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22話 交流戦


『今日はみんなアカネに倒されるために集まってくれてありがとねー!!』


 初っぱなから何ともな発言をぶっ放すアカネ。




「こんなんで人気があるんだから世界は広いよなあ……いや、こんなだからこそなのか?」


 配信画面を見ながらマモルこと僕はひとりごちる。




 アカネのSSS爆勝chが主催となって月に一回開催している『交流戦』。

 視聴者からペアを49組集めて、そこにアカネとジイクさんも加わって計100人によるカスタムマッチを行う。

 それだけの人が集まるのか? と思っていたが、毎回抽選になるくらい集まるらしい。かなりの人気者だ。

 今回僕とリリィさんは勝負のために抽選なしで枠にねじ込んでもらった。主催者特権である。

 ちなみに他の視聴者には僕とアカネが勝負を行うことは知らされず、交流戦の裏でお互いの謝罪を賭けた勝負が行われるという手筈となっている。




 交流戦前にアカネがオープニングとして話しているのを配信画面で聞いていると、一緒のVCボイスチャットルームに入っているリリィさんが話しかけてきた。


「緊張してきましたね」

「そうですか? リリィさんは何も賭けてないんですし、特にそんな要素無いと思ってましたが」

「いや、アカネちゃんと一緒にチームを組めるか今日の勝敗が大きく関わってくるんでしょ。私にも関係あるって」


 リリィさんには顔合わせの後でどういう企みがあったのか既に説明してある。

 『そういうことなら前もって私にも相談してくれれば良かったのに』とちょっとへそを曲げたが、今ではこうして前向きに勝負に臨む様子だ。


「大会とか出たこと無いから、こう絶対に負けられない戦い、みたいなのに挑むの初めてだし、やっぱり緊張するなあ」

「いつもはカジュアルにSSSプレイしてますからね」


 ちなみに僕は『銀鷲』時代に色々とオンライン大会に参加したことがある。


「まあでも『スター杯』にも出るんだし慣れて行かないとね。よし、頑張るぞ!!」

「作戦通り行けば勝てる……と思いますが、戦場に絶対はありませんからね。油断は禁物で行きましょう」


 用意した作戦。

 今回はアカネの提案によってお互いのチームを直接キルした方が勝ちとなっている。

 いつも通りの消極的なスタンスではよほどの運が無い限り勝つことが出来ない。

 勝ちを掴むためには立ち回りを曲げなければ行けないが……だからといって僕のポリシー『なるべく戦わない方がいい』まで曲げるつもりはない。


「カスタムキー来ました、共有しますね」

「ありがとうございます」


 カスタムマッチでは指定した人だけを招待するためのキーの入力が必要になる。

 僕とリリィさんに渡されたキーを使ってカスタムロビーに入室。




『全員揃ったみたいね、それじゃ一戦目開始よ!!』




 アカネの開始宣言を聞いて僕は配信画面を切る。

 配信画面を覗けばアカネたちがどの場所にいるのかなど丸分かりだ。それを防ぐためにゲームプレイより3分遅らせて配信するようだが、それでも情報の宝庫ではある。

 そんなズルをして勝っても意味ないし、何より目の前の戦場に集中した方がもっと得る物がある。




 飛行船に乗り込んだ僕たちのキャラはいつも通り僕が罠師でリリィさんは鳥使いだ。

 眼下に広がるマップは『摩天楼』。

 高層ビルが建ち並ぶ『ビル街』や入り組んで迷路のようになっている『路地裏』、ちょっと開けた『広場』などのスポットが存在する。

 自然が多く開放的な『熱帯雨林』と違って、人工的で閉鎖的な『摩天楼』。そのため接敵しやすく激しい撃ち合いになることが多い。

 ガンガン戦いたいプレイヤーに人気で好きなマップランキングの上位によく入っている。ちなみに僕はハイドスポットが少ないし、漁夫が来るのが早いしで苦手なステージだ。




 降下開始からすぐ飛行船軌道の一番近い広場をめざして多くのプレイヤーが飛んでいく。


「やっぱりそうなりますか」

「マモルくん、どうする!?」

「近くの『路地裏』に降ります!!」


 ワンテンポ置いて僕たちも広場近くの路地裏に降りる。

 広場の方が物資が多く落ちているがその分プレイヤーたちを引きつける。物資が少なくとも戦いに巻き込まれないように路地裏に降りるのが正解だ。

 二人で手分けして物資を拾い装備を調えているとキルログ――誰が誰をキルしたかは全てのプレイヤーに表示される仕様――が流れてくる。


「アカネちゃんに……ジイクさんもキルを取ったみたい」

「銃声からして広場でしょう。ごちゃついてるはずなのに流石ですね」

「あ、またアカネちゃんのキルに……もう一回に……ジイクさんも……って多すぎない!?」

「まあ『交流戦』ですからね」


 そう、今回の舞台は交流戦。何と交流するのかと言ったら、ファンとだ。


 参加しているのは『アカネのSSS爆勝ch』を見ているファンたちだ。そのファンが交流戦に参加して一番何を望むかというと、当然アカネと戦って勝つこと……いやファン層からするとアカネに倒されることを望むやつもいるかもしれないが。

 とにかくそういう事情によってアカネとジイクさんのチームのいる場所に人が集中している。

 これがアカネがルール取り決めの際に言っていた不利な状況というやつだ。多くの人から狙われるアカネたちと違って、一チームとして自由に動きやすい僕たちの方が有利であるのは間違いない。

 とはいえアカネたちも集まってきた敵をものともとせず返り討ちにしているようだが。




「僕らも動きますよ」

「うん、ここの広場だったら観測スポットは『飲食店』でいいんだよね!」

「その通りです!」


 少し移動して広場に面している『飲食店』の裏口から侵入する。ここの二階からは広場を一望できる。

 アカネとジイクさんは未だに戦い続けているようだった。『特攻前衛』のアカネが敵陣を崩し、ジイクさんはフォローしながら『戦場把握』で囲まれないように位置取りしている。

 視聴者同士もみんなアカネたちを狙っているとはいえ、敵の敵は味方理論は通用しない。バトルロワイヤルにおいて自分以外は全てが敵だ。

 そのため視聴者同士が撃ち合っているところにアカネたちが乱入して両者ともに討ち取るという光景も発生する。




 しばらくして棺桶がたくさん散らばる中、立っているのはアカネとジイクさんの二人だけとなった。この広場の覇者となったようだ。


「すごいですね……二人とも何キルしたんでしょうか?」

「アカネが17キル、ジイクさんが11キル……合わせて28キルですかね」

「えっ!? 数えていたんですか!?」

「まあずっと見ていただけですしそれくらいの余裕はありますよ」


 棺桶から戦利品を漁るその姿を僕とリリィさんは見ていただけで、乱戦の最中もそれが終わった今も不意討ちしようとは一切考えていなかった。

 正々堂々という観点からではない。不意討ちしても勝てるとは思えなかったからだ。

 乱戦中は一撃で仕留められなければ銃声によってこちらの場所がバレ他の敵も誘き寄せるかもしれなかったし、今だってアカネは巫女のスキル『焔化』でジイクさんはこの狙撃スポット理解しているのかこちらから影になる場所にいつでも隠れられるようにしている。

 ちょっと有利な状況くらいではアカネたちに勝てない。もっと有利な状況を作り上げる必要がある。


 そのために作戦を立てて、この一戦目は観察に徹すると決めていた。

 前回までの『交流戦』のログは残っていたため全部目を通していたが、やはり実際に見た方が感じ取れることは多い。

 勝負は二戦目、三戦目だ。

 とりあえずこれ以上ここの広場で戦うことは無いだろうと、僕たちも移動しようとして……。


「あっ、やば……」


 キャラの操作をミスってテーブルに衝突、コップが落ちてパリンと割れる音を響かせた。


「うわっ!? ……びっくりしたー」


 リリィさんが僕以上に驚いている。


「ごめんなさい、リリィさんも移動しましょう」

「分かりましたけど……今の音むこうに聞こえてたりしませんかね?」

「大丈夫ですよ、広場から遠いですし気付かれるとは思えません」


 そうして僕たちはまた裏口から飲食店を出て――。










「今の音……」


 ジイクフリートこと私の耳が確かに捉えたのは、微かですがガラスの割れる音でした。

 一緒に銃声はしなかったため窓ガラスでは無いでしょう。この広場の付近で条件を満たすオブジェクトは……飲食店のコップくらいですか。


「………………」


 飲食店はこの広場の絶好の狙撃ポイント。

 当然時折注意していましたが窓を開けて銃を構える様子もなかったため誰もいないと判断していました。

 しかし窓を開けてなかったとしたら……そこまでは考えてませんでしたね。

 広場を一望出来るポイント……ずっと潜んで……行えるのは観察……誰が……この戦いを求める交流戦において他の目的を持つ存在は……。




「さーて勝利後のお楽しみ、漁りタイム!! EXウェポン使ってた人確かいたはずだけど、どこらへんかなー」

「アカネ様、すぐに装備を整えてください」

「えー! 何よ爺。アカネのお楽しみの時間を邪魔――」

「まだネズミがおります。それもとびきりの大物です」

「……へえ。うん、分かった。そっちの方が楽しそうね♪」


 私とアカネ様は体力の回復、新しいアーマーの着替え、最低限の弾薬だけ拾うと飲食店の方へと向かいました。


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