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工房

  新NM討伐に参加するのは、ギルド『Beyond the horizon』所属の21名中15名、これはいつものことである。

 残りの6名は不参加なわけではなく、戦闘職ではないからだ。彼ら6名はギルドの裏方である、生産職クラフターについている。

 戦闘職にある15名が戦闘に全力を傾けられるのも、彼ら裏方あってのことだ。


 ギルド内には工房が設けられており、HM討伐に際しては、武器防具の新調、交換、強化、消費アイテムの準備に追われることになる。

 彼ら6名にとってはすでにHMとの戦闘が始まっているのだ。

 工房内は、鍛冶、裁縫、錬金の各部屋からなっているが、鍛冶だけは1,000度を超える高熱の炉をつかうため切り離されている。

 その鍛冶場では、製鉄のために炉内の温度がすでに500度に達している。当然、室内も相応の暑さだ。そこでは、2人の生産職が額から噴き出す汗を拭きながら、炉の温度が上がるのを待っている。

 

 「カグツチさん、今回のHMは魔法が効きにくいって話ですね」


 炉の炎に照らされ、赤みのかかった顔の男が口を開く。


 「やってみないと分かりませんが、『そういう事態もありえる』ことは前提として考えないといけません」


 カグツチと呼ばれたこの鍛冶職人は、ギルドメンバーの武器防具制作を一手に担っている。今回のHMは初見で魔法をレジストしたと話題になっていたことから、耐性持ちであったことを前提に武器の強化をしなければならない。

 『Beyond the horizon』のメンバー中、近接、遠隔、含めて物理攻撃を主体とするのは、イオリ、サツキ、ゼツエイ、マルセロだが、この4名の武器を強化することが今回の狙いだ。

 Battle Odyssey Onlineでは魔法が通じないモンスターへの攻め方の定石がある。と言うのも、魔法が通じないモンスターは魔法を無効化しているわけではない。魔法を反射する、吸収する、減衰する、いずれかの能力を使用しているのだ。

 つまり、元来の性質として備わったものではなく、能力を使用して魔法を通さなくしているのである。カグツチが考えているのは、その能力を封じたり弱める、または使用させないための武器強化である。

 だが、そう簡単な話ではなく、全ギルドの中においても、それを実行するだけの力量をもったギルドは数えるほどである。

 

 「フーゴくん、今回はレジストしたということですし、反射吸収の類ではないですね。単純に耐性をもっているだけのようです」


 相手モンスターの傾向を掴み、適切な武器強化を施していく、これはカグツチのもっとも得意とするところである。


 「ただし、HMに能力封印は効かないでしょう。ですから、強化は魔法耐性をダウンさせる方向でいきましょう。フーゴくんならどうしますか?」


 かつて、鍛冶職人に特化する前は一流の戦闘職でのあった経験が彼の鍛冶職人としての能力に大きく寄与している。

 その彼の中では、すでに答えは出ているが、ここでは敢えてフーゴに答えを出させようとしている。


 ん~、と額に手を当てしばらく考え込むフーゴだが、その顔に何か閃いたといった表情が浮かぶ。


 「えっと、魔法耐性を弱めればいいんですし、刀身にミスリル膜を形成してはどうでしょうか?」


 ミスリルとは、ミスリル(真なる銀)と呼ばれ、それは魔力を秘めており、身に着けては魔力強化の効果があり、逆にミスリルで攻撃することでは、相手の魔法防御や耐性にダメージを与えるというものである。

 そのミスリルで膜を形成することで、魔法耐性を崩そうと言うのがフーゴの狙いであろう。


 「うんうん、フーゴくんもすっかり鍛冶職人らしくなってきましたね。今回はその手法でいきましょう」


 その答えに満足したのであろう、カグツチは弟子の成長に目を細める。


 「そう言ってもらえると嬉しいです。がんばります!」


 えへへ、と手を振って照れ隠しをするフーゴ。


 「それでは、炉の温度も上がってきたことですし取り掛かりましょうか、フーゴくん、錬金師のクリストフくんにミスリル粒を依頼してきてください」


 「はい!クリストフさんにお願いしてきます。ついでに減ってきたコークスも貰ってきますね!」


 自分の意見が採用されたことが嬉しかったのか、はたまた、鍛冶職人としての成長を認めてもらえたことが嬉しかったのか、鍛冶場を出ていくフーゴの足取りは軽かった。

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