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17話 アカネのSSS爆勝ch


 ジイクフリートさんのことを検索して辿り着いた動画チャンネル『アカネのSSS爆勝ch』。

 いきなり表示された小学校高学年くらいの勝ち気な童女に「あれ間違ったか?」と思ったが、その後ろにジイクさんがいるところを見ると正しいようだ。


「ってことは……こいつが相方ってことか?」

 ジイクさんが普段は相方とSSSをプレイしていると言っていた。僕とリリィさんと同じような関係ということだろう。

 老齢の爺と童女の組み合わせは絵になるもので見ていてこうホッコリと――。




『死ね、死ね、死ねーーっ!』

『ざーこ、ざーこ!』

『アカネ様に勝とうなんて百年早いのよ!』




「……いや、癖が強いわ」


 ホッコリしかけた気持ちが吹き飛ぶ。

 再生され放しのチャンネルの紹介動画が切り抜きワンシーンの詰め合わせを映し始めるが、童女、アカネは暴言がデフォのようだ。


 FPSはどうしてもプレイヤーの感情を高ぶらせ晒け出させる側面があるとは思うが、それにしても攻撃的だ。

 しかし視聴者からはそれが求められているようで『頂きました、雑魚!』『俺も罵ってー!』『踏まれたいでござる』など訓練されたオタクのコメントが並んでいる。ビジュアルも含めてメスガキというジャンル、芸風でやっているようだ。




「これで弱かったら顰蹙物だが……」

 ビッグマウスは強者だから……いや、強者でも度が過ぎれば許されないが、とりあえず弱者には絶対に許されないものだ。

 紹介動画には実際のプレイ画面はそんな映っていなかったので、とりあえず一番再生数の多い『神回! コンビで30キル!』というタイトルの動画をタップする。




 再生された動画はアカネ、ジイクさん、野良二人のチーム構成で飛行船から開幕即降り、激戦区と呼ばれる多くのプレイヤーが集まる場所に向かう。


『はい、アカネの勝ちー!』


 アカネはすぐに武器を拾い、同じように降り立った敵を即殺、その勢いを止めることなくまた別の敵に突っ込んでいく。味方も同じように戦っていたようで、まずは一チームを壊滅に追い込む。

 しかし激戦区の恐ろしさはここからだ。何せ辺りにたくさんの敵がいるため、銃声を聞きつけた敵が戦いを経て弱った獲物を求めにやってくる。漁夫行為の連鎖、スパイラルに陥っていく。




『ふん、上等よ! 雑魚ども、来なさい!』


 だがアカネは倒した敵の棺桶から弾薬だけさっと奪うと、再度敵に突っかけていく。

 小学生女子、ただ闇雲に突っ込んでたまたま上手く行っているだけ……だと最初は侮った目で見ていたが、しばらくする内にそうでもないことに気付く。


「結構考えられた突撃だな……」


 一直線に向かうのではなく左右に揺れてエイムずらし、物陰に隠れてリロードの瞬間に詰める、敵に囲まれないようにルートを選ぶ。

 闇雲に動いているように見えて、詰めるための技術が身に付いている。

 節穴だったのは自分の方だ。そもそもFPSの世界ではプロ顔負けの小学生プレイヤーなども存在する。若い方が反射神経はいいし、学習能力も高い。




 アカネはもう一部隊を壊滅させて次の部隊に攻め入るが……いかんせん先走りすぎたか敵の四人に囲まれる。

 万事休すか――否。


「これは釣りか」


 アカネの意図が読めた。


 ちなみにだがアカネが操るキャラは『巫女』だ。巫女装束なんてすごい動きにくそうだが、まあそこはゲームなのでツッコむのも野暮だろう。

 そのビジュアルからキャラ人気も高く、ちょうどジイクさんが操る『祈祷師』と何か仲がいいという設定があるらしく、よくSNSで二人が描かれた二次創作が流れてきたりする。


 そしてキャラの性能を決めるスキルもかなり強い。

 スキル『焔化』。

 『巫女』が念じるとその姿が狐火となり実体が消えて、その間一切の攻撃が食らわなくなり、一定時間するとまた元の姿に戻るというものだ。


 攻撃を食らわないなんてチート過ぎるじゃないかと思うが一応欠点も何個かあって、まずスキル発動すると念じるポーズを取るがそこから炎になるまで少しかかりその間は無防備で撃たれ放題であるということ。

 炎になっている間は実体がないから銃を使うこともアイテムを使うことも出来ず移動しか出来ないということ。

 炎から元に戻るときもまた念じるポーズで解除されるからそこでもまた隙を晒すということだ。


 だがこれらの欠点を補っても余りある性能をしている。


 主な使い方としては今まさにアカネが実践している。

 敵に単身突っ込み大きく損害を与えて、でも囲まれて殺されるという直前に『焔化』を発動、無敵のまま移動して敵の囲みを抜け味方の所まで戻る。


『はいざんねーん! 当たりませーん!』


 敵の銃弾を炎になってやり過ごしたアカネは画面に向かって煽り立てる。


『アカネ様、ナイスです』


 そしてアカネの突撃、取り囲もうとして乱れた敵の陣形をジイクさんが見逃すはずもなくスナイパーライフルで次々とダウンを取っていく。




「この二人……完璧な前衛と後衛だな」


 技能『特攻前衛』のアカネと技能『戦場把握』のジイクさん。

 二人ともそれぞれ技術が高い上に阿吽の呼吸で連携をこなす。今だって何の打ち合わせもせずのプレイだった。


「これは強いな……」


 結局漁夫に来た敵をアカネとジイクさんは全てはねのける。その調子付いた勢いのまま他の場所でもキルを量産、そのままスターを獲得するのだった。




「いやあ面白かった……他の動画も見てみるか」


 上手い人のプレイ動画はやはり見ていて面白い。

 最初見た動画が神回と銘打たれていたから、他の動画はそうでもないのかと思ったが、そこでもしっかりとプレイしている。


 見入るように動画にかぶりつきながら気になった点が二つ。


 一つはアカネとジイクさんの素性だ。

 二人の関係は単純に祖父、孫の関係なんだろうか。SSSはあの口振りだとアカネの方からジイクさんを誘ったのだろうが、何故小学生女子のアカネがFPSゲームであるSSSをやり始めたのか。ジイクさん自体もあのような相談チャンネルを持っていたり謎が多そうだ。

 動画ではあまりそういう話題を出さず、視聴者から質問があってもスルーしていた。




 そしてもう一つは現在時刻についてだ。


「流石にそろそろ寝ないとヤバいよな」


 画面右上には深夜3時の表示。スマホを持って布団に入ってもう2時間は経っている。

 明日……ではなく今日は平日で普通に学校もある。今から寝ても3~4時間くらいしか寝れないが、それだけでも眠るべきだ。

 そう、分かってはいる、分かってはいるのに。




「………………」


 結局僕はその後も動画を見続けて4時半ごろに寝落ちした。連続で仕掛けておいた目覚ましで何とか起きて登校はしたが、当然ボロボロで一日中死にそうだった。


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