第4話 いざテミリオン
光の奔流を抜けると、そこは明るい緑の森の中だった。
頭がボーッとする。
えーと、何があったんだっけ?
ここは誰で俺はどこ?
逆だ、逆。
ふと、身体に違和感を覚えた。
なんというか、ひとまわり縮んだような?
それでいて、どことなく身体が軽くなったような?
いったい、俺の身体に何が起こったんだ?
そういえば、何やらあの女神が「代わりの肉体」とか何とか言っていた気が……。
「おーよしよし。無事に転移できたみたいですねー」
どこからともなく聞き覚えのある声がした。
声のした方を振り向けば、先ほどの抉れ貧乳女神ことラキシスが、ぷかぷかと浮かびながらこちらを見ていた。
え、なんでついて来てるのこの女神?
「まぁ、いわゆるチュートリアル役ってやつです。転生させた後は投げっぱなしな女神と違って、私は面倒見の良さを売りにしてますんで!」
女神に売りも買いもあるのか?
最近の女神事情はよく分からない。
「そんな話は置いといて! まずはようこそテミリオンへ! お体の調子はどうですか?」
ああ、それだよそれ。
なんか、自分の身体の調子がおかしいような気がするんだけど、何したの?
「さっきも言った通り、代わりの肉体を用意したんですよ。あのボロボロの身体を送り出すワケにはいかないですからねー。はい、手鏡どうぞ」
そう言って、ラキシスはおもむろに、俺に手鏡を渡してきた。
とりあえず覗き込んでみると、そこには何やら見覚えのある、16歳くらいの少年の姿が。
……というか、これ俺じゃん!
この少年、まさに16歳当時の俺じゃん!
なんで若いの!? 若いのなんで!?
「どうせ新しい肉体で動くなら、若い方がいいでしょー? 私としても、若い肉体の方が用意するコストが低くて済みますし、ウィンウィンの関係ですね!」
まあ確かに、若い身体が良いのは間違いない。
けど、要はコスト削減かこのヤロウ。ケチケチしやがってこのヤロウ。
「しかしご主人、元の肉体もわりと特徴の無い顔だったのに、若返ったらもっと特徴の無い顔になりましたねー。なんというか、根暗っぽい。高校時代は友達いなかったんじゃ……?」
何だとこのヤロウ。いたわ友達くらい。
と、その時だ。
近くの茂みから、何やらガサガサと音がした。
まさかモンスターとやらか、と思って身構えたが、そこに現れたのは10歳くらいの少女だった。
その女の子は、明るいオレンジ色の髪色だ。ふんわりロングヘアーに大きめのカチューシャが乗っかって、何とも可愛らしい印象を受ける。というか、かわいい。
「26歳の大人が……事案か?」と思われるかもしれないが、だって本当に可愛いんだよこの子。こんなん誰だって可愛いと思うに決まってますやん、っていうレベル。
と、女の子もこちらに気付いて、声をかけてきた。
「あれぇ? おじさん、こんにちわ!」
「お、おじさん……」
純粋無垢なその言葉が、ナイフのように突き刺さる。
うん。元の肉体の26歳の俺なら、おじさんで間違いなかった。
けど、現在16歳の肉体でおじさん呼ばわりは、辛い……。
「あっはっはっは! その若さでおじさんは辛いでしょうねー!」
「おばさんも、こんにちわ!」
「はぐぉ!?」
女神でも、天罰って下るんだな。
いや、そんなことより、だ。
この子はつまるところ、この異世界における第一村人だ。
この辺りの情報とか、近くに村があるか、とか、色々と聞かねばならない。
……ああでも、そこでショックを受けて死んでいる女神に聞いた方が早い可能性もあるな。チュートリアル役とか言ってたし。
だがその時だ。
女の子が出てきた茂みとは別の茂みから、何やら青い、プルプルとしたゼリーみたいな生き物が飛び出てきた。
「わっ、プルだ!?」
女の子が叫んだ。
『プル』と言えば確か、俺がテイマーロードとやらで使わないといけないモンスターだったな。なるほど、弱そう……。
というか、モンスターだよ! こっちは丸腰なのに!
え、どうすればいいの? 戦うか? 逃げるか? 謝って見逃してもらうか?
「お、ご主人、プルですよ! ちょうど良いじゃないですか! 大会用に育てるプルを、早速テイムしちゃいましょう!」
こちらの動揺なんぞ気にも留めず、チュートリアル女神がまくし立ててくる。
テイムしちゃいましょう、って言われても、あの、地球育ちの一般ピープルにどうしろと?
「大丈夫です! この世界に送る際に、あなたにテイマーの素質を植え付けておきました! やり方を教えますんで、サクッとテイムしちゃいましょう!」
こうして俺は、目の前のスライムと対峙する羽目になった。
テイマーの素質を植え付けている、と言っても、特別なにかが変わった感じはしないのだが、果たして上手くいくのだろうか……。
あとがきチップス
・ストーリー進行がゆっくりなので、さっそく書くことが無い件
まるでポテチの空き袋のように虚しい。