表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】異世界から戻ったので、とりあえず復讐します~少年が大人になる通過儀礼~  作者: 高取和生@コミック1巻発売中
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/243

【第三部】 開始   六章  遺伝子と環境 11

11


恭介らが、白井の実家を訪れた頃、フリーライターの島内はセッコク島にいた。

瑠香を伴い、島の持ち主、畑野健次郎に会いに行ったのである。


「島内さんが、おじいちゃんと知り合いだったなんて、世間てホント狭いと思うわ」

「ははは、私もそう思うよ」


南国の空は高い。

健次郎の自宅の前で、二人は待っている。


ほどなくして、陽炎燃え立つ道の端に、健次郎の姿が現れた。


「お久しぶりです。畑野博士」

「よせやい。そう呼ばれていたのは、もう何十年も昔のことだ」


健次郎は二人を誘い、風通しの良い部屋へ案内した。


「君のレポートは読んだよ。都会では、ヘンな薬が流行っているようだな」

「一部の薬に、海人草かいにんそうが使われているそうです」

健次郎は一つ息を吐く。

「虫下しが必要なのか、若者たちは」


「私がここに来たのは、二十年前のこの島での火災の話を聞きたかったからです。あの、藤影薬品工場の」

「まあ、そんなことかとは思っていたがね」


セッコク島で藤影薬品が手掛けていたのは、この島で、当時簡単に入手できた、石斛せっこくを原料とする漢方薬と、島周辺の海域で採れる海藻を元にした、海人草であった。


「島内君。君の弟さんも、たしか、あの火事で」

「はい、重傷を負いました」


その後、島内の弟は、火災による外傷は治癒したのだが…


「弟が最期に残した言葉が、今も気になっています」


時計の針は、午後七時を指していた。それでも、この辺りは、夕暮れ前の明るさが残る。


「弟は『遺伝子は変性する』と何度もつぶやき、『悪魔の薬』と、絶叫したのです」


「エピジェネティクス、か」

健次郎が言った瞬間、遠くで雷鳴の音が聞こえた。


DNA内の遺伝子は、生まれてから死ぬまで、不変のものと考えられていた。

ところが近年、環境的な変化により、遺伝子も変化したり、特定の遺伝子を発現させたりすることが判明してきた。その変化を「エピジェネティクス」という。


「畑野博士は、日本における『エピジェネティクス』研究の第一人者であったと、私は弟から聞いています」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ