表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベッカ  作者: 橘晴紀
12/63

帰還

< グリーンフラッシュ>

そうだ。あの岬で見た時と同じ輝き。

そして、スッ~と、それが消えていくと、目の前にオレがいる。どういうことだ。何がなんだが分からずにいたオレだが、それを水の音が気付かせてくれた。

 オレは鏡の前にいて、水の音は蛇口から流れているものであった。そこはファミレスのトイレであった。

 急いでオレはトイレの扉を開け外に出た。戻った。戻れたのだ。あまりの嬉しさにオレは店内を走って席に戻った。

「友二。なに子供みたいに走っているの?店員さんがこっちを見ているよ」

 滑り込むようにしてイスに座ると、レベッカがオレを嗜めた。

「なぁ、あれからどれくらい経った?」

「え?」

「だから、オレがトイレに行ってから」

「なに言ってるの?友二。二~三分でしょ?」

 そう言われてみたら、まだ注文した料理も来ていない。確か羅音たちのいた世界では数時間流れていたが、ここでは二~三分。レベッカの態度からしても、それは間違いないだろう。あの出来事は夢か幻を見ていたのだろうか。

 色々考えたいところだが、かなり疲れているし、まだこれからの行程を思えば暫し考えることはやめにしておこう。夜のファミレスに同席している少女と男。

 傍から見れば、親子に見えるかもしれない。しかしその実、オレたちは数時間前に墓地で知り合ったばかりで、同じ東京に帰るという理由だけで車に同乗し、腹が減ったからと店に入り、オレは数時間異世界へと旅をして、戻って来るとそこは数分しか経っていない。

 そう思うと、隣の席のカップルやそのまた隣の家族連れ、彼らも本当は皆には分からないだけで、何か変わった時間の中に今現在もいて、未来人や宇宙人、ひょっとしたら地底人かもしれない。想像すると可笑しくて思わず口元が緩んだ。

 そして、何気に目の前のレベッカが着ている服に目が止まった。

「ちょっとユウジ、トイレから帰って早々何よ!イヤラシイ!人の胸を食い入るように見て!」

「いや、違う、違う!そのデザイン、どこかで見たような気がして…」

 そう言ってオレはレベッカが着る服の胸元を指さした。

「あ~、これ?これはオリーブの服」

「オリーブ?」

「うん、ブランド。好きなんだ、ここの服、可愛くて。それとデザイナーの人もカッコイイし、若い子のカリスマだよ。あっ、そうそう最近、忍さん結婚したの」

「忍さん?」

「デザイナーの折田忍」

「えっ!まさか!」

 そうだ。あの時忍の部屋でマネキンに掛けてあった服のデザインと同じだ。驚いたオレの顔を見てレベッカが不思議そうにしている。それはそうだ。

 さっき、まだ忍がデザイナーどころか、これからパリへ旅立つという場面に遭遇したところだったから驚くのも無理

はない。調子が狂う。

「知ってるの?友二。忍さん」

「あ~、知ってるような、知らないような」

「何それ?」

「そうだ。いま結婚って言ったよな?相手は男か女か?」

「何言ってるの?忍さんは女だから、男に決まってるでしょ?もう友二、さっきからヘンだよ!」

 レベッカの言う通りだ。ということは、忍はちゃんと克服できたのだろう。若い子に人気のデザイナーになって、夢が叶い、結婚して幸せになれてよかった。

 花梨も夢が叶って、その後セレブとなり幸せな生活を過ごしているだろう。そうなると、もうひとりのことも気になる。

「なぁ?歌手かバンドのヴォーカルで羅音って知ってるか?」

「ライン?知らない!」

 レベッカはステーキを頬張りながら素っ気なく答えた。有名人にはなっていなくても羅音なら、必ずどこかで元気に暮らしているだろう。そう願う。

 かけがえのない貴重な体験と過去の記憶を思い出させてくれた彼女たちを想って、夜のファミレスでシャンパンに見

立てたジンジャーエールで夜空に乾杯するオレを、何も知らないレベッカは呆れ顔で見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ