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レベッカ  作者: 橘晴紀
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パーティー会場

 そこはホテルの大広間を貸し切ってあり、入り口に〈金沢譲帰国祝賀会〉と書かれた看板がある。

「これ、有名人?」

「まぁ、アタシたちの中ではそうかもね」

「誰?」

「大学の先輩で先日、ドイツから帰ってきたのよ。それを祝う集まりなの」

「へぇ、それほどスゴイ人なの?」

 そう聞いたオレに小夜は首を横に振った。

「ううん!そうじゃなくて、一カ月ほど旅行がてらに研修してきて、帰ってきただけなの。先輩は医者を目指して向こうで学んできたって自慢してるの。たった一カ月なのに」

 そう言って小夜は笑った。

「小夜ちゃん。僕に話す時はこっちを見ないで前を向いたほうがいい。じゃないと、ほら!」

 オレは会場の中を指さした。それは独りで話す小夜に向けられた視線に対してであった。

「ホントだ!恥ずかしい」

「ところで、豪勢なパーティだな?」

「そうでしょう?金沢先輩がお金持ちっていうのもあるけど、ここにいる人の半分はサークル関係の人なの」

「何のサークル?」

「パーティサークル」

「何それ?」

「簡単に言うと、お祭り騒ぎが好きな人が集まってできたサークルってとこかな?」

「何と昭和的な!」

 オレは目の前のバカ騒ぎに何となく懐かしさと、呆れた思いがこみ上げてきた。

「なに?昭和的って?」

「だって平成だから・・・。そうか、今はまだ昭和なのか?」

「えっ、ユウちゃんの時代は違うの?」

「そうだな、今は八十五年だからあと四年で平成になるよ」

「へぇ~、そうなんだぁ。なんか、弱々しい名前だね。ねぇ、ユウちゃん、後でもっと未来の事を教えて!聞きたいことがあるの」

 小夜はやけに明るい表情でそう言った。

 それはただ好奇心だけで言っているように思えなかった。

 この先に何かが待っているようなそんな気がした。

「小夜ちゃん、どこに行ってたの?探したよ」

 近づいてきた男がニヤついた顔で小夜の肩に手を回した。

 それを軽くかわして小夜が言った。

「金沢先輩、お帰りなさい。随分早いお帰りでしたね?どうでしたか、あちらは?」

「あ~、退屈さ。まず言葉が通じないし、堅苦しい。善かったことと言えば、金髪美女とたくさん知り合えたことくらいかな?」

 余りのバカさ加減に小夜は返す言葉がなかった。

 そんな金沢は急に顔色を変えて、小夜を会場の端に引っ張って行った。ふたりの後をついて行こうとしたその時、金沢が小夜の耳元で何かを言った。言い終わると金沢は小夜から離れて元の場所に戻って行った。残された小夜は何故か困った顔をしている。いや、それよりもっと重大な何かを告げられた時の困惑の顔だ。

「どうかした?小夜ちゃん。顔色悪いよ。アイツに何を言われたの?」

 そう聞くオレの質問に小夜は首を振るだけであった。

そして小夜はオレに微笑み、人の集まる前方へと進んでいった。その際感じたのは小夜がオレを避けているように見えたことだ。出会ってまだ数十分のオレたちだったが、今までの能力者たち同様、すぐに打ち解けられたと思った矢先の出来事なので、正直ショックだったのと同時にこの先の不安が込み上げてきた。

 程なく宴は終了して、小夜は数人の男女と話している。

 遠慮がちにオレは小夜の側に寄ったが、特に嫌がるような素振りもない。小夜たちは会場の外へ出た。

 一緒に出たのは小夜の先輩らしきスタイルのいい女性と、後輩らしき細身で優しそうな男性であった。

「それで小夜、譲とは何を話していたの?まさかアイツ、帰国早々アンタを連れ出そうとしていたのかしら?」

「いいえ、違います。特にこれってことは言ってなかったですよ」

 そう言って小夜は視線を反らした。

 その様子を伺っていた男性がすかさず言った。

「芹香先輩。それよりもいいんですか?今日は大事な日なんでしょう?早くいかないといけないんじゃないですか?」

「そうよ!あの小娘どもに思い知らせてやらないといけないんだわ!蒼井くんも一緒に来る?」

「いや~、僕はその手のところは苦手なので、また明日にでもどうなったのか、話を聞かせて下さい」

「そう、残念ね。小夜も行くんだよ」

「えっ、そうなんですか?小夜先輩」

「そのつもりだったんですけど、ゴメンなさい芹香先輩。急用が入っちゃって・・・」

「そうなの?アンタが来てくれれば心強い味方になってくれると思ったのに残念ね。それにあなたの大事な人もきっと来ていると思うよ」

「えっ…私が行っても何の役にも立てません。踊りだって得意じゃないし、芹香先輩みたいにあんなことできないですよ。それに…カレとはもう何でもないですから…」

 急に小夜は元気がなくなった。

「小夜先輩…。それより、どんなことしているんですか?芹香先輩は?」

 蒼井は小夜を気遣い、先輩二人を交互に見て聞いたが、思うような答えは返ってこなかったようだ。

「芹香先輩。小娘って、いつも競い合っている高校生たちのことですか?」

 考える蒼井を余所に小夜が聞いた。

「そうよ!あんなジャリたちに負けないわ。この間はじめて小夜を連れて行った時にいた娘、覚えてる?」

「ええ。なんか高校生にしては胸が大きくてスタイル抜群の娘でしょう?」

 そう言った小夜はしまったといった表情をした。

 それは芹香が不機嫌そうな顔をしているからだ。

 トーンを落として芹香が言った。

「あの娘が言うにはもっと凄い娘がいるんだって…。彼女のライバルでいつもはラグで踊っているらしい。なんでも、どっかのバンドのヴォーカルをしていて、ステージ慣れしているのと、体力が物凄くあるから負けないんだって。だから、こっちもマユマユを連れて行くの」

「え~、マユマユと知り合いなんですか?芹香先輩」

ヘンな名前に気になったオレの代わりに蒼井が質問してくれた。

「マユマユって誰ですか?」

「知らないの?蒼井くん。クラブ四天王のひとり北川真弓。テレビによく出てるよ。それに芹香先輩と同じレースクイーンだよ」

 答える小夜と首を捻る蒼井に手を振って、芹香は戦いの場へと向かった。

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