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レベッカ  作者: 橘晴紀
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ノンコの秘密

 ノンコは少し距離を置いて歩いていたオレに近づき左手を出した。首を傾げるオレにノンコは言った。

「もう一回手を繋ごう」

 躊躇わずオレはノンコの手を握った。裸足になっていたオレたちは砂浜から何度も水に浸かったり離れたり、波の動きに反するように楽しんだ。

「やっぱりさっきと同じ。ユウ兄は見えん」

 手を握った人の未来を見る。

 それは羅音が持っていた能力と同じだ。

「ノンコ。僕には使えないんだ!キミたちの能力は…分かるように説明してくれ」

「そうか!ウチは手を繋いだ相手の過去が見えるんよ。その人の過去に起こった出来事やトラウマ、気にしていることなど」

「えっ!過去?未来予知じゃなくて?」

「そう!過去。昔のことなんて知らなくていい!先のことが知りたい!」

 ノンコは海に向かって目一杯の声を張り上げて叫んだ。

「ノンコは僕が出会った能力者で六人目って話したよね?最初の羅音は手を握ることでその人の未来が見えた。その羅音は自分のものより他の能力が欲しいと言った。ちょうど今のキミと同じように。

まるでキミと羅音はふたりでひとつのようだ。いや、そのふたりだけではない。僕が出会った子はみんな自分以外の能力を欲した。でも、それは無いものねだりなんだ。たまたまキミたちはそうゆう力を持っているけど、多くの人も自分にないものを欲しがる。それが人間なんだ。ノンコはまだ若いから過去より未来のほうが知りたいのもわかる。でも、キミが何故だかは分からないが、そのような能力を持っていることの意味を考え、生かしたほうがいいと思う」

 ノンコは自分の左手を空に向かって高く上げ、太陽に透かして見ている。それはまるであの童謡のように。

「ユウ兄。ウチ、その人たちと逢ってみたい」

「実はさぁ、さっきノンコがここにつく前にその中の一人と会ったんだよ。正確には声を掛けたんだが、彼女には聞こえなかった」

「それでユウ兄、あんな悲しそうな顔をしてたんやね?その人は誰さん?」

「その子は留美といって、幼馴染とこの鳥羽に旅行に来ているんだ。彼女は憑依体質で同じ金属を触れた者の中に入ることができる」

「へぇ~!そんな能力もあるんや?すごいなぁ?」

「今は詳しく言えないけど、さっき言った夜の確かめたいことはその留美のことなんだ」

「じゃあ、留美さんに逢えるん?」

「う~ん、まだ分からないけど、それを含めて確かめたいんだ」

 そう言ったものの、ここから先は言えない。考えるだけでも恐ろしい。果たしてどのような展開になるのか。夜までに何か手を打っておかないと、またあの悲しい出来事を繰り返す。それだけは避けたい。

 何かノンコに聞き忘れたように思ったその時、こちらに向かって誰かが走ってきた。

 それは最初にバスで会ったあの子だった。

「牧野さん、ここにおったん?探したんよ。そろそろ準備に取り掛かろう。班長がおらんとできんよ」

「ごめん、ごめん」

 その時、思い出した。

「あ~!」

 思わず声が大きくなった。

「なに?ユウ兄。急に大きな声だして!ビックリするやん!」

「すまない!確かその子、蒼井って言ったよな?」

「そうや!彼女のこと知っとるん?」

 オレたちの、いや、正確にはノンコの独り言に彼女は不思議そうな顔をしている。当然そうで、それに気づいたノンコはシマッタという表情で誤魔化した。

 オレも少しトーンを落として遠慮気味に話した。

「その子、蒼井真綿って言うんだろ?」

 ノンコはそのまま彼女に聞いた。

「蒼井さんの名前、真綿やったね?」

「そうや。なんで?」

 そうか。この子たちは仲のいい友達ではなく、同じキャンプファイヤー係という間柄なのだ。親しい子からは「ノンコ」と呼ばれていると言っていた。

 間違いなく、この子は小夜の後輩であの忌まわ

しいパーンである蒼井の妹。

 前回の小夜の世界では一九八五年だったから、今より一年前。小夜は蒼井兄妹の家に厄介になっているはず。これは思わぬところで気になっていたことが聞けそうだ。逸る気持ちを押さえて、ここは冷静に進めよう。

 ノンコは何故か少し距離をとってはなれている。

 おそらく、真綿にヘンなヤツと思われたくないのだろう。能力者ゆえの悩みである。

 オレは少しでもノンコの気を楽にさせてやりたかった。幸い真綿はそれを理解できる子である。

 ノンコの前に立って言った。

「彼女に僕の存在を話せばいいよ」

「えっ!そんなん…」

 極めて小さな声でノンコは返した。

「大丈夫!彼女は!なぜ僕が真綿って名前を知っていたと思う?」

 不思議そうに見ていた真綿にノンコは声を掛けた。

「蒼井さん。実は今ここに私たち以外に人がいるんよ」

 ノンコは少し俯いて上目使いに真綿を見た。

「やっぱり…そうかなぁって」

「知ってたん?蒼井さん。見えるん?」

「ううん。そうやないけど、そういう存在がいるのは知ってる。その人ってさっき休憩のときに牧野さんが話していた人やろ?」

「そう。よぉわかったね」

「牧野さんって、ひょっとして能力者?」

「えっ?」

 ノンコは大層驚いた。まさか、同級生からそう聞かれるとは思わなかったのだろう。

「蒼井さん…」

 混乱しているノンコにここは助け船が必要であろう。

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