第五章
真っ暗な中、閃光が近づいては消え、また近づいては消え、まるでSF映画に出てくる宇宙空間をワープする時のような光景である。そして、あのグリーンフラッシュがやってきて、オレの眉間に突き刺さった。
〈ドン!〉
鈍い音と共に、額に物凄い衝撃が走った。
体制を崩したオレは尻もちをつくかたちで下に落ちた。
「痛~~~!」
思わず声が出たが、目の前にオレと同じ態勢で同じように声を上げている女性がいた。
周りを見渡すと、そこは路地でありビルの間に挟まれていた。正面の女性は立ち上がってこちらを見ている。
オレも立って女性を見つめた。どうやら夜のようだ。
「アンタ何者?同業者?ひょっとして、例の組織の人間?」
そう言った女性は身構えた。
「なんの事言ってるの?それよりもキミ、僕が見えるんだね?」
「そうだけど、アンタ…違うの?」
「だから、なにが?」
「さっきアタシが聞いたこと…」
女性は体を横向けにして、逃げるような格好をしている。
「違うよ!」
「だったらアンタ誰?」
「誰って、名前は友二だけどキミは?」
質問に答えない女性はオレを品定めするように見ている。それは何かの疑いを持ってオレに向けている視線だ。
オレは彼女の迫力に肝心なことが聞けずにいたが、とりあえず誤解を解く方が先決だ。
「アタシは名前を聞きたいんじゃなくて、なんで邪魔をするのか知りたいの!」
「邪魔?僕が?キミの?」
「そうよ!」
ここはまずちゃんと話し合わないといけない。
彼女にオレが見えるということは能力者であり、同時に協力者であるということ。
瞳に戻してもらったのは失敗で、おそらくここはオレが元いた世界ではない。瞳のいうところのズレが生じて違う場所と時間軸に移動したのだろう。まずはここがどこでいつなのか把握する事と、目の前の彼女にこれまでのことを含めて説明せねばならない。
そこで先にオレは自分が何者で何故ここにいるのかを彼女に説明した。過去オレが会った能力者たちですんなり理解してくれたのは羅音で、彼女の場合は能力ゆえにオレが来ることを知っていたから楽だった。
しかし今回の女性はオレの話をすぐに理解してくれた。
彼女も羅音と同じ能力をもっているのか。
それにしては最初から疑いの目で見ていたのはなぜか。
その疑問にはすぐ答えてくれた。
「ということは、ユウちゃんはタイムトラベラーってことね?」
「まぁ、そのようなものだけど僕は自分でコントロールできないから…キミらと少し違うかな?」
「アタシは小夜。さっきはゴメン。てっきり怪しいヤツかと思ったから。じゃあアタシはユウちゃんにとって五人目の女ってこと?」
「いや、何かその言い方にはチョット引っかかるけど…まぁ、いいか?」
「おそらくユウちゃんがここにいるのは何らかの原因でアタシが移動中だった空間に入ってきて、ぶつかったからだと思う」
「じゃあキミもトラベラーなのか?」
「いいえ。アタシはテレポーター」
「それって…瞬間移動だよね?」
「そう。アタシは時間を移動するんじゃなくて、場所を移動するの。その僅かな瞬間に偶然、時間を移動していたユウちゃんとぶつかったってわけ。そんな事は滅多にないし、ありえない。何か理由があるのかも…」
都会の路地は湿気と熱気で息苦しい。
気温からして大体の季節は分かるが、場所と時代を知るために小夜に尋ねると、瞳に送ってもらった時から僅か十数時間後、つまり同じ日の夜であった。
もちろん瞳に責任はなく、まして責めるつもりもない。
成功には至らなかったものの、オレにとってそれは大変意味のあることで今後の参考になる。
瞳も言っていたようにトラベルをコントロールすることは極めて困難で、幾度となく自分の世界に戻ったオレのトラ
ベルとは明らかに違って、そこにオレが旅をしている理由があるのかもしれない。今の段階ではその理由は分からないが、いずれその謎を解き明かす。
そうこうする内にオレたちは路地を出て、都会の夜空を眺めた。
「ここは東京だね?」
「そうよ。六本木」
「そうか!ところで小夜ちゃん。どうしてテレポートしているの?それとキミは何か危ないことに巻き込まれているのか?」
「どうして、そう思うの?」
「だって僕を誰かと勘違いして、えらい剣幕だっただろ?あれじゃあ、カワイイ顔が台無しだよ」
「え~、そんなにイヤな顔をしてたの?アタシ。恥ずかしいなぁ!でも今はまだ…」
笑顔で恥じらっていた小夜は急に影を落とした。
小夜はこの近くで開かれているパーティーに出席しており、その途中でテレポートしてきたらしい。
戻らないと皆が心配するからと、一旦会場に帰るという。オレも彼女に同行することにした。
毎度のことながら、そうしないと帰還することができない。しかし今回はいつもと全く違うパターンである。
この世界に現れた理由もさることながら、小夜の能力は最初から分かったものの、彼女がその力を使う理由が何だか謎めいていて危険な香りが漂っている。
これからどうなることやら・・・。
自分の帰還よりも先に小夜の問題を把握して、そこから対処をせねばならないかもしれない。
オレはそんな考えを含めて小夜に提案したが、彼女はなぜか及び腰で一歩引いている。程なくパーティー会場に到着した。




