵は僕を倒すだろう。

 どうしようもない……だったらせめて何か収穫を……この一連の襲撃……違和感の正体を突き止めて――。




「……そういうことか」


 そのとき僕は画面に表示された『それ』を見て全てを理解して。


 次の瞬間、殺到した敵によって死亡。部隊は全滅。


 予選1マッチ目は0キルの25位。0ポイントの最下位でスタートすることになった。






「………………」


 最悪のスタートとなったが落ち込んでいる場合じゃない。

 いや、戦いはここからだと言ってもいいだろう。


 僕はすぐにチームメンバーにメッセージを送る。


『アカネ、しばらく一人で配信回してもらえるか?』

『……? よく分からないけど、良いわよ』

『頼んだ。リリィさんとジイクさんはメンバーだけのVCボイスチャットに来てください、緊急作戦会議です』

『うん、分かった』

『了解しました』


 現在配信はアカネのゲーム画面と4人の声が乗っている形だが、そこからアカネを除いた3人が離脱する。

 こうしたのも視聴者に聞かれないところで話す必要があるからだ。




「マモル様、これは……」


 ジイクさんは言葉を濁して状況を分かっている様子だ。


「緊急作戦会議……ってどういうこと?」


 対してリリィさんはピンと来ていない。まあ経験も少ないし、最初にダウンしたから情報が少ないのもあるだろう。




「そうですね、まず先に今食らった強襲についての説明からしましょうか。幸いにも最初に脱落したので次のマッチまで時間があります」


 ゲーム画面では僕らが死んだ後のマッチの情報も表示されているが、どうやらようやく第一収縮が終わったところで、まだまだ決着までは遠いだろう。


「えっと……どういうこと?」

「先ほどの襲撃、リリィさんは何か違和感を覚えませんでしたか?」

「違和感っていうと……いきなり手榴弾がたくさん飛んできたって思ったけど。あれって敵は私たちの潜伏している場所が分かっていたってことだよね? じゃないと最初からそんなにたくさん投げるはずがない。……でも」

「ええ、そうです。どうして僕たちの潜伏先がバレたのか、って話です」



「私たちが物資を集めたから、漁られていると見てそこら辺にいることが分かったとしても『忘れ去られた住宅街』には同じような建物がたくさんあるよね。実際どこに潜伏したかは探し回るか鳥使いのスキルでも使わないといけないけど……」

「探し回ったにしては全く足音が聞こえませんでしたし、スキルは使えば鳥の鳴き声でこちらも索敵されたことに気づけます。しかし、今回の強襲前にはどちらもありませんでした」

「じゃあどうやって敵は……?」



「そしてもう一つ、リリィさんはダウンしていてよく状況が分からなかったかもしれませんが、僕たちは逃げた先でさらに4人のフルメンバーの部隊に襲われました。

 手榴弾を投げられなかった方向だったので、動きを読んだのか、それとも漁夫が来たのかと思っていたんですが……最後やられる直前に見れた情報で確信しました」

「情報って……?」

「鳥使いのスキャンです。リリィさんがダウンする直前に放ってましたよね。あれって鳥使いがダウンしても続くんですよ」

「へえ、そうなんだ」



「やられる直前に完了したスキャンの結果分かった敵の位置は……手榴弾を投げた四方それぞれに4人ずつ、そして僕らを待ちかまえていた4人……計20人の敵があの場にいたということ」

「っ!? それって……偶然じゃないよね?」



「偶然で4部隊が同時に僕たちの潜伏先に手榴弾を投げる確率は0に近いでしょう」

「………………」






「つまり今回の事態はSSS……いやバトルロイヤルルールのFPSにおける違反行為『チーミング』。

 そして僕たちの潜伏場所が分かったのはおそらく配信を覗き見る違反行為、『ゴースティング』によるものです」



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