時空の歪みから生まれた駅。
___私は、はじめて乗った電車で知らない駅に着いた。
その駅名は、『無限魔道』駅という。
こんな名前の駅名は聞いた事もないし、見た事もない!
___その日、私は深夜遅くまで会社で一人残業をしていた。
どうしても、明日の朝までに仕上げておかないといけなかったからだ。
明後日には、この企画を持ってプレゼンをする予定。
私の考えた企画が、他社で通用するかの勝負に私はワクワクしていた。
必ず、私の企画を通して見せる!
___私は、疲れた体にムチをうち、フラフラになりながら
やっと仕上げた企画を手に。
私は、ギリギリ走って間に合った終電の電車に飛び乗った。
電車の中は、私以外誰も乗っていなかった。
1両隣の車両には、1人だけスーツ姿のサラリーマンが
誰も居ない席のど真ん中で羽目を外し横になって眠っていた。
私も一番端の席に座り、そのまま眠りについてしまった。
___どれぐらい眠っていたのか?
見慣れない服を着た駅員が、私の肩をたたいた。
『___お客さん、着きましたよ。起きてください!』
『・・・・・・あぁ、はい、』
___私と同じように、駅員に無理矢理起こされて何人か?
私と同じように、この見知らぬ駅に降りた人たちがいた。
『・・・無限魔道駅って? ココ何処だよ!? 知らない駅だぞ!』
『・・・眠ってたから? 駅員に無理矢理起こされて降りたけど?
これ? やばくないか!?』
『・・・今! 何時かわかりますか?』
『・・・1時40分です。』
『___なんでこんな事になってんだ!?』
『家に帰りてーよ!』
『・・・・・・俺もだ、』
___私以外にいたのは?
電車で見た、若い20代前半ぐらいのスーツ姿の男性とジーパンと
アロハシャツを着た50過ぎの冴えない中年男性、ド派手な服を着
た厚化粧の40代後半の女性だった。
私を含めて、たった4人。
他のお客さんは、自分の降りたい駅でそれまでに降りたのかもしれない。
『___取り合えず、タクシーでも探しましょう!』
『・・・でも、周り一面何もないぞ! こんなところにタクシーなんか
本当に通るのか?』
『・・・・・・』
『___でも? 何もしないよりはマシよ!』
『___うーん? そうだな、それともずっとここにいるのか?』
『・・・・・・』
___時間は、既にAM2時を回っていた。
私たち4人は、取り合えずタクシーが止まっていそうな所まで
改札駅を出て、探すことにしたの。
・・・駅といっても?
無人駅で、本当に何もないところ。
周りには、お店も家も建物も一切ない場所だった。
___私たちは、人が居そうな道に出るのに必死だった。
荒れ放題の雑草の中を4人で手でかき分けながら歩いていると?
一番後ろにいたサラリーマンの男性が何かに気づいて私たちに
こう言ったわ。
『・・・や、ヤバいぞ! 何かいる!? 俺たち、生きて帰れない
かもしれない! うめき声だ! 人間じゃない! 獣のような声が
俺の後から凄い勢いでこっちに向かってきてるんだよ! 俺が合図
したら? みんな一気に走れ! 後ろを振り向くなよ! いいな!』
『・・・で、でも? そいつは、何者なんだ!?』
『そんなの俺が知るか、オッサン! いいから、無心で走れ!』
『・・・せーのっ! みんな走れー! 後ろを振り向くなよ!!!』
【ギャシャン!】
【ギャーーーーーーーアアアアアア!!!】
後ろから、厚化粧の40代の女性の叫び声が聞こえた。
でも? 女性の声は直ぐに、獣の声にかき消される。
『・・・後ろを振り向くな! 走り続けろ!』
【わあああああああーーーーーーー!!!】
【ドスン!】
今度は、オッサンが狙われたらしい。
斧のような大きな刃物を振りかざしていたところをチラッと
見て、俺は恐怖と寒気を感じた。
*
___私は、目を瞑って後ろを振り向くことなく走り続けたわ!
その間に、アロハシャツの中年男性とド派手な服を着た厚化粧の
40代の女性の叫び声が聞こえたけど? 私は、振り向くことも
出来なかった。
やっと、雑草の中を抜けだし道に出たわ!
その時には、私とスーツ姿の男性しかいなかったの。
【ハァーハァーハァー】
『___大丈夫ですか?』
『・・・私は、』
『・・・俺もです、』
『___二人は?』
『アイツに、やられたんでしょう!』
『“アイツ?”』
『・・・実は? 見たんです! 獣のような怪物があのオッサンと
おばさんを襲って喰っていたところを、俺はそれを見て直ぐに走り
続けました立ち止まることなく! 立ち止まったら? 今度は俺が
喰われると思ったからです。』
『・・・・・・』
『___でも、ここまで来たら? もう大丈夫ですよ!』
『“その怪物は? 一体何者で? ココは、何処なんですか?”』
『今のところは、全く手掛かりがないんです! ただ、俺たちが居た
場所ではないという事! 違う世界に来てしまったのかもしれません!』
『“パラレルワールドみたいな所という事ですか?”』
『・・・・・・あぁ、ははい!』
『早く! 元の世界に戻らないと?』
『そうですね! 早く、元の世界へ戻りましょう! それには、先ず
人を探さないと? 誰かに聞けば、元の世界に戻れる方法を知ってい
るかもしれない!』
『・・・・・・そうですね、誰か? 人を探しましょう!』
『・・・ははい!』
___俺と若い女性は?
ここで、人を探すことにした。誰か助けてくれるかもしれない。
そもそも、あの獣は? なんなんだ!?
人を喰う獣って?
なんで、俺たちはこんなところに来てしまったんだ!?
___俺はそんな事を考えながら、ふと女性を見ると?
身体が震えて、今にも泣き出しそうな表情をグッと堪えていた。
___俺だって!
泣きたいぐらい怖い!
それを、あんなか弱い女性が我慢しているかと思うと。
俺は、彼女を連れて必ず元の世界に戻らないといけないと強く
心に決めたんだ!
___俺は、彼女にカッコつけたくて。
咄嗟に、こう言った。
『___少しだけ、ココで待っててくれる? 俺が1人で誰かいるか?
探してくるから! 何処にもいかないで、ココで待っててほしいんだ!』
『・・・ううん、分かった。』
『___じゃあ、俺行ってくるよ!』
『___うん。』
___彼女を置いて、俺は誰かいないか探しに行ったんだ。
・・・30分後。
『___ごめんね、探してきたよ! これで! 元の世界に返れる
んだ! この人も、俺たちみたいに元の世界からココに来たらしい
んだよ! 3人で帰ろう!』
『・・・・・・』
『___うん? どうしたの? 先から下を向いているけど?
何かあった! ねえ、どうしたんだよ!』
___彼女が下を向いた顔を上げると?
血まみれで、獣にでも噛みつかれたような跡まで残っていた。
そして、変な奇声を上げると?
【シューシャー・シューシャー】
___そして、僕が連れてきた男性が僕の耳元でこう言った。
『___彼女はもうダメだ! もう、人間じゃなくなっている!
このままだと? 僕たちも彼女に喰い殺されるぞ! 僕が合図を
するから、一緒に元の駅まで戻るんだ! せーの! 走れー!』
『わあああーーあああああ!!!』
【ウギャギャーーーーーーーアアア! グワワワワーーーーーーー!!!】
変な奇声をあげながら、彼女が俺たちを追って走ってきた。
俺も男性も、必死で降りた駅まで後ろを振り返らず。
無我夢中で走り続けたんだ。
・・・気が付くと?
男性は、俺と離れ離れになってしまったのか?
俺だけ、一人! 元の駅まで戻っていた!
___そこには?
俺たちが乗ってきた電車が止まっていて。
俺は、迷わずその電車に飛び乗った。
あの男性を待たずに、俺は1人電車に飛び乗ったんだ。
___何故なら?
電車越しに見える窓から、先の男性は?
彼女に喰い殺されているのを見たからだ!
まさか!? 彼女まで獣になるなんて!
無残にも、彼は彼女に貪るようにムシャムシャと食べられている。
___ふと?
彼女は、俺の視線に気づいて俺と目が合った。
電車は、既に走りはじめていて電車越しの窓から俺は彼女を見ていると?
彼女は、男性を食べながら、少し寂しそうな顔で泣いていた。
・・・もう、あそこに戻りたくない!
彼女の事も、あそこで起きた事も全て忘れよう。俺はそう決めたんだ!
そして、俺は安心したのか? 電車の中で深い眠りについてしまった。
*
___次に俺が目を覚ますと?
駅員が、俺の肩をたたいてこう言った。
『___お客さん、終点ですよ! 降りてください!』
俺は、眠い目を擦りながら電車から降りると...。
いつもの、俺が降りる駅だった。
『___あれは? 全て夢だったのかな?』
・・・俺は、そんな事を思いながら?
家に着いて、そのまま自分の部屋のベットで眠ってしまった。
*
___次の日の朝早く、俺の部屋のチャイムが鳴って目を覚ます。
『___はーい! どなたですか?』
『___お久しぶりですね、私の事! 覚えてますか?』
『・・・・・・』
俺は、声に詰まった。
何故なら? 彼女を最後に見たのは、男性を喰い殺している
所だったからだ! その彼女がどうして? ここに!?
俺も、彼女に喰い殺されるのか!?
あれは、、、夢なんかじゃなかったのか!?
俺の頭の中で、いろんな事が一気に蘇った。
俺は、一気に血の気が引いた気がした。
最後までお読みいただきありがとうございます。