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レベッカ  作者: 橘晴紀
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雪希の能力

 市役所の駐車場にはオレたちが乗る車だけで他には一台も停まっていない。そういえばまだ朝早く、通常この時間には開いていない。

「あのぉ、お仕事のほうは大丈夫ですか?」

「はい。私、ここに勤めておりますので」

「そうなんですか。時間はいいのですか?」

「ええ…」

 突然彼女の気落ちに戸惑ったが何か事情があるのだろう。

「いつも私は他の人より三十分以上早く出勤するのです。そうしないと…」

何か特別な理由があるのだろう。おそらくそれは彼女の特殊な能力とさっきの恥ずかしい行動が関係しているのは間違いない。

 オレはあえて余計なことは聞かず彼女の意志に任せた。

「まだ行かなくていいのですか?」

「はい。今日は何故かいつもより早く出たので大丈夫です。それよりも、何かお話があったのですよね?」

 話といっても、とりあえず彼女の車に乗せてもらうために話かけたので正直困った。

「そうでしたよね。あの~、え~っと、あ~、そうでした。あなたの能力の事でしたね」

 歯切れの悪いオレに彼女は微笑んで言った。

「私がヘンな事頼んだので忘れてしまいますよね。ゴメンなさい」

「いえいえ、お気になさらずに…」

「どうして私に能力があると?」

 そう聞かれたオレはトンネル出口から起きた事を彼女に説明した。五人の人に会いながら気付いてもらえなかったこと、車に轢かれても何ともなかったことなど。

 そして、おそらく彼女も一番疑問に思っているであろう服装の謎に関わる時空の話。

 それはオレなりに彼女が能力者だと見込んでの、語りかけである。ただ彼女がどんな能力があるのかは分からないままではあるが。

「そうだったのですか。まだお名前を聞いてなかったですね。私は上西雪希といいます」

 それほど驚きもしない雪希はこういうことに慣れているのだろうか。普通なら疑いや変人扱いするところではあるが・・・。

 その後、オレも簡単に素性を話した。雪希の家は昔から代々続く名家で現在彼女の父は県会議員をしているという。

「さっきお願いしたことはあることを確かめるためだったのです。私は数年前からある一定の距離に人がいると頭が痛くなり、とても辛くてその場を離れてしまうのです。その時間が約三分なのです。だから、職場でもなるべく人と接触しないよう、誰もいない時間に出勤しているのです」

 雪希は淡々と自分の身の上を話しだした。

「職場ではどうしてるの?」

「はい。市役所では観光課に勤めており、資料などを収集、整理したり、電話担当なので、無理を言って別の部屋を用意していただいています」

 おそらく、その無理は彼女だから聞いてもらえるのだろう。それにしても気の毒な話だ。

「でも、ユウジさんをお乗せしてから三分過ぎてもどうもなく、それどころか十分過ぎてもいつもと変わらない。だから、耳を触ってもらったのです」

 今の話と耳を触ることに関連を見いだせないオレの顔を見て雪希は微笑みながら言った。

「何度もゴメンなさいね。分かりづらいでしょう?私は伝えるのが下手なので…というのも私は人の心が読めるのです」

「えっ!そうなんだぁ」

 それ以上の言葉はなかった。この類の話はいくらでも聞いてきたが、彼女の場合は本当なのだろう。オレが見えるということだし。しかし、〔未来予知〕の次は〔テレパシー〕参ったなぁ。次から次へと…。

 いや、待てよ。ということは今オレが考えている事もお見

通しってわけか。これは迂闊にいらぬ事を考えていられない。そんなオレの思考を読みとったのか雪希は言った。

「大丈夫ですよ。何故かユウジさんの心は読めないのです。だからさっき耳を触ってもらったのです」

 本当なのか。疑いつつも、再度出てきた耳の話はやはり気になる。

 触った方ながら結構恥ずかしい思いもしたし・・・。

「誰の心も読めるわけじゃないのです。ハッキリとは分からないのですが、半径1メートルくらいの距離で人といると、先に頭が痛くなってその時に左耳を触ると、その人の考えていることが分かるのです。すぐに離れれば何ともないのですが」

 なんとも変わった体質だ。いや能力だ。

 おそらく頭痛が警報装置の役目を担っているのだろう。

「ただひとつ問題がありまして…。通常人から離れれば、その後は何事もないのですが左耳を触れられると、その人の心はかなり距離を開けても読めてしまうのです」

 だからオレに耳を触れさせたわけだな。

 だったらオレの心は・・・。

 雪希はちゃんと疑問に答えてくれた。

「不思議なことにユウジさんの心は読めないです。だから何分いても頭痛もないのだと思います。今まで私が会った中でユウジさんが二人目です。だからどうか心配しないで」

 雪希は微笑みながらそう言った。

 考えてみれば「心配しないで」というのもおかしいことである。おそらく雪希は人にそんな能力を言えないであろう。

 数少ない理解者に話すと、このような時に使う言葉じゃないことを言わなければならない。これがどれだけ辛く悲しいことなのかは、本人と余程の理解者だけである。

 もうひとりはどんな人か気になるところだが、おそらくオレの心が読めないのは、オレがこの世界の人間じゃないからだろう。

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