11話 『銀鷲』崩壊 ~序曲~
Star Struggle Shooting
略してSSS、覇権的人気を誇るFPSだ。
その基本ルールは4人1組によるバトルロワイヤルルールである。
数多のプロチームやアマチュアチームが存在する中の一つ。
チーム『銀鷲』について――消極性オーダーのマモルを追放したその後を語ろう。
「へへっ、お荷物オーダーを切って初めての配信。ここから真の『銀鷲』による成り上がりストーリーが始まるってわけだ!」
『銀鷲』リーダーにしてメインアタッカーのギルバート。
「気合いを入れていきましょうね!」
サブアタッカーのアランナ。
「もちろんです」
スナイパーのレーヤ。
「あ、足を引っ張らないように頑張ります!」
そして新加入の積極性オーダー、フランツ。
4人はこれから生配信でSSSをプレイする前に、チームのVCルームで集まって確認を取っているところだった。
「(新オーダーのフランツ……こいつの配信は見たことがあるが、その力は本物だ)」
ギルバートは考える。
「(雑魚オーダーを追放して、本物の力を持つ者だけが残った『銀鷲』。そこに加われば鬼に金棒、スターを量産して当然だ。だからこそその次について考えなければいけねえ)」
SSSにおいてマッチで一位になることはスターを取ると表現される。
「(オレの女であるアランナとレーヤ。そして他のファン共。まあ万が一にもあるまいが、やつらがフランツに流れることがないように、そして俺以上に目立たないようにきちんと上下関係ってのを教え込まなければならないな)」
女は全て自分の物、他の男は全て自分の引き立て役。
自己中心的な考えの権化であるギルバートにとって、極めて自然な考えからフランツにマウントを取り始める。
「フランツ、せいぜいメインアタッカーのオレを引き立てるために頑張るんだな」
「は、はい! 分かりました!」
「(チーム『銀鷲』……チャンネル登録者も増え始めて、プロチームにこそ到底追いつかない物の、アマチュアチームの中では有名になってきたチーム。そんなところに自分が入れるなんて)」
チーム新加入のオーダー、フランツ。
彼はもともとSSSにおいてソロ配信を行っていた。
野良メンバーを導いてスターを量産する実力こそあるものの、トークの方はあまり上手くなく配信の方は人が伸びない状況だった。
そうやって燻っているところに今回『銀鷲』からスカウトがあり快諾した次第である。
「(配信自体は見たことがないけど、これだけ有名なんだし3人とも強いはず。まあ少なくとも野良を率いていた頃より苦労することは無いよね)」
暇があればゲームをしながら配信していたため、フランツは他のプレイヤーの配信を見たことがなかった。
『配信前に連携の練習とかしないの?』というフランツの提案にも『そんなものオレたちには必要ねえって』とギルバートが断ったため、チームが新体制となってから一度も一緒にプレイしたことがなかった。
そのためフランツは3人の本当の実力を知らないまま、生配信に挑もうとしている。
「(もっともっとギルバートに気に入られるようにしないと……少なくとも根暗のレーヤよりかはポイントを稼いでるはず)」
「(ギルバート、かっこいい、好き。……頭空っぽのアランナになんか渡さない)」
残り二人のメンバー、アランナとレーヤは共に女性でギルバートに心酔していた。
彼女らにとってギルバートが絶対であり、お互いは邪魔なライバルで、ギルバートが必要ないと言ったからマモルの追放にも賛成したし、新加入のフランツには現状せいぜいギルバートの役に立ちなさいよというくらいの認識である。
こうして表面上こそ穏やかだったが、裏ではチームワークなんてものが欠片も存在しないギスギスな状況で生配信は始まった。
「どうも! 『銀鷲』リーダーギルバートです!」
挨拶からオープニングトークに移るギルバート。
マモルを追放するときに粗野な言葉を使っていたが、今はその片鱗も見せない好青年っぷりだ。それを気にするくらいの外面の良さはあった。
「じゃあそろそろ今日の本題、みんなも気にしている新メンバーの発表といこうか」
今日の配信のタイトルは『緊急発表! 『銀鷲』に新メンバー加入!?』と打たれていた。
そのためギルバートの発言に『ついに来たか!』『待ってました!』と視聴者からコメントされる。
「フランツです! この度『銀鷲』に所属することになりました! よろしくお願いします!」
フランツの声だけが配信に流れる。『銀鷲』の配信はギルバートのゲーム画面に、ギルバートだけが顔出しして他の三人は声だけが流れる。全部ギルバートが目立つために出来ている。
さてフランツ加入という情報が明かされてコメントは『あのフランツが!?』と『フランツって誰?』の二つが九割を占めていた。
残り一割は『えっ? じゃあ誰が抜けたの?』である。
ギルバートはひとしきりフランツの紹介をしたり、コメントを拾った後にその残り一割に触れた。
「ああ、そうそう。言ってなかったね。今回の新メンバーは一人だ。アランナとレーヤはそのまま続投ってことになるね」
「アランナでーす!」
「レーヤ、よろしく」
話を振られた二人が挨拶する。
「だから抜けたのはマモルってことになるね。急だったんだけど、彼から一身上の都合でチームを辞めるって話があってね。オレも引き留めたんだけど決意は強く見送るしかなかったんだ」
真相は自分たちが追放したのだが、それをそのまま話すほどマヌケではなかった。
案の定ギルバートの言葉に騙されて『マモル、勝手過ぎるだろ!』などのコメントも流れる。
「だからこうしてオレが穴埋めのためのメンバーを探してね……まあまあ、あまり彼を責めないであげてくれ」
どんな状況も自分のために。ギルバートはマモルをダシにして自分が器が深いとアピールをしていく。
――しかし上機嫌のギルバートは気付いていなかった。
そのとき視聴者数が数十人ガサッと減ったことに。
『銀鷲』の配信を見に来るメイン層はギルバート目当てだったが、少ないながらもアランナとレーヤのファンというものもいた。
そしてさらに少ない層としてマモル目当てという視聴者もいたのである。
目立たないながらも、マモルの特異的な立ち回りを勉強するために配信を見ていたSSSプレイヤーたち。
今回の新メンバーも明らかに足を引っ張っているアランナかレーヤ、もしくはあり得ないとは思っていたが一番の下手くそであるギルバート自身が変わって、チームが強化されるのではないかと配信を見守っていた。
だが結果は薄々分かっていたがマモルの交代であった。
マモルをメインに見ている層からすれば、ギルバートがどれだけ体裁よく振る舞っていても、マモルを疎んでいることを日頃から察していた。
チームを辞めた理由もギルバートの綺麗事はどうせ嘘で、本当に嫌気が指したか追放されたかどちらかだろうと半分見抜いている。
何にしろマモルがいなくなった『銀鷲』に興味はなく、配信を見るのを止めたというのが視聴者数が減った理由である。
自分を讃えるコメントに気を良くしたギルバートはテンション高く進める。
「よしじゃあこのまま行くか! 新生『銀鷲』による初のマッチへ!!」
SSSのマッチ待機画面にチームメンバーの4人が集まり、そのままマッチが開始。
飛行船から多くのプレイヤーが降りる、いわゆる激戦区に『銀鷲』も身を投じていく。
こうして始まった新生『銀鷲』の初戦。
その結果は――意外なことに一位、スターを獲得することに成功した。
「ははっ、これがオレたちの実力だ!!」
単身による一部隊4人のキルを含んだ、合計10キルを成し遂げたギルバート。
「流石です!」
「ナイス」
ギルバートをフォローしながら、アランナとレーヤもそれぞれ5、6キルしている。
「上手く行きましたね!」
フランツは12キルとギルバートより多くキルを取っていたが、別にそれを誇る性格でも無かったし、純粋にチームの初陣を勝利で飾れてホッとしている。
さて、ここで疑問に思うだろう。
どうして新生『銀鷲』が勝つことが出来たのか?
それはひとえに運が良かったから、という他無いだろう。
運が良いことに、最初降下した地点に落ちていたEXウェポンに高級アーマーにより、他の装備が貧弱な部隊を圧殺。
運が良いことに、正面衝突する部隊は弱く、強い部隊とはちょうど一戦を終えて満身創痍のところに仕掛けることが出来て。
運が良いことに、安全地帯は常に自分たちが有利な方向に収縮していき。
運が良いことに、自分たちは複数に囲まれることはなく、囲む側としてキルを量産していく。
滅多にないことだが、何も考えずに突撃しているだけでマッチが決まるということも起こり得るのが、バトルロワイヤルルールだ。
それを初戦で引き当てた新生『銀鷲』は幸運だったか……もしくは不運だったか。
ともかくこの一戦により、ギルバートとそのファンたちは『これが実力だ!』と思うようになった。
「(ここからオレは駆け上がっていくぜ!)」
ギルバートには自分がSSSプレイヤーとしてメインストリームを駆け上がっていく道筋さえ見えていた。
しかしそれは幻想でしか無く、ここが頂点で後は転げ落ちていくだけだと彼はまだ知らない。
次から視点を戻して新展開です。
ブクマや評価、感想をもらえるとモチベーションが上がります。どうかよろしくお願いします。




