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14話 SSSの設定


「え、えっとよろしくお願いします、ジイクさん。あ、僕は『マモル』です」

「私は『リリィ』っていいます、よろしくお願いします!」


 自己紹介をしてきた『ジイクフリート』さんに、守こと僕とリリィさんは返事する。

 いきなり話しかけられた形だったが、チームのVCボイスチャットで会話していた以上この事態は想定してしかるべきだったし、何より雰囲気からして悪い人だとは思えなかった。一時的とはいえ共に戦う仲間なのだ、邪険に扱う意味もない。




「(それにしても珍しいな……)」


 FPSであるSSSにおいて高校生女子であるリリィさんも珍しい存在だけど、年配のジイクさんはそれ以上に珍しいかもしれない。

 FPSではどうしても咄嗟の判断だったりが重要なため反射神経が物を言う。

 そしてこの反射神経は歳を取るごとに衰えていくため、強いプレイヤーのほとんどが若者だ。

 最近では年配の方がゲームをするのも珍しくないとはいえ、それでもプレイするジャンルは反射神経をそれほど必要としないものだと思う。

 少なくとも僕はこのような年配のSSSプレイヤーとは初めての遭遇だった。




「あ、ところでさっき言ってた、『祈祷師』がスターの力を感知している……ってどういうことなんですか? 私気になってたんですけど」


 初対面の相手にもリリィさんが臆さず質問する。

 そういえばそんなこと言って、僕たちの会話に入ってきていたか。


「そうですな、語ってもよろしいですがSSSの設定から話さないといけないので少々長くなります。今はマッチ中ですので先にやることをやらねば」

「あ、そうですね」

「ということで私も指揮下に入ります、マモル様今後の方針を伺ってもよろしいでしょうか?」

 ジイクさんがこちらに話を振ってくる。


「様って……まあいいですけど。とりあえずメンバーが1人欠けて3人になったので積極的に動くことは難しいと思います。

 でも物資は十分に揃ってますし、安置も次の次の収縮まで分かるおかげでどのあたりに陣取れば強いか予想も容易いです。

 とりあえずもう少し北の『湿地帯』の高台を抑えておけば大丈夫でしょう」


「了解です!」

「そうですな、では移動とまいりましょう」


 僕のオーダーに2人も賛同したので移動を開始する。

 1人欠けたときはスター獲得は難しいかと思ったが、ジイクさんともVCボイスチャットで連携が取れるのは大きい。まあその実力は未知数だけど……とりあえず祈祷師のスキル『星の祈祷』のおかげでもう十分に役に立っている。


「………………」

 ただちょっと気になったとすればジイクさんの言い回しだ。指揮下に入ると言った後、迷い無く僕に指示を仰いだ。

 これまでのVCボイスチャットからリリィさんが指示しているとは思ってなかっただけかもしれないけど……もしかしたら僕がオーダーだと知っているのではないだろうか。

 うーん…………まあでも、考え過ぎか。




「到着!」

「ふぉっ、ふぉっ。これはいいポジションですな」

「二人はそのまま高台に待機していてください、僕は罠設置を済ませてくるので」


 『湿地帯』はその名前の通り辺り一帯がぬかるんでおり、足を踏み入れるとダッシュが出来なくなる。高台はその沼地の中心に位置しており、辺り一帯に撃ち下ろすことが出来る。足を取られ接近することもままならないため、この場所で戦闘が起きた場合は高台を制した者がほとんど勝つ。

 それでもワンチャンを通すなら、島のように点在する陸地を渡りながら接近するしかないが、僕はその内の重要そうなポイントにあらかじめ『罠師』のスキルで罠をセットする。


 罠は目立つし、破壊出来るし、設置に時間がかかるし、と三重苦を備えているが、ただ罠は時間経過では消えないという利点がある。

 そのため戦闘が起きるであろう地点を予測出来るなら先にセットしておける。見られても侵入を阻止する力は消えないし、破壊するにも足を止めないといけないため、とりあえず置き得だ。

 一度スキルを使うとインターバルを挟まないといけないため、作業自体はのんびりと行っている。幸いにも周囲に敵が近づくような音はしていないし。

 高台にいる二人もその間にSSSの設定話に花を咲かせているようだった。




「そもそもリリィ様はスターとは何か知っておられますか?」

「一位になったときの称号みたいなものじゃないんですか?」

「ゲーム的にはそうでございますな。しかしSSS世界ではスターとは星のコア、エネルギー体なのでございます」

「コア……」

「私たちプレイヤーはそのスターを回収するために、それぞれ別次元から星に送られた傭兵なのです」

「えっ、別次元ですか」

「でもなければ敵にも味方にも同じ鳥使いがいるのはおかしいでしょう」

「なるほど、言われてみれば」




「傭兵に課せられたのは消滅寸前のスターの回収。ステージのスターはマッチ開始時点で限界を迎えようとしています。スターの力が及ばない範囲で生物は生存することが許されません」

「生存が許されない……あっ、だから安全地帯の外ではダメージが受けるってことですか!?」

「ええ、バトルロイヤルのゲームにありがちなシステムにSSSではそのような設定を書いているようです。そのため最終安全地帯の中央、地中奥深くにスターは埋まっております。

 ただその回収作業には時間がかかり、別次元の敵がいては回収作業を邪魔されるので、まず排除しようと戦い合うわけであります。この行程が実際のゲームシーンになりますな。

 それで最後まで残った部隊がスターを回収するというわけです。ゲームではその描写はありませんが、ゲーム発売前のイメージトレーラーでは実際に回収作業に勤しむキャラたちの姿が描写されております」

「イメージトレーラーか……今度チェックしとかないと」

「前置きが長くなりましたな。それで祈祷師が安全地帯を把握できる理由は、祈祷により地中に埋まっているスターの力を感知して割り出しているというわけです」

「あっ、そう繋がるのか」




 リリィさんが納得する声を上げて。


「へえ……そんな設定あったんだ」


 僕も同じ感想だった。

 設定とかよく知らなかったから、ただ銃を撃ち合う、戦い合うゲームだと思っていた。


「キャラそれぞれにも傭兵になった理由が描かれていて、例えばリリィ様が使っている鳥使いでいうと……」

「え、気になります!」


 ジイクさんはそのまま他の設定話も披露していく。

 僕も罠設置の作業をしながらその話に聞き入っていた。単純に話自体に興味もあったのだが、ジイクさんの語り口がまた絶妙で人の気を引くのだ。


 そうやって気もそぞろなまま作業していたのが良くなかったのか。




「あっ、やべ……」


 ぬかるみを突っ切って次の設置ポイントに移動しようとしていたところで、誤ってスキル使用ボタンを押してしまった。

 罠師のおっさんがぬかるんだ地面に屈み、罠を設置した後汗を拭うモーションを取ったところで気付いたため中止することも出来なかった。

 罠自体はぬかるんだ場所でも問題なく作用するが、そもそも敵がこんな場所に踏み入れると思えないので無駄になるだろう。


 ミスったな……想定していた最後のポイントに設置するためインターバルが終わるまで待つか? いや、でもジイクさんの話を聞く内に安全地帯の収縮がもう二回起こっている。狭まった範囲によって、敵がそろそろ付近まで来ていておかしくない。接敵したときに高台にいなければ何のためにここまで準備してきたのか分からないことになる。

 どうやら予想通りこの湿地帯が最終安全地帯の範囲になりそうだし、高台に陣取ればそうそう負けることはないだろう。


 僕はそう判断して、二人が展開する高台に向かうのだった。


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