留美との別れ
安心したオレは唯一の特権を生かして、留美の病室へ入った。留美の枕元に座り置かれているペンダントを掴み彼女の回復を願った。ペンダントを見ると、どうやらロケットペンダントのようだ。なぜか緊張しながらフタを開けたオレは思わず笑顔になった。
それは小さな子供が二人映っており、すぐに誰だか解った。その二人は今、症状は違えど同じこの病院にいて生死を彷徨っている。何の根拠もないけどオレは、二人の幼馴染が一番仲の良かった時の写真を見て助かると確信した。
危険を冒してまで身に着けていた留美のためにも、この世界に同じ神がいるならば、どうかふたりを助けて欲しいとオレは祈った。どれくらい時間が経ったのか分からないが、少し眠ってしまったオレの耳元に微かに声が聞こえた。
「ユウくん。ユウくん。ウチ、生きてるやんなぁ?」
「気がついたか?よかった。もちろん、生きているよ」
「葉月は?」
「別の病室にいるよ」
それを聞くと留美は起き上がろうとした。
「何やっているんだ!ダメだ!安静にしとかなきゃいけない」
「でも、ウチが行かへんと葉月のせいにされるから…」
「大丈夫だよ!」
「だって、あの時、ユウくんしかおらへんかったから、このままやったら…、こんなつもりちゃうかったのに…」
「留美。そう思うなら早く怪我を治して、みんなに説明しなきゃいけないだろう!それに僕以外に目撃者がいて、今頃はその人が証言してくれているよ」
「そうか。よかった…」
「どうして、葉月が倒れたのが分かったんだ?留美の意識がなくなった後のはず」
「連動してんの!ウチら。昼にここへ着いた時、葉月が頭痛で苦しんだの覚えてる?」
「ああ、確か急にうずくまって、でもその後すぐによくなったよな?」
「あの時ウチ、無意識に一瞬ペンダントを触ってしもてん。すぐに離したから入るまでにはならんかったけど…。二か月前に葉月の旦那とここに来てん。それでつい、想い出して…」
どう言っていいか分からないオレに留美が言った。
「こんな女、最悪やろ?ユウくん。ウチ、もうイヤやねん」
「だから、自分で刺したわけか?」
「そう!」
「留美。それはダメだ!どんな事があっても…。葉月はあの時、キミを理解しようとしただろ?その彼女の思いを無にするのか?少なからず葉月は留美の能力のことを気づいているのじゃないか?」
天井を見つめたまま留美は涙を流して言った。
「昔、二人で遊んでいる時に雷が落ちてきてウチら、しばらく気を失った。それからウチにこんな能力がついた。ユウくんさっき、憑依ってどうなるのか聞いたやん?葉月の中に入ったウチはそのまま彼女と共有してしまうねん。考えてることも何もかも…」
「だったら、あの時葉月が言ったことは?」
「葉月であり、ウチやねん。葉月の中で彼を愛したウチは、彼女から離れて自分に戻っても彼をそのまま愛している。それは絶対許されへんこと。でも、こんな事をいくら説明してもアカンねん!言い訳にしかならへん!」
「だからって、自分を亡き者にしようとしてもダメじゃないか!」
「でも、こうするしかない…」
そう言うと留美は眠ってしまった。突然オレも眠くなり、夢の中へと引きずり込まれた感覚に陥った。
目の前の留美は眠っている。
その留美の手を握ってオレも眠っている。彼女の手のひらにはペンダントが収まっている。
「ユウくん。ありがとう。また逢えるやんな?今度逢う時はもうちょっとマシな女になってると思うから、また逢いに来て。でも、なんか苦しい!」
「おい!大丈夫か?留美。逢いに来る。必ず逢いに来るからしっかりしろ!」
「ユウくん…ユウくん…」
眠っているはずなのに遠のく意識の中、例のグリーンフラッシュが現れた。
「留美、留美~」
< ガチャガチャン!>
その賑やかな音は缶ジュースが自販機の底を叩きつけた音であった。
「あの~」
その声に振り返ると、そこには見知らぬ女性が立っていた。戻ったのだ。
車に戻ったオレは現実を突き付けられた。助手席の窓ガラ
スは開いており、そこに座る横顔は紛れもなくレベッカであった。




