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レベッカ  作者: 橘晴紀
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転校生

 若者の戯れる声で目覚めたオレのところにノンコと真綿が近づいてきた。

「ユウ兄。見て!アレ!出来たんよ」

 指さした先にはキャンプファイヤーで囲む木がキレイに積み上がっていた。

「お~、すごいじゃないか!」

「ここのみんなで完成させたんよ」

 そこにはふたりのほか、女子生徒がふたりと男子生徒が十人ほどいて水辺で遊んでいる。

「あれ?キミら女子高だったんじゃないのか?」

「うん。男子はここ地元でウチらの姉妹校の人たち」

「そうかぁ!じゃあ、今日はこのあと合コンってとこだな?」

「なにそれ?」

 ノンコも真綿も首を傾げている。まだこの時代はそう呼ばれてなかったのか。何にしても若者はいつの時代も楽しいものだ。彼らへの羨ましさがオレを包んだ。

「二人とも、何しよるん?こっちおいでよ」

 この中で一番活発そうな女の子がふたりを呼んだ。ショートカットが似合うカワイイ子だ。もうひとりの子はおとなしく、みんなを陰から見ているような子だけど、こちらもノンコ、真綿に負けず劣らず美少女である。

「牧野さんは?」

「ウチはユウ兄とおる」

 真綿は皆の和に加わった。

「キミらは同じクラスじゃないのか?」

「うん。各クラス一人ずつ選んで、このキャンプファイヤー係を出すんよ。変わってるやろ?修学旅行やのに…ウチらの学校毎年、一日目はここでキャンプファイヤーをするのが決まってるんよ。ほいで二日目から観光に行くんよ」

「そうか。でも、楽しくていいじゃないか」

「ユウ兄も知ってる通りウチ、こんなんやから、中々みんなと楽しまれんのよ。ほやけん、人付き合いも億劫で…」

「友達はいるんだろ?」

「うん。でも、あんまり深くは無理や。女の子同士ってよく手を繋ぐことって多いんよ。まだ、こんなんじゃなかった小学生の時はよくしとったんやけど、今はそれもできん」

 波打ち際で遊ぶ一同を羨ましげに見るノンコは陰ある子を指して微笑んだ。

「ユウ兄。あの子な、こんなとこに絶対来られん子やったんよ。でも、だいぶ皆に打ち解けて、今ではかなり距離は開けとるけど、一応男子と同じ場所におるやろ?」

「あの子、男性恐怖症なのか?」

「彼女、有明瑠奈って言うんやけど、転校生なんよ。一年の途中で入って来たんやけど、そのとき一緒のクラスで全然話もしない、何聞いても答えない子やったけん、皆は相手せーへんかったんよ。ある時、偶然私はあの子の手を握ったことがあって、見えたんよ。あの子の過去が…」

 その名前には聞き覚えがあった。

 ノンコが話しづらそうなのでオレは言った。

「いいよ。無理に言わなくても…僕が知っている子なら事情はわかる。彼女、横浜出身じゃないか?」

「ええ、確かそうやったと思う。知ってるん?ユウ兄、有明さんのこと」

「ちょっとね」

「彼女はキミの能力を知っていたのか?」

「ううん。言うわけないろう?」

「じゃあ、どうやって彼女はキミに心を開いたんだ?」

「私、彼女の過去を知ってから気になって、何か役に立ちたいと思ってたんよ。同じ女として…。ほんで、ずっと話しかけてたんやけど全然ダメで、ほやけどある日、有明さんが声掛けてくれたんよ。もう、私嬉しくて、嬉しくて。それから少しずつ話すようになったんよ。ある時、彼女からお礼言われて恥ずかしかった。そんな大し

たことしとらんのに、そう言われて。私がずっと気に掛けてたことで、昔よくしてもらった近所に住むお姉さんを想い出したんやって」

 これは間違いない。

「ノンコ。そのお姉さんっていうのは羅音の親友の忍のことだよ」

「え~!そうなん?羅音さんって私と同じで手を握って未来を予知する人?ユウ兄の最初の女やろ?」

「最後の一言は余分だが、そうだ!」

 オレは少しむくれてノンコに返した。

「忍は瑠奈と全く同じ体験をしたんだ。しかも同じ相手に…」

「そうやったん?ツライなぁ」

「でも、そのあと見事に立ち上がったよ。だから、あの子もきっと大丈夫。そしてそれは間違いなくノンコのおかげだよ」

「そんな、わたしなんて…」

 微妙な距離を保ったままでも、前を向こうとしている傷ついた少女を見ていて思った。今回はじめて能力者がその力を人の役に立つように使った。それを目撃した瞬間である。戯れる若人たちは太陽のように眩しく、希望に満ち溢れている。

 男子生徒とボール遊びに興じる瑠奈以外のふたり、真綿とショートカットの子。その子が度々、こちらを見ている。そこでオレは思った。まさか、この子がノンコのパーンなのか。例えそうであっても、そうじゃなくても、パーンという存在をノンコに言う訳にはいかない。

 ただでさえ彼らは能力者の身近にいるのに、それが同級生ともなるとまだ高校生のノンコにはショックが測り知れない。実際、真綿もノンコに自分がパーンであることは話していない。オレの声が聞こえるのは少し霊感があると誤魔化していた。

「なぁ、ノンコ。もうひとりの子はどういう子?」

「あの子は水木ひなた。ハンドボール部のエースでもう少しで全国大会に出れるほどの実力がある子なんよ」

「ふ~ん」

 全然興味はないといった感じでいたオレにノンコは言った。

「ユウ兄!水木さんみたいな子、タイプ?カワイイもんなぁ?あの子。でも、イカンよ!隣に愛人がおるの忘れて浮気したら!」

「バカヤロー!愛人でもないし、浮気なんかしたことない!」

 偉そうに言ったものの、そういえば結婚している時に一度だけそういうことがあった。黙りこくったオレの腕を指で突きながらノンコは一言で片付けた。

「ユウ兄。嘘つくの、ヘタ!」

 とにかく可能性がある限り、それをほっておくのも忍びない。オレはひなたに近づいた。すると彼女は横目でちらちらオレを確認すような素振りをしている。オレは言った。

「牧野信子のレベルは?」

 動きが一瞬止まったが、また何事もなかったようにボールを掴み相手に投げた。パーンであればオレを無視するのは仕方ない。そこでオレは自分のバカさ加減に呆れた。よく考えれば、ひなたもノンコの同級生で未成年。パーンなわけがない。ノンコの所に戻ったオレは全国レベルの選手を間近で見たかったからと、誤魔化したが彼女の疑いの眼差しは痛かった。


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