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26話 結成


 交流戦後、アカネちゃんは締めの言葉を述べて配信が終わり、私たち四人はVCボイスチャットルームに集まっていました。


「というわけでアカネ。勝負は僕たちの勝ちということだけど、何か言うことがあるよね?」

「………………」

「………………」

「………………」

「……ポチッとな」




『負けた方は勝った方に前言の撤回と誠心誠意を込めて謝罪すること。これでいいですかな』

『まあそれ以上をおこちゃまに求めるのも酷だな』

『何でアカネがする前提になってるのよ、あんたこそちゃんと考えておきなさいよね!』




「なっ……!? 今の声……!」

「ちゃんと録音してたに決まってるでしょ」

「ズルいわよ! 何とかかんとか権の侵害よ!」

「いや、そっちだって僕の声録音してたんだよね?」


 マモル君とアカネちゃんは早速勝負の精算を行っています。


「うー……アカネが悪かったわよ」

「それだけ?」

「あんたのこと雑魚って言ってごめんなさい」

「分かったなら良いよ。つまりは僕の方が強い、おまえの方が雑魚だってことだね」

「…………うがぁぁっ!! 一回負けただけじゃない!! そこまで言われる筋合いは無いわよ!! もう一回勝負よ、勝負! タイマンでケリを付けようじゃない!!」

「今日はもう疲れたからしないよ。というかケリを付けるも何も、もう付いた後だし」

「逃げるの? アカネに怖じ気付いちゃった?」

「……はぁ。しょうがないな、お子ちゃまって一回じゃ分からないんだね。いいよ、もう一回分からせてあげる」

「言ったわね! SSSの訓練場に来なさい!!」

「いや、僕らフレンドじゃないから一緒に潜ることは…………あ、申請来た」

「さっさと来なさいよね!!」

「えっと……そういうことなので僕は行ってきますね」


 嵐のような言い合いの後、アカネちゃんはルームを離脱、マモル君も私たちに一言断ってルームを出て行った。




「ふぉっ、ふぉっ。子供たちは元気ですな」

「本当にそうですね。……あ、ジイクさんもお疲れさまです」

「いえいえ、リリィ様もお疲れさまでした」


 残されたのは私とジイクさんの二人だけ。とりあえずお互いに労う。


「配信の方は大丈夫でした? 3戦目とか視聴者がどんな反応したか気になって」

「マモル様たちがたどり着くまでの乱戦で思う存分暴れられましたし、最後も格闘で食らいつくアカネ様の姿が珍しかったのか撮れ高十分です」

「それなら良かった……でいいのかな」



「コメントの方はざっと見てましたが、マモル様の作戦に気付いた者はいなかったようですな。まあ画面見てるだけでは分かりにくいところもありますが」

「その言い分だとジイクさんは分かったんですね?」

「ええ。人の流れをコントロールして私たちがずっと戦い続けるように仕向けて、弾切れに追い込む……私が一秒も考えたことも無い作戦を思いつき実行した手腕は流石マモル様ですな。リリィ様もサポートはされてたのでしょうが」



「はい……でもマモル君に言われた通りにするのが精一杯で……だってマモル君、交流戦で3戦とも参加メンバーが変わらないからって、1戦目、2戦目で観察したところからプレイヤーの性格を分析してたりするんですよ。

『その人は少々の妨害も苦にしないタイプなのでスルーで』『その人は銃声が聞こえた時点で足が鈍るタイプなので他のところの妨害を優先しましょう』って。そんなの分かるわけないと思いません!?」

「離れ業じみてますな」



「最初作戦聞いたときはそんなこと出来るわけ無いと思ってたんですけど無事勝てましたね。これでアカネちゃんもチームを組むのに前向きになってくれるといいんだけど……」

「たぶん大丈夫だと思います。アカネ様、配信が終わってからぽつりと『あんな強さもあるのね』とおっしゃられていましたので」

「そっちもですか。マモル君もアカネちゃんには感心していて。というのもほら、3マッチ目ってマモル君の勝ち以外はアカネちゃんの勝ちってなったじゃないですか。だからアカネちゃんには一つ取れる手段があって――」



「つまりわざと負ける……ってことですな」

「はい。アカネちゃんが乱戦の中で他の人によってキルされた、ってなればマモル君は勝つことが出来ないわけで」

「しかしアカネ様には一切手を抜くという考えが無かったと思われます」

「敵を全部返り討ちにしたから弾切れになって、それでも諦めず格闘で立ち向かってきた。もちろん配信で視聴者が見ているからという部分もあるのでしょうが、それでも『ガッツがあるな』ってマモル君が感心していて」



「それで今は二人一緒に訓練場で戯れていると」

「戯れ……っていうにはちょっと物騒な雰囲気だったと思いますけど……」

「初顔合わせこそ荒れましたが、何だかんだ良いチームになりそうですな。こうして年長組の相性も悪くなさそうですので」



「そうで――――――『年長組』?」



「おや、どうなされました、リリィ様?」

「え、えっと……つかぬことをお聞きしますが…………ジイクさん私の年齢のこと……」

「ふぉっ、ふぉっ。それなら最初に申し上げましたよ。『子供たちは元気ですな』と」

「…………」


 この感じは……年齢詐称がバレてる!?




「リリィ様は意外と抜けておりますからな、言動の端々まで偽装が行き届いておられませんでしたし、そうでなくとも声の張りなどからすぐに分かったことですが」

「……こ、このことは出来ればご内密に」

「もちろんですとも。このジイクフリート、他者の秘密を軽々しく話すことはしません」

「あ、ありがとうございます」



「とはいえそのままというわけにもいかないでしょう。今回挑むスター杯はオンラインでの対戦なので大丈夫ですが、今後オフラインでの大会にも参加すると思います。そうなればチームメンバーが現実リアルで顔を合わせるわけで……そのときまでにはどうにかしておいてもらえますと助かりますな」

「うう……善処します」


 ジイクさんにしっかりと釘を刺された。

 そうだよね、このままで良いわけがない。いつかマモル君にちゃんと打ち明けないと。







===




 交流戦翌日、アカネは自分のchでリリィとマモルの両名を追加メンバーとしてチームを組むことを宣言した。

 視聴者の反応は様々だったが『アカネが嬉しそうだ』ということで概ね受け入れられた。


 チームでの最初の目標は『スター杯』。

 開催まで残り期間も短いこともあって、連日連夜四人でSSSに潜って連携や立ち回りなどを鍛えていく。


 マモル。ポジション『オーダー』。技能『戦況創造』

 アカネ。ポジション『メインアタッカー』。技能『特攻前衛』

 リリィ。ポジション『サブアタッカー』。技能『無し』

 ジイクフリート。ポジション『スナイパー』。技能『戦場把握』


 チームとしてのバランスは悪くなく、スターの獲得を重ねていく。

 その様子をアカネはライブ配信していたが二人で活動していたときよりも盛況で、多くの者が視聴していて――。






「こいつだ」


 その中に一人。

 濁った目つきで配信を見つめる者がいた。


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