表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/97

16話 ジイクフリート


「やった!!」


 リリィさんが快哉を上げる。


 マッチに勝利してスターを獲得する。

 25分の1の栄誉はやはり嬉しいものだ。

 僕だってそんな毎回毎回スターを取れるわけではない。それどころか十数回マッチを行ったのに一回もスターを取れないことなんてざらにある。


 だが今回、嬉しさよりも先行した感情があった。




「ジイクさん、僕が間違って設置した罠の場所覚えていたんですね」


 『ジイクフリート』なる今回たまたま一緒になった野良プレイヤーへの興味だ。


「ふぉっ、ふぉっ。スキルの使用は味方でも感知できますからな」


 ジイクさんはこともなげに言うが、あのときはリリィさんにSSSの設定を語っていてこちらの方が見ていなかったはずなのに。

 それにただ場所を覚えていただけでなく、あの最終収縮の始まった切羽詰まった場面で活かすための立ち回りまで指示できるレベルとなると。


「かなりSSSをやり込んでるんですね」

「今日は1人で潜っていましたが、いつもは相方がおりましてな。その方に熱心に誘われた結果、慣れないFPSに手を出してみたのですが……いやはやこれがやってみると楽しいものですな。電子の戦場も侮れないと考えを改めた次第であります」


 相方……僕とリリィさんみたいに、普段は誰かと組んでプレイしているというだろうか?




「それにしても最後はすまなかったですな、オーダーは任せると言ったのにこちらから指示を出すなど、出しゃばった真似を致しました」

「いえ僕も罠の位置を覚えてませんでしたしナイスです」

「マモル様も三部隊の囲みを崩すオーダーはまさに面目躍如でしたな。同士討ちを誘うためだけに、貴重な手榴弾を使うなど中々出来ません」

「……気になっていたんですけど、ジイクさん僕のこと以前から知っていたりしますか?」


 面目躍如。僕が評判通りの動きをしたという意味で言っているなら、僕の評判をジイクさんは知っているということになる。




「そんなことありませぬ。第一、私とマモル様は初対面でしょう」

「…………」


 ジイクさんの声音から真偽は読みとれない。


「しかしこうして出会ったのも何かの縁、フレンドになってもらってもよろしいでしょうか」

「ええ、それならば是非」

「あ、私もいいですか!」

「もちろんでございます。いやはや何とも楽しいひとときでした。また機会があればよろしくお願いします」


 ジイクさんはそう言うとマッチを抜けていった。同時に同じチームということで繋がっていたVCボイスチャットも切断される。




「SSSの設定の話も面白かったですし、スナイパーでバンバン倒してすごかったですし、一戦目から濃い人と当たりましたね」

「三人になったのにスターも取れましたし順調な出だしですね」

「『ジイクフリート』さん……うーんやっぱりどこかで聞いた名前な気もするんですけど」

「そうなんですか。まあ有名でもおかしくないプレイヤーだとは思いますけど……」


 僕たちは雑談しながらも、既に二戦目の飛行船に乗り込んでいる。

 リリィさんと二人でSSSをやるときは時間が許す限り目一杯にプレイする。気になるといいながらも次第に意識は次の試合の方に移っている。もう完全にSSS中毒者だ。




 結局その日はそれから七回マッチに潜って、もう一回だけスターを獲得することが出来た。




 時刻は夜中1時過ぎ。

 明日も平日で学校があるからそろそろ寝る、ということでSSSからはログアウトしてリリィさんとは別れた。

 そして早速、布団に入ったが……中々寝付けない。


「そろそろ寝るはROM専になるという意味って、確かにその通りだよなー……」


 この前バズってた投稿を思い返しながら、僕はスマホをスイスイ操作している。そうしているからますます眠れなくなるのだと分かっているが止められない。




「あ、そういえば」


 ネットの海を漂っていても特に気になるものが見つからなかったところでふと思い出した。

 今日の一戦目、ジイクフリートなるプレイヤーのことをだ。


 あれから結構マッチしたが、あれ以上に濃いプレイヤーと一緒になることはなかった。というかそれ以前にVCボイスチャットが繋がるプレイヤーがいなかった。


「リリィさんがどこかで名前を見た覚えがあるって言ってたな」


 どこで見たのか気になる……というときは。




「検索だな」


 気になったまま放置する必要はない。ネットで検索すれば大体の情報が手に入る時代だ。

 僕は『ジイクフリート』と打ち込んで検索をかける。 

 案の定というか、最初に目に飛び込んできたのは『「ジークフリート」の検索結果を表示しています』だった。


「まあ神話に出てくる英雄、ジークフリートをもじった名前なんだろうけど……」


 改めてジイクフリートの検索結果を表示するようにすると、一番トップに表示されたのは動画サイトのチャンネルだった。




「『ジイクフリートのお悩み相談チャンネル』……?」


 首をかしげながらタップするとチャンネルトップ画面に移る。かなりのチャンネル登録者がいて人気のようだ。

 相談内容も学生の勉強・進路の相談から、主婦による夫の浮気相談、就職や転職から、株についてとものすごい多岐に渡っている。

 ちょっとずつ覗いてみたがすごい真摯に答えているし内容もしっかりしている。何より自分でも体験したが、あの語り口によってすごい聞きやすい。


「人気になるのも分かるな……あれ、でもSSSのプレイ動画とかは無いのか?」


 チャンネルを隅々まで見てもゲーム画面は一つも出てこない。

 あれだけSSSが上手くて配信者なら実況していてもおかしくないと思ったのに。




「本チャンネルはこちら……って、これサブチャンネルなのか?」

 隅々までチャンネルを見回して、ようやくその表記を見つけた。


 色んなジャンルの動画を投稿する際、客層が被らない場合などメインチャンネルとサブチャンネルで投稿するジャンルを分けるのは聞く話だ。

 つまりこっちはお悩み相談で、本チャンネルの方でSSSを実況してるんだろう。




 そこで本チャンネルのリンクを踏んでみると飛んだ先の内容を確認する前に、チャンネル紹介動画が勝手に再生される。

 そこに映っていたのは。




「『アカネのSSS爆勝動画』! 見なさいよね!!」




「……誰だこいつ?」


 小学校高学年くらいの勝ち気な童女がこちらをビシッと指さして決め、その後ろにジイクさんが柔和な笑みを浮かべて見守っているのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ