第2話 リア充、死す
俺の名前は緑谷 宗司。26歳の営業マン。
俺には妻と、3歳になる娘がいる。仕事もそれなりに上手くやれているし、充実した生活を送ることができている。
ぶっちゃけ、めっちゃ幸せ。リア充でゴメンね?
今は家族で遊園地に遊びに行った、その帰りだ。
家の近くまで向かうバスに乗るため、バス停に向かって三人揃って歩いていく。
ちょうど俺たちが青信号の横断歩道を渡っていた、その時だった。
一台のトラックが、暴走しながら俺たち三人に向かって突っ込んできたんだ。
「あ、危ないっ!!」
咄嗟に、俺は妻と娘を前に押し出し、トラックから逃がした。
自分のことについては、頭が回らなかった。
とにかく、二人を守らなければ、と思った。
そしてその瞬間、俺の身体に強烈な衝撃が走り、目の前が真っ暗になった。
◆ ◆ ◆
気が付いた時には、何やら見渡す限り真っ黒な、謎の場所にいた。
思うに、俺はトラックにひかれて死んでしまったのだろう。
リア充爆発しなかったけど、ひかれた。ざまぁないな。
……というか、そんなことを言っている場合じゃない。
俺が死んだら、妻と子供はこの先どうなっちまうんだ。
これから俺が支えていかないと、って言う時に、冗談じゃないぞ。いや本当に。
と、その時だった。
真っ黒な空間の上から、何やらキラキラしたものが降りてきたんだ。
「どうもー、ご主人。死後の世界へようこそ!」
『死後の世界』とかふざけたことを抜かすそのキラキラしたものは、10代半ばくらいの少女だった。
ウェーブがかった金髪の髪に、青い瞳。端正な顔立ち。
身長はだいぶ小柄で可愛らしい印象を与える。あと貧乳。すごく貧乳。
抉れてるのかってくらい貧乳。かわいそう。
「……ちょっと。今ものすごーく失礼なこと想像しませんでした?」
「いや別に。それより君はいったい……?」
「よくぞ聞いてくれました! 私の名前はラキシス! これでも女神なんですよ!」
「……自分で自分のことを女神って言っちゃう女性って、ちょっと引くわ……」
「いやいや違いますよ!? 私のこの溢れんばかりの美貌を『女神』と形容しているワケではなくて、文字通りの神様なんです! アイアム神! オーケー!?」
「まぁ、分かったよ。……とりあえず、結局は自分の美貌に絶対の自信を持っているというところは」
「むむむ。本当に分かってくれているのですかね、この人は。……まぁ、これ以上続けてもお話が先に進みませんし、そろそろ本題に入りますよ?」
そう言うと、ラキシスと名乗った女神は、割と真面目なトーンで話を始めた。
「あなたは先ほど、トラックにはねられました。今、あなたの身体は病院に緊急搬送されていますが、もう間もなく息を引き取るでしょう」
やっぱりか……。
俺は思わず頭を抱えてしまう。
「つきましては、来世の転生先を決めてもらうために、こうしてお伺いしたワケですね、私は」
つまり、これがうわさに聞く異世界転生というヤツか。
……だがしかし、だ。
「なぁ、女神様。そこをなんとか助けてくれないか?」
俺には妻と子供がいる。
転生なんてまっぴらごめんだ。
俺は今すぐ生き返らせてもらうよう、女神と交渉を始めたのだ。
あとがきチップス
・目の前が真っ暗になった
・見渡す限り真っ黒な、謎の場所
ポケ●ンネタを意識していると気づく人は、果たして何人いるだろうか……。