The first time "Love"
初めての短編です。
期待はしないで下さい。
私は独占欲が強いと思う。
結構嫉妬深いらしい……
らしいなのは自分では分からないが周りからはそう見えるらしいからだ。
友達の明子に訊いても「えーっ!気づかなかったの!?」といわれる始末。
そもそも私をそうさせるのはあいつが悪い。
あいつ…は私の今の彼氏でもあり幼馴染でもある。
容姿は端麗で成績は優秀、運動神経も抜群でとにかくモテる。
そんな完璧超人な彼と付き合ったのはつい先日。
告白は向こうからだった。
突然「付き合って欲しい。」って言われて反射的に頷いてしまった私。
でも彼のことは好きだ。というか大好きだ。
私は昔から大好きだったけど、私なんかじゃ彼と釣り合わないと思って告白が出来ずにいた。
それに彼の周りには女の子達がたくさんいる。
私なんかより可愛い子も多い。
それに気後れしてしまって告白はしないようにした。
当たって砕けるぐらいなら幼馴染という気楽に付き合える間柄がいい、と自分に言い聞かした。
そんなときに彼に告白されてしまったのだ。
無意識に頷いて気が付いたら恋人になっていた。
でも私の苦難の始まりでもあった。
私が彼の恋人なのだが、ファンクラブがあるせいで公に言えない為に彼の周りの女の子達は消えなかった。
彼も性分のためかいつもどおりにその子達と話す。
私がどう思っているのか知らずに。
まあそんな優しいところも彼のいいところだと思っている私にとっては、かなりの苦痛でもあった。
そう、今でも。
二人っきりでの下校中に女の子達が付いて来ている今でも。
「高田先輩っていつも三嶋先輩と帰っていますよね?」
後輩の女の子が彼にそう訊いた。
私のほうなんか見向きもしない。
「そうだよ」
「どうしてなんですか!?」
困りながら答える彼に次々と質問する彼女達。
いいからさっさとあっちに行ってよ!とか思っている私の青筋がひくついてきた。
でも我慢だ我慢…。
「幼馴染だからだよ」
彼がそう当たり障りの無い答えを言う。
本当だったら恋人だからと言って欲しい。
でもそんな気持ちは絶対に届かないだろう。彼は鈍感だから。
何せ私が彼をずっと前から好きだったということに驚いて目を丸くするくらいだったから。
「ええ〜!?ダメですよお?そんなことすると女は勘違いしちゃいますよ〜?」
チラッとこっちを見て言いやがった。
勘違いなのはアンタだボケエ!とか言ってやりたいけど我慢我慢…
ん?何で私我慢してるんだろう?
「でも俺が誰と帰っても別にいいだろう?」
あ、声は優しいけど心の中ではうっとおしそうに思っているのが分かってしまった。
少し嬉しい。彼女達はそんなこと気づいてないし。
「じゃあこれから私たちとも帰りましょうよ!」
「そうですよ!」
「あ、えーと…」
そんな曖昧な態度が無駄に期待させんのよ!
優しすぎるのも困り者よ。
はぁ…全然楽しくない。
「ねえ」
私が発言するとみんながこっちを見た。
「帰る」
もういいや。
一人で帰る事にした。
「ちょっ!香織!」
私を呼ぶ彼の声がしたが無視。
「いいじゃないですか。私達と帰りましょうよ。先輩一人で帰りたかったんですよきっと。」
勝手なことを言ってくれる。
本心ではそう思っていないくせに。
それにわざと私に聞こえるくらいで言いやがる。
「香織!」
彼女達を押しのけて早歩きの私に走って追いついてきた。
「香織!」
彼は私の肩を掴んだ。
「何よぉ…」
「泣いてるのか……?」
え?何で涙なんか零れてるのよ。
悲しくなんて…無いのに。
悔しくなんて…無いのに。
「俺のせいだよね…ゴメン」
そんな風に謝らないでよ。もっと泣きたくなっちゃうじゃない。
私の事なんてほっといてよ。
あ、今の無し。
ほっとかないでよ。
こっちが本心。
でもそんなこと言える訳無いでしょう?
「泣き止んでよ…本当にゴメン」
私にそう言って抱きしめた。
こういうときだけなんで私のして欲しいことがわかるのよ、バカ。
遠くに見える彼女達は唖然とこっちを見ている。
優越感なんて起きない。
「俺のこと嫌いになっちゃった?」
そう不安そうに訊かないでよ。
こっちまで悲しくなっちゃう。
「大好きよ、バカ」
私は彼にそう言って抱き返した。
これが私の彼に言った、最初の「好き」。
初めての女性1人称小説です。
そこまで苦ではありませんでした。