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25話 3マッチ目


 運命を決める交流戦3マッチ目が始まりました。


「うー、さっきは3位だったけど次はまたスターを取るんだからね!!」


 マモル様との対談で感情的になっていたアカネ様も配信を意識してテンションあげてプレイしています。

 飛行船からは即降りして近く広場に着陸。同じように降りてきた敵を瞬殺していきます。


「やっば、調子いいかも!」


 アカネ様は自分でもおっしゃられるように調子に陰りなし。私もすごぶる順調、戦場のことが手に取るように分かります。


「(こうなるとやはりマモル様が私たちに勝つことなど無理だとしか思えません。一体どんな作戦で…………いえそんなこと私が考えてもしょうがありませんね)」


 先ほど3マッチ目が始まる前の対談、アカネ様が退席した後のことを思い返します。






『負けたらSSSを引退するって……本気ですか、マモル様』

『そうだよ! 本気なの、マモル君!!』

『はい。それくらいの覚悟じゃないとアカネに本気だって思わせることが出来なかったでしょうし』


 マモル様は特に気負ったところもなく平然と答えました。


『しかしこんな勝負のためにそんな大それたことを……』

『いえ、これは大事な勝負ですから。それに引退するって決まったわけじゃありませんよ、勝てばいいだけの話ですし』

『そうですが……』

『僕が勝てるはずがないと、ジイクさんは思っているんですね』

『……失礼ながら』


 正直に頷きます。戦場で死合い分かったことは、マモル様たちの力量ではどのようなことが起きようとも不覚を取ることはないという確信です。




『まあ、その通りですよ。ジイクさんの感覚は正しいです』

『…………』

『そういえば話は変わりますがアカネが言ってましたね、二人でプレイするときはジイクさんがオーダーのように指示を出すと』

『ええ、そうですが』

『ジイクさんは『戦場把握』――とても状況把握能力が優れています。僕たちと野良で一緒になったときも罠の仕掛けた位置を完璧に覚えていましたし。

 その把握能力を活かしミスや紛れが起きる確率を減らして勝率を上げていく、それがジイクさんの立ち回りだと思います』

『その通りですな』



『対して僕は……前居たチームがほんと酷くてですね。僕の指示を聞かずに突撃していざピンチを迎えたってときになってようやくオーダーの僕を頼り出すようなチームでした。

 それでも諦めるわけには行かないから勝率0%の場面から必死に勝機を作り出してきた。それが僕の立ち回りの根底にあります。

 そうして身についた僕の技能『戦況創造』――ジイクさんの絶対に勝てないという確信をひっくり返してみせます』


『それは……楽しみですな』






「(マモル様は絶対に私が思いつかないような角度から勝ちを狙いに来る。ならば考えるだけ無駄。何が起きても対応できるように警戒をしましょう)」


 先の先を取るのは諦め、後の先に集中。理想はマモル様が射程内に入ってきた瞬間に撃ち抜くこと。


 もちろんその間も先の戦いの銃声とアカネ様に釣られてやってくる他の敵の処理もこなします。


 警戒、応戦、警戒、応戦、警戒、応戦、警戒、応戦、警戒、応戦…………。


 そうやって五部隊は壊滅させて、六部隊目の姿が見えてきたところでアカネ様がうんざりしたように言いました。


「えーまだ来るの!?」

「先ほどから少々敵が多いですな。うんざりするお気持ちは分かりますが、皆さまアカネ様と戦いと思ってのことです」

「人気者は辛いってところよね。でも一部隊ずつじゃなくてこう、どばーっと来なさいよ! 物資漁る時間も無いじゃない!!」

「次の部隊を早めに片付けて漁りま――――いえ」

「……? どうしたの、爺」


 気遣うアカネ様ですが私はそれどころではありませんでした。


 先ほどから遠くで頻発していた銃声や手榴弾が爆発する音。射程外のため無視していましたが……戦闘音にしては短く断続的すぎます。おそらく牽制……だとしても何のために……?

 それにアカネ様もおっしゃられていましたが交戦する敵が一部隊ずつ、しかも途切れなく続いています。もちろん二度や三度は偶然でそうなることもあるでしょうが、これが五や六も続くとなれば誰かの作為を疑うべきです。


「まさか……」


 二つを合わせて捉えるとつまりマモル様の取ってきた作戦、その狙いは――。




===




「そろそろジイクさんは気付く頃でしょうね」

「じゃあそろそろ次の段階に行くの?」

「はい、足止めは終わりです。僕らも向かいましょう!!」


 高層ビルから降りる僕とリリィさん。


 3マッチ目が始まってから物資を集めながらキルログと銃声でアカネたちの居場所を捕捉、そこから一番近い高層ビルに僕たちは陣取っていた。

 ジイクさんが持つスナイパーライフルでも届かない位置、つまりは僕たちからも手を出せない位置。

 だけど問題ない、僕たちが手を出したかったのはアカネたちに向かう敵の流れだったからだ。


『アカネちゃんたちの南に敵影!』

『手榴弾を投げます! リリィさんは北の敵を釘付けにお願いします!』

『うん! あ、スキルが溜まったから使うね!』

『お願いします! 3部隊目撃破と同時に4部隊目と接敵! 5部隊目の誘導も始めます!』


 アカネとジイクさんは向かってくる敵から逃げない。

 交流戦という場だから、自分たちが負けないという自信があるからだ。

 そしてこの戦場にいるプレイヤーは皆アカネたちと戦いに来ている。


 この状況を活かさない手はない。


 銃弾や手榴弾により敵のヘイトを買ったり、警戒して足を止めさせたりしてアカネたちのところに辿り着くまでを遅らせる。

 このときやりすぎないのがコツだ。2マッチ目ではこのヘイト管理をミスって僕らのところに突撃された。


 そしてアカネたちと一部隊ずつ接触するようにする。

 同時に二部隊相手させると、それらを同士討ちさせられることもあるからだ。


 合間にリリィさんの『鳥使い』のスキルにより敵の位置を把握。


 その後は間断無く相手させることでアカネたちに一息つく暇を与えさせない。


 最後にここ一番の大勝負。

 せき止めていた敵の流れを解放、全ての敵をアカネたちになだれ込ませる。

 ここまで来れば少しくらい同士討ちが起きても構わない、それよりもアカネたちを逃さないように包囲出来る人数の方が必要だ。




 おそらく五、六部隊に囲まれているアカネたちだが、それでも構わずキルを量産しているようでキルログにアカネとジイクの名前が多く流れる。

 そしてようやく僕らがアカネたちが戦っている広場に辿り着いたところで、ちょうど囲まれていた敵を全部倒しきったようだ。

 広場にいるのはアカネたちと僕らだけ。タイマンとなったこの状況で僕たちは物陰にも隠れず堂々と最短距離でアカネたちのところを目指す。


「ほ、本当に大丈夫なんですよね!?」

「大丈夫です! 信じてください!」


 敵に向かって一直線に駆ける。FPS初心者のような行動に不安を覚えながらリリィさんも付いてくる。

 対してアカネとジイクさんがその行動を許すはずがない。僕らに銃を向けて引き金に手をかけるが――。




「……ん、動きが止まってますね。ってことは!」

「ええ、狙い通り『弾切れ』です!!」




 射撃行動を行っても銃弾を持っていなければ弾は出ない。


 現実の戦場とは違ってバトルロワイヤル形式のSSSでは倒した敵から銃弾を奪うことが出来る。

 初心者ならともかくFPSに慣れてきた者ならそのときに補充できるので『弾切れ』なんて滅多に起こすことはない。


 しかし間断無く戦わせることで銃弾を吐かせ続け、その補充すら行わせなかったことでその状況にまで追い込んだ。

 どんな上級者でも銃弾が無ければ戦闘力はほぼ0だ。


 これが僕の狙いだった。

 戦ったら絶対に負ける相手に勝つためには、戦わずに勝てばいい。




 想定外の事態に硬直するアカネたち。そのまま止まっていたら簡単に倒せるのだが敵もさる者。二手に別れて移動を開始した。


「リリィさんはジイクさんをお願いします! 僕はアカネを倒します!」

「分かりました!」


 こちらも二手に別れて対処する。

 ジイクさんは近場の棺桶に向かっている。銃弾を高速で漁って一か八かやり返すのを狙っているのだろうが、リリィさんなら問題なくそれまでに仕留めるだろう。


 対してアカネは向かってくる僕たちの方に駆けてくる。わざわざ近寄ってくる理由は……巫女のスキルを使うつもりか? 『焔化』による無敵状態を使って逃げ物資を漁る隙を作る。

 しかし『焔化』中は実体がないため物資を漁れないし、そもそも『焔化』には前隙と後隙に硬直がある。そこを捉えて銃弾をたたき込めば撃ち合いが苦手な僕でも勝てるだろう。

 僕はその兆候を逃さないようにして。




「……あれ? スキルを使わないな? いやそれどころかすごい勢いで……痛っ!?」


 そのまま駆けてきた巫女に罠使いは殴られた。




「『格闘』って……まさか素手で戦うつもりか!?」


 格闘はキャラに限らず行える行動の一つで、振りかぶって殴ることで銃弾一発ほどのダメージとノックバックを与えることが出来る。

 ショットガンなどの近距離銃のレンジよりもさらに近い零距離でしか当たらないし、振りかぶっている間は隙だらけだから銃さえ持っていれば余裕でキルすることも可能だ。

 そんな弱点だらけの格闘はに強いて利点を挙げるとすれば銃弾を持っていなくてもダメージを与えることが出来る行動ということ。

 どうやらアカネは拳で戦うつもりのようだ。


「いや、流石の僕でも素手相手には負けな……いや、ちょっ……ああもう、すばしっこい!!」


 ちょこまかと動く巫女に上手く標準を合わせられず、細かくダメージを食らってしまう。

 そういえばアカネは前衛だ。敵に突っ込んで銃で倒しきれず相手の体力が少し残った場合に、リロードするよりも早くダメージを与えられる格闘を振ることがある。格闘で渡り合う術も持っていて当然だ。


「いや、ここまで来て負けるとか無いって! こっちはSSSの引退もかかってるんだからな! くそっ、このっ…………よし!!」


 強靱なアカネの粘りに追いつめたはずのこちらがテンパる事態に。しかし最後にはどうにかアカネを捉えてキル。


「こっちもやりました! 私たちの勝ちですね!!」

「よっしゃ!!」


 リリィさんもジイクさんを倒したようで、これにて勝負に勝利!!




「って、マモル君! 新手が来てるよ」

「え、うわっ、はやっ! ちょっとさっきアカネに体力を削られたから……うわぁぁぁっ!!」

「マモル君ーーっ!!」




 ――その直後に銃声を聞きつけてやってきた漁夫に僕らはあっさり倒されて……こうして僕らの交流戦は締まらないまま幕を閉じた。



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