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レベッカ  作者: 橘晴紀
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病院にて

 病院に着いたオレたちは手術室の前にいる。泣きながら祈るミラ。ソファーに腰掛け、大股開きで膝に置いた手を握りしめる明日太。

「あのぉ、すいません」

 後ろでそう声がしたので振り向くと、ひとりの少女が立っていた。

「はい」

 明日太が答えた。

「これ、大事なものじゃないですか?」

 そう言って少女は手のひらを開けた。

「あっ、これ…留美の…」

 その手にはペンダントが握られていた。

「君、わざわざこれを届けにきてくれたんか?」

「はい」

「ありがとうな!これは今、あそこで闘っているお姉さんのものなんや。ちゃんと、渡しとく」

 明日太がそう言い終わるか否か、手術室の扉が開いて看護婦が慌ただしく出てきた。

「どなたか、O型の方はおられませんか?」

 どうやら、血液が足らないようだ。

オレはO型なのだが、無理に決まっている。

「ミラは?」

「ウチ、AB型。明日太は?」

「俺、A型」

「あのぉ。私、O型です」

 少女はそう言って明日太にペンダントを渡すと、処置室に入って行った。

「明日太。なんで葉月はナイフを持ってきてたんやろ?」

「俺が葉月に渡してん。アイツに頼まれて、注文してたから…」

「それにしても、海にまで持ってくることないのに、初めから留美を刺す気やったんかな?」

「違う!違う!葉月が刺したんじゃない!」

 オレの叫びが届くはずはない。ミラは葉月が留美を刺したと思っている。おそらく明日太もそう思っているのだろう。当然誰でもそう考える。でも違う。

 留美はまだ手術中だし、葉月は倒れたままなぜか意識が戻っていない。一部始終を見ていたのはオレだけだから、このままでは葉月が犯人にされてしまう。

 何か上手く伝える方法はないものか。長い時間が過ぎて赤いランプは消灯した。程なく扉が開き医師が出てくると、ミラと明日太は駆け寄った。二人の表情から何とか留美は助かったようで一先ず安心だ。ミラと明日太はストレッチャーに近づき、留美に言葉を掛けているが目を閉じたままだ。

 医師によるとまだ予断は許さないので絶対安静とのことだった。明日太は留美の枕元に預かったペンダントを置いた。そのまま留美を見送った二人は医師に礼を言った。

「とりあえず良かった。葉月の所に行ってみよう」

 ミラがそう言うと、明日太も歩き出した。

「あの~、すいません。今運ばれた魚津さんのお知り合いの方ですか?」

「はい。あなたは?」

 ミラの問いに声を掛けてきた男性は胸ポケットから手帳を出して言った。

「警察の者です。少し事情をお聞かせ下さい。先程、雲川さんの病室に伺ったのですが、まだ意識が戻ってないと言うことなので先にお二人にお聞きします」

 刑事はやはり葉月を疑っているようだ。オレしか目撃者がいないので仕方ないが、何とかできないだろうか。

 こんな時に留美の能力があればいいと思ったが、オレは自分を恥じた。それが原因でこんな事になったから、それは留美たち申し訳ない考えだ。

「ちょっと待って下さい。じゃあ刑事さんは葉月が刺したと言うんですか?」

 明日太は今にも手が出る程の勢いで刑事に詰め寄った。

「じゃあ、逆にお聞きしますけど、あなたはその場にいたのですか?二人を見てたのですか?」

「いや~、それは…」

「でしょう?この場合、雲川葉月が刺したというのが妥当です」

 冷たく引き離し、決めつける刑事に今度は、ミラが言い放った。

「ちゃんと、葉月の意識が戻ってからそう言ってください」

 見てるだけしかできないオレは自分の無力さを呪った。

 何のためにオレはここにいるのか。ただ、訳の分からない時間旅行をしているつもりはない。

 こんな時にこの世界で僅かな時間を共有している人たちを救うこともできない。オレは何をしているのだ。

 そんな情けないオレをあざ笑うかのように刑事は冷めた表情で、その場を後にしようとしたその時、廊下の先から細い声が聞こえた。

「あのぉ、私、見てました」

 そう言いながら、ゆっくり歩いてきたのは輸血を終えたばかりのあの少女であった。思わずオレはガッツポーズをした。そうか、この子はペンダントを拾った時にあの場面に出くわしたのだ。これで葉月の無実と留美の思いも救われる。

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