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レベッカ  作者: 橘晴紀
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パーン

 声も口調も場所も違うところから聞こえた返事は小夜と背中合わせに座る男性のものだった。唐突の登場と先程からやけに近くに座る違和感はこの時のためのものだったのか。

 振り向いた小夜は男性を覗き込んだ。

 次の瞬間、驚きの表情と声を上げた。

「蒼井くん。どうして、あなたが?…」

 声の主は小夜の後輩で先程別れた蒼井だった。彼は小夜に好意を寄せているから、付けて来たのかと思ったが、それはどうも違うようだ。蒼井はオレたちのテーブルに回ってきて小夜の対面に座った。

「驚かせて、すいません。小夜先輩たちがこちらに入って行くのが見えたもので後に続きました」

 そう言って蒼井はチラっとオレの方を見た。

 しかも今「先輩たち」と言った。彼にはオレが見えている。すかさずオレは聞いた。

「キミ、オレが見えるのか?」

 この旅で初めて能力者以外に認識されることに少し興奮したオレは短い言葉ながら早口で聞いた。

 正確には二人目だが。

「はい。しかし事情がありまして、友二さんとあまり話すことができないのです。なので、僕は小夜先輩に向かって話させていただきます」

 驚いたのは蒼井がオレの名前を知っていたこと。

 いくら能力者だとはいえ、そこまで知りえるものなのだろうか。オレが名乗ったのは小夜に会ったその時だけなのに、蒼井はどこかに隠れていたとでも言うのか。

 オレ以上に驚いて目を丸くしている小夜に蒼井は優しく語りだした。

「何から話したらいいのか…。簡潔に説明します。今わかっているだけでも、この世界には四種類の人間がいます。まず、一般人。それから小夜先輩のような能力を持っている人。他にもいろんな能力者がいます。そして、その人たちを見守る僕たちのような者。内輪では『パーン』と呼んでいます。最後に友二さんのような人。これについては僕から何も話すことができないのです」

 蒼井が話す間、小夜は始終口を開けて何度も目をパチパチしてた。そして、店員を呼んで炭酸ジュースを追加注文した。

「それで結局のところ蒼井くんは何者なの?ただ見守るだけの人なの?」

「え~、まぁ~。少し優しく言い過ぎました。正確には監視。そう、プールとかの監視員とでも思ってもらったら結構です」

 それも十分優しく聞こえる。蒼井の性格が出ていて、悪気はひとつもないようだ。それにしても、オレのことは話せないというのは、どうも知らないからではないようだ。知っていても言えないということだろう。

 ひょっとすると、一連の旅の謎がそこにあってそれが分かると全て氷解する事柄なのであろう。

 これは何としても聞きださなければなるまい。

「蒼井君がこんなに論理的に話す人だとは思わなかった。いつもの君じゃないみたい。本当に蒼井君?それとも今までは猫を被っていたの?」

「ヒドイなぁ!小夜先輩。いつものボ~っとしたのも僕ですし、いまここにいるのも僕です。ただ、『パーン』の時の僕は任務遂行中ですから、先輩からしたら別人に見えるかもしれません。ご了承ください」

 長身で細身の爽やかな青年はそう言ったあと中指で眼鏡のフレームを押し上げた。小夜は頬っぺたを膨らまし首を何度も上げ下げして少し納得したようだ。

 思考が止まった小夜の代わりにオレは蒼井に質問した。

「どんな任務をしているんだ?」

「それは至って簡単。小夜先輩のような能力者を監視して、時には守っています」

「何を監視するんだ?」

「能力者たちが暴走しないように、見張っているのです。むやみに能力を使って人や社会に迷惑をかけないように監視しているのです。万が一そのような事態になれば我々は実力をもって制止します」

 話を聞いていてどこかおかしいと思った。

 まるで小夜たちは誰かから力を授かって、それを監視して社会諸共コントロールしているように聞こえる。

 そんなことはあるはずがない。誰が何の権利でそのような事ができるのか。同じように考えていたのだろう、腕組み

をしていた小夜が口を開いた。

「蒼井君。じゃあアタシたちはあなたたちから好きでもない能力を与えられて、あなたたちに都合が悪い事になれば力ずくで止めさせられるってこと?それじゃあ、まるで人体実験じゃない!それなら今すぐ止めてよ!能力も時間も…それぐらいできるんでしょ?」

 小夜の剣幕に店内の人達の視線はオレたちの席に注がれた。蒼井は小夜を落ち着かせようと両手を上下に何度も振って宥めた。小夜は再び、店員を呼んで注文をした。

「すいません、小夜先輩。どうも僕は説明がヘタでいつも先輩に誤解を与えているようです。別に大掛かりな仕組みがあるわけではないのです。先程説明した四種類の人間の内、僕たちパーン以外の人は誰がどうしたわけでもなく、自然に太古の昔からここ地球に存在している人たちです」

「つまり、蒼井くんたちはつくられた人たちということ?」

「まぁ、簡単にいえばそうですけど、誤解しないでください!別に僕たちはアンドロイドでもなければ、サイボーグでもないですよ。普通に皆さんと同じ血の通った人間なのですから…。ただ、特殊な訓練を受けているというだけです」

 疑問に思うことは山ほどあるが、何から聞いたらいいのだろう。オレのことは言えないという蒼井が何故深夜の喫茶店で自分の素性を始め、大げさな話をしだしたのだろう。

 隣を見るとなんとなく理解できるがどうもしっくりきていない様子の小夜が、顎に手を置きテーブルに肘をついている。

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