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ハードラック・ブラックアウト  作者: 魚之眼 ムニエル
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勝てないよ

 ガトリング砲が唸る。

 イムが放つ無数の銃弾。それを悠々と浴びながら、レディはゆっくり膝を落とす。大口径、超音速の弾丸は、分厚い鎧の前に弾かれていた。


「今更この私に銃弾が通ると思っているのか、なッ!」


 小さく呟くと共に地面を蹴る。爆ぜるような重い音、レディがイムの懐まで迫る。

 スピードを緩めぬままグラディウスの刺突。亜音速までに至ったそれは、すんでの所でイムの腕に逸らされた。

 それでも、レディは止まらない。

 身を捻って繰り出したレディの膝が、イムの腹に叩き込まれる。鋼鉄同士のぶつかる凄まじい衝撃音と共に、イムの体が弾け飛んだ。

 数十メートル低空を飛んでからバウンド、その一回でイムはバランスを取り戻し、右腕と両足で再び地面を掴み取る。激しい摩擦によって舞い上がる土煙。その中から迫るレディの拳を、左手でしっかりと受け止めた。

 激しい衝撃。土煙が晴れる。追撃を続けんと身を捻るレディに肩をぶつけて隙を生み出し、イムは後ろに跳んだ。レディの回し蹴りが空を切る。


 距離が開く。レディはグラディウスを一回転させて構え直し、相手の様子を窺った。

 イムはガトリング砲から手を離し、自らの元の位置に戻した。同時に、背中に広げた翼のようなバックパックから次の武器を引き抜く。

 両手に握ったのは緩く反った刃渡りの長い2本のサーベル。刃の中程まで両刃になってるものだ。

 相手も近接武器を握った事に、イムは兜の中でその笑みを深める。


 派手な展開音。イムは再びバックパックからミサイルを放ち、サーベルを構えた。一度大きく広がってからレディに迫るその軌道は、まるでレディを誘い込んでいるかのようだ。

 お望みとあれば、乗ってあげよう。

 再びレディは地面を蹴る。一瞬の加速を捉えきれず、ミサイルは地面にぶつかって爆発した。

 先に仕掛けたのはイムだった。迫るレディへ、切っ先を掠めるようにサーベルを振るう。レディは身を捻り、右足を強く踏み込む。

 この一撃を左腕の装甲で受け止めて、返しの一撃を叩き込んでやる。

 捨て身、というには計算された動き。想定した場所を、想定した流れで、イムの刃が駆け抜けた。

 火花が散る音。生まれた傷は、しかし想定していた物より深い。


「ぐっ!?」


 痺れるような不快感。攻撃を受けた左腕がズシリと重くなる。動きの鈍ったレディを許さず、イムはもう片方のサーベルを(はし)らせた。

 アレを受けるのはマズい!

 必死に右手のグラディウスを振るって、レディはイムの一撃を払う。今度はレディが、後ろに跳んで間合いを取った。軽く舌打ちをして、レディは使い物にならなくなった左腕の装甲を外す。鱗のように剥がれ落ちたその奥から、無傷の褐色を覗かせた。


 一閃。息つく暇は与えないというように、イムはレディへと迫る。レディは動きの鈍い左腕を庇うように半身になって、イムの攻撃を捌いた。

 サーベルを受ける度に体に流れる感覚、触れる度に舞い散る火花。この装甲を切り裂いたサーベルの仕掛けを、直感が告げる。

 高圧電流だな。

 あのサーベルには高圧電流が走っている。こちらの装甲を超える強度の高さと、たった一撃で左腕がシステムダウンした理由は恐らくそれだ。

 そういうことならば、まだ突破口はある。


 ようやくダメージから復帰した左腕を使いながら、レディはイムの攻撃を間一髪で流し続けた。

 半歩下がれば、半歩詰める。イムは必ず一定の距離を保っている。得物の有利を活かした動きだ。このまま無理に相手のリーチまで迫らなくとも、いつかは相手を捉えられる。そういった余裕の見える動き。


 だがそれは甘い。


 上段から迫るイムのサーベルに合わせて、レディはグラディウスを全力で振り上げた。刃と刃の衝突。澄んだ金属音が響き渡る。激しい衝撃に折れた()が、回転しながら上空に舞った。

 そうして地面に突き刺さったのは、緩く反ったサーベルの刀身。

 レディの放った斬撃が、イムのそれを真っ向から打ち砕いた。

 鉄仮面に焦りの表情は浮かばない。もう片方のサーベルを、鋭く、袈裟切りに放つ。

 それをレディは軽々と掴み取り、腕を引く。勢いよく引き寄せられたイムの胸に、渾身の力でグラディウスを突き立てた。

 鋭い切っ先が装甲を砕き、胸の中央に大きな爪痕を刻む。衝撃を堪えきれず、イムは後方に弾かれた。今度は咄嗟に地面に刃を突き立てることで、体が倒れることを防ぐ。


 追撃はない。今度はレディが、余裕の構えを保っている。

 イムは折れたサーベルを投げ捨て、残ったサーベルをバックパックの中へと戻した。そして、他のバックパックから新たなサーベルを引き抜く。

 これで、レディの直感は確信に変わった。

 あのサーベルには充電が要る。そう長い時間振り続けられる物ではない。流れる電流が弱くなれば、その強度を保っていられなくなる。

 それがわかれば、無理にこちらから仕掛ける理由も無いけど。


 炎の吹き出す音。三度イムから放たれたミサイルが、レディの元に直進する。

 まぁ、自分から動かないのは柄じゃないしね。

 レディはニヤリと笑ってから、勢いよく地面を蹴り上げた。抉れた土塊(つちくれ)が宙を舞い、ミサイルにぶつかって消し飛ぶ。生まれた煙の中を突き抜けて、レディはイムに接近する。

 やはり先に仕掛けたのはイム。左のサーベルを真一文字に振り払う。首を刎ねる軌道のそれを潜って躱し、レディはイムに近付く。

 続いて、半歩下がって右の唐竹割り。レディはそれをグラディウスを使って逸らした。更に踏み込んで、イムの顔面を殴りつける。

 上体がよろける。が、イムは後ろに倒れるその力を利用して身を捻り、サーベルの二連撃を繰り出した。しかし手応えはない。

 イムの目の前には、攻撃を全て躱し、右手に握った得物を構えたレディが見える。

 全て、読まれて――。


 イムの胸につけた傷と寸分違わぬ同じ位置に、レディは再びグラディウスを叩き込む。ビシッという嫌な音が鳴って、イムの体はもう一度後ろに吹き飛んだ。

 ゴロゴロと地面を転がってから、イムはサーベルで体を支えるように立ち上がった。初めて受けた想定外のダメージに、体が軋みを上げている。


「やっぱりそうか。うん、そっちも薄々気付いてるかもしれないけど」


 疲労の見えるイムへとゆっくり歩み寄りながら、レディは冷酷に告げる。


「貴方じゃ私に勝てないよ」

エタってないです。夏休みに入ったのでここから更新速度上げる予定です

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